転移してきた人の大半、異世界に適応しすぎでは?
もはや異世界というものは不思議ではなくなった。
城内会議室。
大きな長方形の上品な机と椅子がいっぱいあるだけの部屋。
「状況を整理しよう。」
ウェドは椅子に座りおでこを机につけ手をぶら下げている。
その前には姫路が真顔で座っている。
「まずだ。そして僕が文字通り放心しているうちに、
僕らのGWEの機能が停止して元の世界に帰れなくなった。
いつの間に世界が完成していてロゼが神になっていた。
この世界とは別の世界から来たと思われるヘリが来た。
ここまではまぁいいんだ落ち着いたから。」
ウェドは手を頭の前に置く。
「だけどだ。なんでこんな状況の中
吞気に創はこの世界を冒険しようとしているんだ。
他の世界と融合しているんだよ?異常事態にもかかわらず冒険を?
ヘリで攻撃されたのに創はこの国をあの七騎士にまかせて冒険って。
しかも創はカイングちゃんを連れていま武器を買いに行ってるし。
しかもカイングを狙おうとしている輩がいるって騎士の人言ってたし。
カイングちゃんが言うには国を見て回りたいとか言ってたけど、
やっぱりあの状態でも不安だし心配だし。
君と僕以外のスタッフはノウン以外行方不明だし。
あのロゼも行方不明になっちゃってるし。
ああもうこれからどうしたらいいんだ……」
焦っているのか多少早口であった。
「ぜんっぜん状況の整理ができてませんけど。」
姫路は右手の手のひらに丸を書いて叩いて開き、
パラメータビジョンを開き、
自分の能力値を見る。
「とりあえず私らもこの世界を冒険するしかないみたいです。
この世界で冒険すれば世界に対抗できるスキルや道具がもらえるらしく、
魔王とかなんとかを倒せば
GWEそのものをスキル化したスキルを付与してくれるそうな。」
「おいそれ初耳なんだが。」
ウェドは顔を上げ姫路をにらむ。
「ロゼが私らに対していった伝言でしてねぇ。
嘘かどうかは分かりませんが冒険させようとしているのは確かですね。
ま、何もしないよりかはした方がいいんですけどね〜」
姫路は立ち上がり、会議室から出ようとする。
「私はとりあえずレベル上げのために山でモンスター狩りに行ってきまーす。」
そういって会議室から出た姫路はウェドチラッと見て、
彼女の手からメモらしき物を落とす。
それに気づかずウェドはため息をつき、再びおでこを机につける。
「僕がおかしいんだろうか……こんな状況で……」
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創とカイングは賑やかな繁華街を散策していた。
創はカイングからもらった3万円分の紙幣を持って。
カイングは冠を外し、茶色いフードをかぶって。
二人ともゆったりとしながら繁華街を歩む。
「いやーにしても……
ほんとにみんな知らないんですね……」
創はカイングの方を向き汗を垂らす。
「別に、私の正体が何であれ関係ない。」
カイングは腕を組みながらそう言う。
彼女はいつもと違い、はきはきとしゃべっており、すこしクールであった。
「あの……やっぱりギャップがすごいのででいつもの感じにしてくれませんか……?」
「それはできない。全体的に印象を変えないとダメ。」
創はため息をつき、カイングをじろじろと見る。
(国王とバレないために性格を変えるのはいいんですが、
やっぱりギャップがすごいですね……
これはこれで好きなんですが……)
「どうしたの?」
彼女はシュッとしてこう言う。
「やっぱりカイングちゃんはかわいいなって。」
そう言われカイングは照れくさそうにフードを深くかぶる。
その様子を見た創は微笑んだ。
繁華街の景色を見ると、
大きな市場があったり、
カフェっぽい店があったり、
大きな宿屋があったりする。
その繁華街を歩く民衆や兵士たち。
その中には貴族らしき人物や、THEお嬢様のような人物もいた。
みすぼらしい人物はおらず、とても平和的な雰囲気であった。
「まともですねぇ…なにかしら怪しい店があってもおかしくないはずですが……」
彼女はキョロキョロ見まわして怪しい店を探す。
とはいえ怪しそうな雰囲気はどこにも漂っていない。
だが多少気になるのは歩いている人のほとんどが、
周りをきょろきょろ見ながら歩いている事だった。
そんな彼女の肩をカイングはトントンと触る。
「見つけましたかあやしいお店!」
創はにこやかにカイングの方を向く。
「あそこが武器屋。」
そう言いカイングは剣を交差させたマークが書かれた店を指で指す。
「あそこが武器屋ですか……入り口がでかいですね……
ていうか窓なくないですか……?」
創は武器屋をじっくりと見つめ、
武器屋のドアから出た人や買われた武器を観察する。
出てきた人は若い男性が多く、中には兵士もいた。
買ったと思わしきものを見ると、
