第三百八十八話:鍵となるのは
ひとまず、他にも何か情報がないかと思い、他の町にも寄って見ることにした。
ただ、わかったのは、戦争の準備をしているというのが明確になったくらいだった。
一応、相手は帝国ではなさそう? どちらかというと、内乱に近いものらしい。
行き止まりである花の都の領主が知らなかったのは、あまり関係がないからだろうか。
隣の国との境界など、重要な位置に存在する領地の領主は、それなりに高い地位を与えられているけど、ここは行き止まりであり、重要度はあまり高くない。
だからこそ、武勲を上げて高い地位を得ようと思ったのかもしれないね。
小さな内乱程度だったら、干渉して止めることもできそうだけど、直接関わり合いがあるならともかく、今回はそう言うわけではないし、あまり干渉しすぎるのもよくない気がする。
そもそも、人を殺すとかしたくないしね。今回の場合は、どっちが味方とかもないし。
「うーん……」
ちょっと整理してみよう。
隣の領地が花の都を急速に観光地化しようとしているのは、お金を稼ぐため。
その理由は、内乱の兆候があり、それで武勲を立てて、高い地位を得たいと考えているからと思われる。
お金の使い道は、まあ、兵站とか薬とかかな? 軍を動かすのは色々かかるからね。
……いや、待てよ? 薬?
「くすりが、かぎ?」
戦争で使われるものなら、即効性のあるポーションだろうけど、それらは高価であり、数を揃えるとなるとかなりの金額になる。
でも、ちょうど花の都では、薬を作る手段を思いついたところだ。
花の都でポーションを作り、それを売りさばけば、隣の領地も助かるし、花の都も新たな収入源を得ることができる。
要は、観光地としてではなく、工房としての魅力を押し出せばいいのではないだろうか?
「なるほど、高い効果のポーションを安定して作り出せる技術があるなら、わざわざ観光地化する必要もない。だが、薬草はどうにかなるとしても、そんな職人がいるのか?」
「それは、きいてみないと……」
薬草をそのままでも効果はあると思うが、やはりポーションにした方がいいとは思う。
薬草はどうにかなっても、それを作れる人がいなければ意味がない。
これは、特産品として売り出す際にも重要になることだし、確認しておいた方がいいかもしれないね。
「いったん、もどろう」
色々と勇み足だったかもしれない。
貴重な情報も得られたし、リト達と合流して、相談してみよう。
そう考えて、俺達は来た道を戻る。
数日後、花の都の領主の家に戻ると、ラウネさんが出迎えてくれた。
「皆様、お帰りなさいませ。何か収穫はありましたか?」
「うん。にくすたちは?」
「それでしたら、今川の方に出向いております」
「かわに?」
なんでわざわざ川に、と思ったけど、どうやら船が来ているらしい。
恐らく、リトが話をつけたという港町からやってきたんだろうけど、流石に早すぎないか?
まだ道は裸だし、川にも桟橋すら用意されていない。
川底の調査もまだだったし、来るにはちょっと無謀な気がしないでもないけど……。
なんと言って説得したのかは知らないけど、よく来てくれたものだ。
「サンプルとして、提案していただいたアクセサリーや薬を持っていかれましたよ。後は、これが相手のお気に召せば、定期的に取引してくれるとか」
「はやすぎる」
「それにしても、あんなものが売れるのでしょうか? 枯れていますけど」
「それは、しんぱい、ない」
アクセサリーの出来自体は、特に問題はないと思う。
特に加工しなくても、十分見られるものだったしね。
問題は、相手がそれを欲しがるかという話だけど、そこらへんはリトに期待するしかない。
「それで、そちらの収穫というのは?」
「えっとね……」
俺は、隣の領地に対しても薬が売れるのではないかということを話し、それを作るための職人がいないかということを聞く。
もし、十分な量を確保できるのなら、それを武器に話し合いもできるかもしれないからね。
「なるほど。薬師であれば、結構いらっしゃいますよ。昔から、この町に住んでらっしゃる方達です」
「おお」
この町は、ナツキさんが子供のために作った町だと言っていたが、そこに住まう住人達は、いくつかの条件があったらしい。
子供のことを第一に考えてくれるというのを筆頭に、子供のために役に立つ技能を持っていること、その力を子供のために役立てることなど、とにかく子供のために色々な技術を持った人を集めたようだ。
特に、薬に関することは、子供の生死にも関わることであり、特に数を用意したという。
この町は、元は職人の町と言っても過言ではなかったわけだね。
「今回作ったサンプルも、いつも懇意にしてくれる薬師の方に作ってもらったものです。効果は保証しますよ」
「それなら、やくだつ」
実際に見たわけではないけど、ラウネさんが言うなら効果は問題ないだろう。
後は、これを使って隣の領地と交渉すれば、うまく行くかもしれない。
何とか光明が見えてきたかもしれないね。
「お、戻っていたか。何か進展はあったか」
「にくす! うん、なんとかなりそう」
そうこうしているうちに、リト達が戻ってきた。
まだ何もでき上ってない港ではあったが、相手はそれも了承済みだったらしい。
本当に、どうやって交渉したのかが知りたいが、サンプルを見せてみると、結構な好感触だったようだ。
特に、薬に関しては、たまたま船酔いでダウンしていた人がいたので使ってみると、見る見るうちに顔色が良くなったことから、ぜひ欲しいと言ってくれたらしい。
船酔いの薬なんてあったのか。それとも、ある程度汎用的に効く薬だったんだろうか?
まあ、どちらにしても、取引はうまく行きそうである。
後は、川に港を建設し、川底を攫って船を通りやすくし、周りの魔物の脅威をなくせば、取引は盤石なものとなるだろう。
こちらも、うまく行きそうで何よりである。
「それで、薬で釣るって話だったか。本当に奴らは薬を欲しがっているのか?」
「たぶん」
まあ、実際に領主に確認したわけではないから、正確ではないかもしれないけど、仮に戦争の準備とかがなくても、薬は必需品である。
特に、花の都まで行くにしても、数日はかかるわけだし、その間に利用する薬があるだけでも、ちょっと買って行こうとなるだろう。
本来薬は高価だが、ラウネさんの手にかかれば、材料である薬草は簡単に手に入るから、値段を抑えることができる。
安くてよく効く薬があれば、誰だって買いたいだろうし、需要は尽きないはずだ。
「なら、交渉の席を用意しないといけませんね」
「できる?」
「もちろん。何とかしてみましょう」
ラウネさんも張り切っているようだ。
果たして、うまく交渉することができるのか、少し期待しながら、交渉の時を待つのだった。




