第三百九十二話:驚異の成長力
畑では、最低でも三日は欲しいと言っていたが、次の日に様子を見に行ってみると、すでに成長していた。
本来の薬草は、そんなに早く成長しないと思うし、いくらラウネさんが手を加えているとしても、一日で成長させることはない。
それなのに、こうも簡単に成長しているとなると、やはり、ブレスの影響だろうか?
「多少は成長速度をいじりましたが、まさかこれほどとは」
「まあ、ここ、いるだけで気持ちがいいですからね」
俺のブレスは、破壊の力でありながら、生命力に溢れる再生の力でもある。
森を破壊したのなら、その破壊跡には種が芽吹き、三日もあれば元の森の姿へと戻るほどである。
その効力はかなりのもので、道を作る際に、芽を除去しようとしても、成長する速度が早いこともあって、もう一度ブレスで薙ぎ払う必要があったほどだ。
そんな場所で植えられた薬草は、ラウネさんの力も相まって、異様に成長が早いのかもしれない。
ある意味で、嬉しい誤算なのかな?
「品質も悪くないです。とても一日で成長したとは思えません」
「これなら、ポーションの材料として申し分ないですかね?」
「ええ。私が作るよりも、いいものかもしれませんよ」
品質によっては、もう少し畑を広げて、日数を伸ばすということも考えていたようだったけど、これは必要なさそうだ。
むしろ、一日で成長してしまうなら、刈り取るのが大変な気がする。
そこらへんは、うまく人を割り当てないといけないね。
「後は、保管用の倉庫や、井戸が必要でしょうか」
「そのあたりは後日でしょうかね。今は、みんな忙しいですし」
今は、港の建設もそうだけど、宿屋の建設にも人手を割かなければならない状況。
港は、今後の取引で重要だし、宿屋も今の観光客の問題を片付けるのに必須だからね。
まあ、薬草に関しても、隣の領地との取引で必要だから、重要ではあるけど、現状は、採取したそばから運び出し、そのままポーションへと加工してしまえばいいと思う。
町には倉庫もあるだろうし、ある程度なら、保管もできるだろうしね。
「あっちはうまくやってるかな?」
「どうだろう」
宿屋の建設に関しては、リト達がやっているけど、ちゃんとできているだろうか。
畑の開拓が思いの外早く終わったし、そっちを見に行ってみるのもいいかもしれない。
そう言うわけで、俺達は町の入り口の方へと向かうことにした。
「……む、貴様らか。畑の方はどうした?」
「もうおわった」
「なに? ……いや、貴様のブレスの性質を考えれば、おかしくもないか」
一応、ある程度採取はしてきた。
細かな手入れや、種蒔きなどは、ラウネさんがやってくれると言うので、俺達は道中で薬草を薬師がいる場所に届けてきた。
薬師の人は、いきなり大量に質のいい薬草が届けられたことに驚いていた様子だったけど、計画自体は把握していたようで、すぐにポーションを作ってくれると言っていた。
今後も、定期的に畑の世話は必要になると思うけど、供給は安定したようなものだし、後は量産できるのを待つだけだね。
「こちらはどうですか?」
「土地の確保はできた。だが、宿屋を建てるための材料が足らん」
元々、入り口方面は平原が多く、土地の確保自体はそう難しくはなかったが、建材が不足しているらしい。
まあ、港の建設に大量に回しているからね。これ以上となると、隣の領地から取り寄せるしかない。
あるいは、森を切り開いて、木材を確保するという手もあるが、いずれにしても時間がかかるようだ。
うーん、ブレスで消し飛ばすのではなく、一本一本伐って保管していたら足りたかもしれないけど、流石に無理だよね。
俺達も手伝えないことはないけど、どうしたものか。
「それと、建築予定地に野宿している奴らがいる。奴らをどかさないと、建てられないぞ」
「そっちの問題もありますか」
町の入り口付近には、宿屋に泊れなかった人達が野宿している。
彼らも、花の都を楽しみに来てくれた人達だし、どかすなら、代わりの場所を用意しないといけない。
だが、これ以上町から離れようものなら、魔物の危険があるし、町の中に泊めるわけにもいかない。
本格的に宿屋を建てるのなら、一度お帰りいただくしかないかもしれないね。
「はぁ、なぜ我はこんな面倒なことをやっているんだろうな?」
「ま、まあまあ」
リトとしては、材料が揃っているなら、さっさと追い出して建築を始めたいらしい。
リトにとって、この町は知り合いの大切な場所だから、助けたい気持ちはあるけれど、観光目的で来た何も知らない奴らの相手をするようなことはしたくないようだ。
まあ、本来の目的が、元の静かな町を取り戻したいってことだし、観光客はむしろ邪魔な要素だしね。
だからこそ、隣の領地との関係にもあまりこだわっていなかったわけだし、リトからしたら面倒以外の何者でもない。
下手をしたら、観光客を強引に追い払っていたと思うと、むしろ材料が足りなくてよかったかもしれない。
「ひとまず、こくち、だす」
「宿屋を建てるから、しばらく来るなということか?」
「うん」
今の観光客をどうにかする方法はない。強いて言うなら、自然に帰ってくれることを祈るくらいしかない。
と言っても、花の都は美しい町ではあるが、数ヶ月も滞在するような場所ではないし、観光目的なら、せいぜい数日もすれば帰ってくれるだろう。
問題は、その間にも入ってくる観光客はいるということ。
元を止めなければ、いつまでもいなくならない。だから、告知を出して、一時的にでも流入を止める必要がある。
一時的に観光収益がなくなることになるから、もしかしたら隣の領地の人は怒るかもしれないけど、これも将来の収入確保のためとなれば、反対もしづらいはず。
でも、一応宿屋の利権はあちらが持っているわけだし、ここは一度相談して、それから告知を出すのがいいかもしれないね。
「となると、こちらも一時ストップか」
「そうなるね」
「やれやれ、なかなか片付かんな」
まだ、隣の領地からの返答はない。
ポーションを対価に、これ以上の開発をやめてくれるようには頼んだけど、もしそれを受け入れられないとなった場合、今やっていることはすべて無駄になる可能性もある。
まあ、相手も単なる金儲け目的ではないということはわかったし、大丈夫だとは思うけど、しばらくは注意してみておかないといけないだろう。
何かしたいのは山々だが、今は待つ時なのかもしれない。
果たして、色よい返事は貰えるだろうか。
俺達は、返答が来るまで、畑の世話をしながら待つことになった。




