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「ねえ、アレン。ミニアーナさんってどんな方?」
「ミニアーナさんは母さんの一つ上です。年も家も近いので昔から母さんとは仲良しで、友達のような、姉妹のような関係です」
そして、彼女にはアレンと同じ年の娘、ライカと二人より3つ下のガディスという弟がいること。実父が生きていたころからずっと家族ぐるみで付き合い続けていたこと。彼女の夫は冒険者をしているため、半年に1回の頻度でこの村に帰ってきていることなどを話してくれた。
アレンからミニアーナの話を聞く限りでは、彼女もアリアに対して恨みを抱いているようには思えない。
……本当に犯人はこの3人の中にいるのだろうか。
「お隣って、あの赤い屋根のお家?」
「ええ、そうです。今朝ライカとガディスが畑で草むしりをしていたのが見えたので、きっと家族で家にいるはずですよ!」
「分かったわ……」
八方塞がりの状態であるが、とりあえず最後の容疑者である彼女に会ってみないといけないだろう。
「こんにちは。……って、あら?」
「あ!魔女様だー! こんにちは!」
ミニアーナの家の畑で作業をしている子どもが二人かがみ込んでいたので、挨拶をする。そこで溢れんばかりの笑みを私に向けてくれたのは、昨日ディエランの家に私を案内してくれた少女だった。
「あなたは、ライカ?」
「そうです! アレンから私の名前を聞いているのですね。えーっと、魔女様。うちにどのようなご用事ですか?」
「ミニアーナさんはいらっしゃる? よろしければ、お話がしたいの」
「母さんですか? いますよー! 魔女様、どうぞお入りください」
無警戒に私を家に招き入れてくれた。そんな無邪気な少女の母親に今から行おうとすることを思うと罪悪感を覚え、心の中で少女に謝罪をした。
「母さんー。アリアさんを診ている魔女様が母さんに用事だってー!」
「魔女様が?」
すぐに家の中心であるリビングにたどり着くと、彼女は編み物をしていた途中であった。私の姿を認識するなり、彼女は手を止めて慌てて立ち上がり、私にお辞儀をする。
「魔女様! ようこそいらっしゃいました。こんな見苦しい格好でお出迎えして申し訳ありません!」
「構いませんわ。……少しミニアーナさんとお話がしたくて参りました。ライカ。ありがとう。お仕事の途中でしょう? 畑に戻ってちょうだい」
「はーい、じゃあまた頑張ってくるね」
バタバタと心地よい足音をさせながら彼女は去り際に
「あ! 後で魔女様のこと、色々教えてね、母さん!」
母に対して威勢良く声をかけてから出て行った。
「……」
「……」
しばらく沈黙が流れるが、私はライカが完全にこの家から出ていくのを感じるまでじっと待っていた。
「あの……魔女様、どういったご要件でしょうか?」
「それはミニアーナ。貴女自身が一番よく分かっているのではないでしょうか?」
ちょうど良いタイミングで、ミニアーナから話しかけてきたのに私は冷たく返答した。
「私が……?」
「ええ。私はアレンの依頼を受けてアリアさんの治療に来ました。結果、アリアさんは回復薬や治癒魔法では治せない、呪いを受けている状態であることが分かりました。彼女から呪いを手っ取り早くなくすには、呪った人物にその呪いを返すのが一番なのです」
「は、はあ……」
ミニアーナは私が言っていることの意味が分からないようで困惑している。
「あなたがその張本人であると私は言っているのです」
「魔女様!?」
ミニアーナは驚愕の目で私を見てくる。
「呪いは、かけた人物の生命力も消費します。アリアさんを纏う呪いの生命力を分析した結果……あなたのものに酷似した生命力の反応をわずかですが私は受け取りました。それはどういうことでしょうか?」
「……そんな」
彼女からどんな反応が返ってくるか……体が緊張で震えないよう、私は精一杯虚勢を張ってみせた。
「いえ。魔女様に犯人であると突きつけられた方が、もう楽になりますわ……」
「ミニアーナ……」
「ええ、私が、アリアを呪いました」
「!!」
実は、先ほどミニアーナに言ったのはハッタリであった。
日本に暮らしていて突然警察官が訪れて『あなたの毛髪が死亡した被害者の口から検出されました。揉み合っているうちに犯人の髪が被害者の口内に入っていったのでしょう』と言われたら、心当たりがない人間なら冤罪を被らないようになんとか言い返してくるだろう。そして、真犯人であるならばここまで確固な証拠があれば、普通はすんなり自白するだろう。そう読んで、実際は何の証拠もないのだが、ミニアーナをまるで犯人であるかのように語った。
あくまで“あなたに酷似した生命力”の反応を捉えたと私は言った。前世で言うところのDNA鑑定を真似て勝手に私が言っているだけものだ。だが、DNA鑑定と違って、“似ている”という言い方をすれば、『あなたの生命力の反応に似ていたけれど、違う人のものだったみたい』と言い逃れができる。
最後の容疑者だが、ただ彼女から話を聞いただけでは私は彼女もまた容疑者リストから抹消してしまいそうだ。アレンの3人の容疑者の中に必ず犯人がいると信じて、残る彼女が犯人である可能性に賭けた。
そして、私は賭けに勝ったようだ。




