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第三百八十七話:隣の領地の問題

 隣の領地に行くのは、俺とフェル、そしてディートリヒさんになった。

 リトは、喧嘩を売った張本人だし、一緒に行ったら面倒なことになるかもしれないと、遠慮したようだ。

 まあ、他にも理由はあるみたいだけど、せっかく帰って来たのに、また離れ離れになるとは残念である。


「隣の領地まではどうやって行くんだ?」


「とんで、いく」


 出発の際、ディートリヒさんがそんなことを言っていたが、流石に馬車に乗って移動するのは時間がかかりすぎる。

 飛べば、二日もあれば着くと思うし、様子を見た後、すぐに戻ってくる必要もあるから、こっちの方が安上がりだろう。


「私は飛べないんだが」


「せなか、のせる」


「君の背中に? そんなことしていいのか?」


「だいじょうぶ」


 最近はあんまり乗せたことないけど、元々人を乗せて飛ぶのは好きだ。

 フェルと出会った当初は、何度も背中に乗せて飛んだものだし、ディートリヒさんなら、信用もできるから問題はない。

 フェルはちょっと微妙な表情をしていたけど、これくらいは許してほしい。


「そう言うことなら、お言葉に甘えさせてもらおう」


 話もついたので、さっそく元の姿に戻って、出発することにする。

 ディートリヒさんは、ドラゴンの背中に乗ることに少し緊張していた様子だったけど、案外乗るのが早かった。

 身体能力が高いと、こういう時も便利だね。

 落とさないように気をつけつつ、飛び立つ。

 さて、何か糸口がつかめるといいんだけど。


 そうして飛ぶこと約二日。俺達は隣の領地のとある町へとやってきた。

 花の都と比べたら、殺風景極まりないが、普通はこれくらいだろう。

 ちょっと興奮気味のディートリヒさんを宥めつつ、さっそく聞き込みを開始することにする。


「すいません、少しお話いいですか?」


「なんだい? 見たところ、冒険者みたいだけど、子連れで観光にでも行くのかな?」


「まあ、そんなところです」


 町行く人に話しかけて、花の都について聞いてみる。

 この町も、花の都から近いこともあって、よく観光客が訪れるようだった。

 それによって、宿屋は常に満室に近く、町としてはそこそこ潤っているようである。

 花の都があることによって、花の都のみならず、他の町も連鎖的に潤う。だからこそ、花の都の存在はありがたいものだと感じているようだね。


「なんでも、先代の領主が私財をなげうって造ったんだって? あんなに綺麗な町を一から造り上げるなんて、凄いよな」


「でも、元々は観光地ではなかったようですが?」


「そうなのかい? てっきり、元々そのつもりで作ったものかと思っていたけど」


 花は管理が難しく、適正に管理しないとすぐに萎れてしまう。

 だからこそ、そんな面倒なものをメインに造り上げた町は、観光目的で作ったんだと、この人は思っているようだ。

 ここらへんは、事情を知っていないとそう思うのも無理はないかもしれない。

 子供のために、一つの町を造り上げるなんて、普通はしないだろうからね。


「観光地化には、ここの領主が関わっていると聞いたが、それについて何か知らないか?」


「ああ、確かに関わってはいると思うよ。昔は今みたいに大量の観光客が来るなんてことはなくて、それをもったいなく思って、花の都の領主に提案したらしいからね」


 行き止まりの観光地。だからこそ、その通り道であるこの領地も、同じように潤うことになる。

 お互いにウィンウィンの関係になれる提案だとして、強くアプローチしていたようだ。

 ただ、花の都の領主はそれに後ろ向きで、今の状態に持って来るだけでも、結構な時間がかかったという。


「僕としては、早く提案に乗っていればよかったと思うけどね。当時は、だいぶ財政的に厳しかったみたいだし」


「なるほど。貴重な話をありがとう」


「いやいや、花の都はいいところだから、楽しんでおいで」


 さて、話を聞く限り、俺達が持っていた情報とあまり大差はないように思える。

 違うのは、利権で甘い汁を吸おうというよりは、自領も同じように潤うから、お互いのためにやりましょうと言っていたというくらいか。

 まあ、目的自体は変わらない気もするけど、最初は善意で言っていたのかもしれないね。


「……色々話を聞く限り、金儲けでも、少しベクトルが違うようだな」


 その後も、他の人にも話を聞いてみたけど、大体同じような話が聞けた。

 目的を端的に表すなら、金儲けなんだろうけど、自領が潤うことを優先した結果という風に見れる。

 領主が自分の領地のことを考えるのは普通だし、それ自体は間違っていないと思うけど、それで隣の領地にまで口を出すのはやり過ぎな気もする。

 いや、言うことを聞け、じゃなくて、お互いに美味しい思いをしようと持ち掛けているわけだから、いい提案なのか?

 まあ、目的が噛み合っていないから、結果的にはただの押し付けになっているわけだけど。


「でも、ただお金を稼ぎたいから、ってわけでもなさそうでしたよね?」


「そうだな。帝国の手は、ここまで迫っているのか?」


 話の中に、気になることがあり、それが、戦争の準備のためにお金が必要というものだった。

 なんでも、少しずつ物価が上がっており、特に鉄などの値段が高騰してきていることから、戦争の準備でもしているんじゃないかと勘繰っている人がいたのだ。

 この世界では、戦争は割と多く、常にどこかの国が戦争している状態というは珍しくない。

 その相手として、特に候補に挙がるのが、帝国である。

 帝国は、過去に大陸統一を掲げていた大国であり、勢いが衰えた今でも、その志自体は変わっていない。

 首都はそうでもないらしいが、末端の領地では、今でも戦争が繰り広げられている場所は多くあるようだ。

 この場所は、帝国からはそれなりに離れているはずなんだけど、わざわざ戦争の準備をするってことは、もしかしたら関係があるのかもしれない。

 でも、もし戦争の兆候があるなら、花の都の領主も、話くらいは聞いていてもおかしくはなさそうだけどな?

 まあ、所詮は噂話だし、確証はないけど、もしそんな理由があるなら、早急にお金を稼ぎたいのも頷ける。

 ただ単に、観光地化を進めたいわけではないのかもしれないね。


「もし仮に戦争の準備が進められているとして、どうやったら解決できると思う?」


「うーん……」


 領主がそこまでしてお金を集めるってことは、この戦争に乗じて、武勲を上げ、より高い地位につきたいってところだろうか?

 あるいは、領地を広げて、花の都ごと手に入れようとしているって可能性もあるかな。

 目的が地位とかなら、どうしようもないけど、戦争に備えたいというだけなら、その戦争がなくなれば問題はない。

 ただ、帝国が相手だった場合、俺達だけでどうにかできるとは思えないし、そもそも戦争に介入するのもどうかと思う。


「どうしよう……」


 ここまでくると、俺達の手には余るような気がしてきた。

 うーん、観光地化を進めなくても、お金が手に入るようにすればいいのか?

 でも、現状は花の都が観光地であるからこそ、この町を始めとした領地が潤っているわけで、観光地としての価値がなくなれば、意味がなくなる。

 一体、どうしたら解決できるだろうか?

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