鉄の剣だったり、長い槍や大きな盾など、
よくある普通の武器の様だった。
あの大きな入り口は大きな武器を通すためなのだろう。
「普通そうですね……窓がない以外は……
では私は武器を買ってきますがカイングちゃんも付いてきます?」
そう言いカイングの方を向くとそこに彼女はいなかった。
辺りを見回すとカイングの後ろ姿が見えた。
彼女は背中でサムズアップをしている。
「ほんとに武器屋を案内して帰ろうとしてますね……」
創はその姿を後にし、武器屋に近づき入ろうとする。
「よぉチビッ子。こんなところでなぁにしてんだぁ?」
後ろから男の声が聞こえた。
創はいらっとしながら後ろを振り向く。
「ほぉー!かわいいじゃねぇか。
なんでおめぇみてぇな奴がこんなところにいるんだ?」
そこいたのはいかつい男であった。
「あ、えっとですね……冒険するために武器を買いに来たんですが……」
創はびっくりし慌てながらそう言う。
「冒険するため、ねぇ。最近そう言う奴が増えたもんだなぁ。」
いかつい男は腕を組み周りを見る。
「お前。ここらのもんじゃねぇだろ。」
「へ?いやあの……」
創は返事に困った。
ここらのもんではないのは確かだけれど、
どういう風に説明したらいいか分からない。
「その服装で分かる。お前、異世界から来たんだろ?」
「え?」
創は困惑する。
(異世界から来た?え?まぁ合ってるけどなんで服装で?)
そう思い自分の服を見ると、
死んだときの制服を着ていたまんまだった。
(そうかそう言えば私、学生服のままでした!
でもなんでそれだけで異世界から来たって事が分かるんです!?)
創は動揺を隠そうとばかり冷や汗を垂らす。
「あ、そ、その……」
「ごまかさなくてもいい。あれを見ろ。」
いかつい男は指をさす。
創は男が指さした方向を見てみると……
しょぼくれている青いスーツを着たサラリーマンが歩いていた。
「え……な、なんで……?」
創はさらに困惑する。
(サラリーマンだ……)
創は恐る恐るサラリーマンに近づく。
「こ、こんにちは……」
するとサラリーマンが創の両肩をつかみ揺らしてきた。
「君!ここはどこなんだ!私は死んだんじゃないのか!」
彼はすこし怒ったように創に話しかける。
(し、死んだ……やっぱり転移者なんですか……)
「あ、あの……私もよくわからなくて……」
彼女は冷静になりつつ返答をする。
「君もここの人じゃないのは分かってる!
あれだろう!異世界だろここは!君もこの世界に転生してきたんだろう!?」
「転生……じゃなくて転移なんですけどね……」
サラリーマンは頭を抱え、叫びながら繁華街の奥の方へと走り去っていった。
「あの人……いったいなにが……」
走り去るサラリーマンを見て不思議そうにする。
「な?最近あんなのがわんさかいるんだ。
だから俺はこの店に入ってくるやつが
見かけない服を着ていたら話しかけてんだ。
異世界から来た奴はまぁいいんだ。
どさくさに紛れてこの国にいる奴じゃなかったらやばいからな。」
男はそう言い高笑いをする。
(確実に転移してきた人でしたよね今の……
ていうかなんで転移してきた人がいるんですか……?
GWEのスキル版でも招けるんです……?)
「あの……まずあなたはいったいどこで異世界の存在を……?」
男の方へ歩み寄り、彼に質問をする。
「ああ、この店の店主がもとより異世界から来たそうなんでねぇ。」
それを聞いた創は焦り武器屋のドアを勢いよく開ける。
「すいません!この店の店主はどなたで……す……か?」
店の中はコンビニの景色そのものでした。
それぞれの列に剣だの槍だの弓だのが飾られており、
一番奥の食品置き場みたいな場所には薬品が置かれていた。
カウンターには電子レンジやおでんのやつも置かれている……
中にいた客は見た感じ繁華街の人と変わりはないみたいだ。
「ど、どうゆう店ですかぁ!?」
創は驚き、辺りを見渡しながら武器屋の中に入る。
「おい、チビっ__」
後ろの扉が閉まる。
「いらっしゃいませ!」
入り口の傍にあったカウンターに店主はいた。
店主は男でさわやかな顔をしており、
服は白と青のシマシマ模様のエプロンを着て名札を付けていた。
その名札に書かれていた名前は山田 商介。
「店主の山田です!どうされましたか!」
彼は大きな声で創に話しかける。
「ど、どうゆうことですかね……」
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ロゼさんが作った繁華街、意外とまともだなぁ~
と思っていた時期が私にもありました。
やっぱりまともじゃないもの混じってました。
さっきのサラリーマンと言い、
今見ている謎の武器屋コンビニ、
そしてナチュラルに武器を販売しているであろうこの山田さん。
たぶんこの人はあっちでコンビニで働いていたんだろうけど……
「あ、あの、山田さん?
