表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界の落第生 ―異世界でしか、俺は英雄になれない―  作者: 秦江湖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/7

銀髪の魔術師見習い

翌朝、ギルドに足を運ぶと、すでにルナリアが待っていた。


「おはよう! 零! 今日こそ一緒に依頼受けようよ!」


俺の目の前まで駆け寄ってきた。


碧い瞳が朝の陽光を反射して輝いている。動きやすい旅装に身を包み、腰には短めの杖を差している。貴族の血筋を感じさせる整った顔立ちなのに、表情はどこか野性的で活発だった。


「……お前、いつもこんなに元気なのか?」


「当然でしょ!あたしはルナリア・ヴォルテル、魔術師見習い!」


彼女は胸を張って名乗った。


受付嬢が苦笑しながら俺に声をかける。


「零さん、ちょうどいいところに。『魔術師見習いの護衛』という依頼が出ています。ルナリアさんが希望者を探していて……どうでしょう?」


俺は依頼内容を確認した。


内容:リヴェール近郊の遺跡調査への同行護衛。報酬は銅貨45枚。危険度は中程度。


(護衛……俺に戦闘経験なんてないけど、頭でカバーできるかもしれない)


ルナリアが俺の顔を覗き込んでくる。


「ねえ、零。あんたの知識、絶対に役立つと思うの!昨日みたいな魔法陣の最適化、遺跡でもできるでしょ?一緒にいこうよ!」


彼女の勢いに押され、俺は結局頷いていた。


正直、ルナリアの行動力は少し怖い。でも、昨日からの小さな成功が俺に「試してみるか」という気持ちを与えていた。


「わかった。一緒に行く」

「やった! 決まりね!」


ルナリアは飛び上がって喜び、俺の手を掴んでギルドの外へ引っ張り出した。



遺跡までは街道を歩いて二時間ほど。


道中、ルナリアは止まることなく話しかけてきた。


「零って、どこから来たの?名前も見た目もこっちの人じゃないよね。召喚士?それとも異世界人?」


「……まあ、そんなところだ」


「へえ!やっぱり!あたし、召喚された人って初めて会った!どんな世界なの? 魔法はある? 空飛べるの?」


質問が矢継ぎ早に飛んでくる。


俺は適当に答えながら、内心で驚いていた。


現実世界では誰も俺にこんなに興味を持ってくれなかった。


ルナリアは本当に、俺のことを「面白い存在」として見ているらしい。


途中で小さな村を通りかかったとき、ルナリアは突然足を止めた。


「ちょっと待ってて!」


彼女は路地裏に駆け寄り、そこにいた貧しい子供たちに声をかけた。


三人の子供たちが、汚れた服で地面に座っていた。


「みんな、元気? 今日はこれあげるね」


ルナリアはポケットから干し果物を取り出し、子供たちに配った。


さらに小さな魔術を披露する。


指先から淡い光の蝶が飛び出し、子供たちの周りを舞う。


「わあ、すごい!」

「ルナリア姉ちゃん、魔法使いだ!」


子供たちが笑顔になる。


ルナリアは屈んで子供たちの頭を優しく撫でながら、


「ちゃんとご飯食べて、風邪引かないようにね。あたし、また来るから」と明るく言った。



その姿を、俺は少し離れたところから見ていた。


(……あいつ、ただの元気者じゃない)


子供たちに別れを告げて戻ってきたルナリアは、俺の視線に気づいて笑った。


「ごめん、待たせちゃった。……あたし、昔は貴族だったんだけど、今は没落しちゃってさ。母さんと弟がいるの。毎日食べるのもギリギリで……だから、子供たちを見ると放っておけないの」


彼女は照れくさそうに銀髪をかき上げた。


「でも、愚痴じゃないわよ! あたしは自分で何とかするつもり。零みたいに頭のいい人がいれば、もっと上手くいくと思うんだよね」


ルナリアの言葉に、俺は胸がざわついた。


現実の俺は、家族の心配すら鬱陶しく感じて逃げていた。


母親のラインも既読スルー。


でもルナリアは、貧困の中で家族のために行動し、他人にも優しさを分け与えている。


(俺とは、違う……)


「零? どうしたの? 難しい顔してる」


「……いや、何でもない。早く行こう」




遺跡に到着した。


入り口は蔦に覆われ、古びた石柱が並んでいる。


ルナリアは杖を構え、先頭に立った。


「あたしが魔術で道を照らすわ!零は後ろから解析して!」


内部は薄暗く、ところどころに魔物の気配があった。


小型のゴブリン数体が現れたとき、ルナリアは迷わず杖を振り上げた。


「燃えろ!炎の矢!」


小さな火矢が飛んでゴブリンを貫く。


動きは素早くて正確だった。猪突猛進だが、無駄がない。


俺は後方から境界演算システムを使って敵の動きを解析し「右から二体来る!ルナリア、左に回り込め!」と指示を出した。


彼女は即座に反応し、コンビネーションで敵を倒していく。


「零、ナイス!あんたの指示、めっちゃわかりやすい!」


戦闘後、ルナリアは興奮気味に俺の肩を叩いた。


「やっぱりあんたといると効率が全然違う!これからも一緒にやろうよ!」




遺跡の奥で目的の「古代の魔晶石」を回収し、依頼は無事完了した。


帰り道、ルナリアは俺の横を歩きながら、


「零、あんたはここで英雄になれるわよ。絶対に。……あたしも一緒に頑張るから!」


と力強く言った。


その言葉が、妙に胸に刺さった。


現実では価値のない俺が、ここでは——。


誰かに必要とされている。


ギルドに戻り、報酬を分け合うとき、俺は初めてルナリアに小さく微笑み返した。



「なあ、一緒にやろうか」


ルナリアの顔がぱっと明るくなった。


この瞬間、俺の異世界生活に、初めて「仲間」というものが生まれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