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第六話 偽物(俺達)が幸福達(真)につけられる 3


 さて。

 着替えた明日葉と、二人で喫茶店に入った。ここも先日と同じだ。

 今日は女装ではないので――いや、日常的に女装なわけではないのだが――コーヒーだけを頼む。

 彼女は頼んだパフェ越しに俺を見ながら、

「今日は地味だね」

 と笑う。

「それは服装の話か? 頼んだものの話か?」

「両方?」

 などと含み笑いなどしてみせる。

 しかし。と落ち着いた今だから考えてみる。明日葉は一体何がしたいのだろうか? わざわざ前回と同じコース。休日に出かけた割に、特に変わったこともない。茜音が居たらできない話、というのも今のところないし……。

 うーん……?



「前回と全く同じコースなんだね」

 観葉植物の隙間から二人の様子がうかがえるという、あまりもそれっぽい席に陣取って、茜音が呟いた。

「なんか、前回よりもストーカーっぽいよね、僕ら」

「前回は恭くんがあまり真剣じゃなかったからなんだよ」

「いや、真剣に妹つけ回してたらやばいって。……いまでも十分やばいけどさ。知ってる? 恭吾の目覚ましって茜音ちゃんの声なんだよ」

「ふうん……じゃあ玲二の為に乃羽が録音してあげるっ」

「いや、いらない」

「ええっ、流石に毎日直接起こしに行くのは大変なんだよ。うん、でも玲二がそういうなら仕方ないなぁ。これからは毎日乃羽が起こしてあげるんだよっ」

「うん、話聞こうね」

 などとおきまりの掛け合いをしている最中も、玲二は露骨にちらちらと、晶子はさりげ無く、茜音の方を窺っている。

(本当、茶番だよなぁ……)

 茜音の方を露骨に見る傍ら、慎重に晶子を覗き見ながら、玲二は心の中でため息をついた。



 そして次はプリクラコーナーである。……今日の俺は女装ではない(改めて言うことか?)これでは……俺は爆発してしまう。

 果たして今の俺達は、周りからどう見えるのか。

「服はまだわかる。喫茶店も別にいい。だが、プリクラコーナーは何故だ? 俺への嫌がらせなのか?」

「プリクラコーナーって、衣装、貸してもらえたりするんですよ?」

「それ明らかに女物だよね!?」

「恭吾君の背丈なら、何とかなりますよ。細身ですし」

「だから女物ですよね!?」

「ほらほら」

「いやぁぁぁぁぁ!」

 などと良いながら手を引かれて奥へと連れて行かれる。まあ流石に男に女物の衣装は貸してくれないだろう。っていうかそうであってくれ。間違っても面白そうだからで貸し出したりしないでくれ。

「あ、御堂さん?」

「こんにちは」

 と、御堂が挨拶する。俺にしたって、クラスメートと出会っても、今日は別に女装じゃないので大丈夫だ。俺も安心して、軽く手を上げようと……。

 手を……。

 手ぇ繋いでる!? いや、引っ張られていただけなのだが。決してなにもなくただそれだけなのだが。しかし客観的にはどうだ?

 女性同伴じゃ無きゃ入れないプリクラコーナーに、手を繋いで二人。

 俺が逆の立場ならギルティだ、リア充爆発しろだ。慌てて離したが手遅れだ。

「おい、待ってくれよ、奈緒……あ」

「あ」

 クラスメートの、彼女の後を追ってきた男子生徒と目が合って、俺達は硬直した。鴨下だ。

「よ、よう」

「おう」

「…………」

「…………」

 俺達は無言で目をそらした。

 いや、別にね? 何か悪いことをしているわけでも、まずい現場に出くわしたわけでもないのだ。ただゲーセンでクラスメートに会っただけ、なのだが。

 なんだこの居心地の悪さ。

 が、それは男子特有のようで、女子は何ら気にとめた様子もない。

「御堂さんって本当に矢代と付き合ってるの? って、今日は聞く必要なさそうだね」

 とクラスメート――桜井は意味ありげににやついて、離したばかりの、手の辺りを見てきた。「どうでしょう?」

 と明日葉は笑いながら言って、掴んでいた方の手を振って見せた。

「わはは、おもしろいね、御堂さん」

 隣の鴨下は、照れたような困ったような顔で俺の方を見る。こっち見るな。俺こそどんな顔したら良いのかわからん。

 野郎二人は気恥ずかしいまま、言葉を交わさない。

 横で楽しそうに喋る女子二人を、落ち着かないまま待ち続けるのだった。


「きょ、今日は二人だからそんなに近づかなくても良いですよ?」

「いや、見切れるだろ」

 居心地悪い数分の後、なんとか鴨下達と別れ、服装的な意味で無事に、プリクラ撮影に臨んでいる。

 前回の三人から二人になったせいか、フレームの大きさを過信する明日葉に身を寄せる。

「ひゃうっ」

「そんなに驚くなって」

『さん、にー、いち』

 機械音声の後に、シャッター音。おえかきって言われてもなぁ。

 明日葉も特に書くことが浮かばないのか、ピンクのペンで何故か『二人はらいばる』とか書いていた。肉弾戦系魔法少女ものみたいな響きだ。

「お?」

 今日のやつは、前回ほど鷺めいた写真にはなっていないようだった。いや、それでもある程度華やかにはなっているのだが。

「今回はそんなに補正をかけていないので」

 と、首を傾げた俺に明日葉が告げる。

「ふうん、なんで?」

「前回、恭吾君がおののいていたからです」

「そ、そうか」

「この写真も、大切にします」

 と、何故か茜音の写っていないプリクラを持って明日葉が言う。もしかしたら、明日葉は単にプリクラが好きなのかも知れない。


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