この世界に転移してきたって聞いたんですが……」
恐る恐る店主に聞く。
「ああはい!私!トラックにひかれて死んでしまいました!
そしてこの世界に転移し、武器屋を営んでおります!」
彼はものすごい明るくそう言う。
(なんで死んだことに対して軽いんですかね!?
私とて死んでしばらくは放心状態だったらしいのに!?)
創は脳内でツッコミを入れる。
「あの、あなたはいつからここに……?」
そう言うと彼はきょとんとした表情でこう言った。
「ああ、3時間前ここに転移されましてね。」
また、人差し指を下に向けていた。
(いやいやいやいや、
3時間前に転移してすぐ武器屋を営めますかね!?
適応能力どうなっているんですか!?
ていうかここに……!?
元からこのコンビニがあったってことですか!?
やっぱりロゼさんまともじゃないもの入れてるじゃないですか!?)
創は状況が把握できず混乱している。
「一応私はこの世界で冒険をしてみたいのですが
見た目も販売方法も前世と同じコンビニなので
せっかくですし、ここに買いに来る人の笑顔を見るために、
コンビニの店主をやっております!」
彼は急にさわやかな表情を見せる。
「いやだとしても適応能力早すぎませんかね!?
ていうか私何も言ってませんよ!?」
しばらくして。
「いや~にしてもここに来る転移者さんが多いですねぇ~
見た目で分かりますよ。外の人の服と違って
制服だのスーツだのどうみても異質ですし。」
彼はまったり笑いながら首元を右手でさする
(たった3時間でこの世界に適応しすぎでは……?
ていうかなんで笑ってるんです?)
ジト目で創は彼を見る。
「え、転移者が多い?」
彼女は冷静になり、今一度客の様子を見てみる。
が、スーツだったり制服を着ている人物はいない。
雰囲気はいろいろ異常であったが、
客の雰囲気は繁華街で歩いていた人物たちとそう変わりはない。
その景色を見ていた彼女の首元にスプレー状の何かがかかる。
それに驚き首元を触り、後ろを見ると笑顔の店員がおり、
彼の手には緑色の液体が入ったスプレーが入っていた。
創は振り返る勢いで店員をビンタしてしまう。
「なにをやってるんですか……?」
怒りの表情を見ながら店員をにらむ。
しかしビンタされてもなお店主は笑顔であった。
「いや~こうでもしないと分からないからね。
これでみんなの姿が分かるはずだよ。」
「こうでもしないと……?」
「こうすればみんなの姿が見えるはずだよ。」
創はきょとんとしながら再び客の方を見ると___
短剣を見ているサラリーマンが二人。
さまざまな盾を見ている3人のOL。
あちらこちらにいるバラバラの制服を着ている学生達。
そして役職不明の方が数名。
あと兵士は数人ほどしかいなかった。
ていうか兵士以外全員服が現世のものであるがため、
ほとんどが異世界転移者と伺えた……
そして大きく見るとサラリーマンと学生が多いことが分かった。
「多い……多すぎますよ……」
創はさらに混乱する。
「分かりましたか?見ての通りなんですよ。
この店に来る人は兵士の方の他に
転移してきた人しかいないんですよ。」
店主は笑っていた。
「いやでもこれは多すぎます!
どんだけ転移してきているんですか!?」
店主の方を向き、驚きの表情を見せながらそう言う。
「いやぁ〜ほんと多いですよね〜
店の外とか見てくださいよ転移者だらけですよ?」
それを聞いた創は入り口のドアを勢いよく開け外に出て辺りを見回す。
「あんた……ドアは丁重に扱えよ……」
ドアの横にいた男は創の様子を見て困った表情を見せた。
「うぇ……」
創は辺りを見回し絶句する。
繁華街に歩いていたほとんどの人間が、
スーツや制服といった現世の服を着ていた。
歩いている彼らの顔を見る限り不安や恐怖は感じておらず、
羨望の眼差しをしていたり口を開けポカーンとしている。
中には警戒しながら歩いている者もおり、
世界の様子をうかがっているように見受けられた。
(なんで……こんなにたくさん……)
その様子を遠目で見ていた店主はやれやれと言う顔をしながら、
創のもとに歩み寄り、彼女の右肩を掴む。
「まぁまぁ確かにそう言う風になっちゃいますよね。
私も驚きましたよ。ですがこれが現状です。」
創はゆっくりと店主の方を向き苦笑いをする。
そうして彼女は店主に肩を引っ張られ、
創は流されるまま武器屋の中に入れさせられた。
そしてドアがしまり、少しの静寂が流れる。
「……店主も変わりもんだよなぁ……」
男はその様子を見てため息をつく。
そもそも異世界そのものの存在自体おかしいんだけどね。
異世界と言う存在を普通に適応してる方がおかしいと思うのです。




