第三百八十五話:ひとまずの完成
大体の距離を測り、ひとまず川まで道を開通させた。
ブレスの幅を調節すれば、道の大きさも自由自在である。
まあ、ここから整える必要はあるけど、最初は土の道でもいいだろう。
まだ取引ができると決まったわけでもないし、それが決まるまでは、とりあえずの道って程度でいいと思う。
「さて、道はこれでいいだろう。後は、魔物の間引きだな」
「歩きだと結構かかりますね。手分けしますか?」
「ああ、こちらは一人でも大丈夫だ。そちらは……心配しなくても大丈夫だろう?」
『もちろん』
ブレスでもある程度巻き込めたとは思うけど、道の安全を確保するためには、周りの間引きもしないといけない。
俺は、一度人の姿になり、周囲の確認をする。
森の中では、体の大きいドラゴンの姿は不利だからね。間引きするなら、こっちの姿の方が都合がいい。
ヒノアの大森林くらい木がでかければ、まだいけるんだけどね。
「しばらくは間引き作業かな?」
「すみません、何から何まで」
「いえいえ、困ってる人は放っておけないですから」
ラウネさんも手伝いたいところだったが、戦闘は苦手らしく、お役には立てないとのこと。
それでも、植物を自在に生やすことができるのだから、使い方によっては戦えそうだけど、元々性格的に苦手なのかもしれない。
任せっきりになることを申し訳なく思っているようだけど、こちらもリトにゆかりがある町を放っておくわけにもいかないし、気にする必要はないだろう。
せめて、道案内してくれると言うので、任せつつ、間引きを開始した。
「……と、こんな、ところ?」
それから約一か月ほど。
綺麗に間引きをしようとなると、結構な時間がかかった。
いや、どちらかというと、大変だったのは芽の除去と言った方がいいだろうか?
確かに、道を安全と言えるレベルまで間引きするのは大変ではあったが、そもそもその道には、破壊した後に残った芽が大量に残っていた。
普通なら、種が落ちたとしても、そんなに早く芽が出ることはないだろうが、俺のブレスには、生命力が溢れているらしく、破壊した直後でも、大量の芽が残っていた。
それらは、三日も放置すれば元の木と同じ大きさまで成長するくらいであり、除去のためにもう一度ブレスで道を作り直すとか言う非常に面倒くさいことをしなければならなかった。
本来なら、破壊してもすぐに治るというのはメリットかもしれないけど、今回ばかりはデメリットでしかない。
しかも、ただ除去するだけではどこからともなくまた芽が出てきてしまったし、間引きよりも、こっちの方が時間がかかったくらいだ。
まあそれでも、何とか除去し終え、川までの道は完成した。
後は、リト達が帰ってくるのを待つのみである。
「皆さん、お疲れ様でした」
「お疲れ様です。立派な道ができましたね」
「これも皆さんの協力のおかげです。ありがとうございます」
領主への報告も兼ねて、領主の家へと向かいながら、そんなことを話す。
まだ道を作っただけではあるけど、ここから取引先が見つかれば、立派な貿易ルートになる。
隣の領地を通らなくて済むのなら、流通を止められることを恐れる必要はないし、無理な要求も突っぱねやすい。
領主も、この結果には喜んでくれるだろう。
「そういえば、りょうしゅ、あってない」
「多忙な方ですからね。ナツキがいた頃は、のんびりできていたようですが、その仕事がすべて回ってきたものですから、てんやわんやです」
「そっか」
ただでさえ、内政でも忙しいのに、花の都を守るために、方々への説得もしなければならないと考えると、確かに多忙かもしれない。
ラウネさんは、よく会っているようだけど、仕事も手伝っているのかな。
いつも孤児院にいることが多くて、間引きの際にも、早めに帰ることが多かったけど。
まあ、ちゃんと回っているならいいのかもしれないけど、前世の俺みたいになってないといいけどな。
働き過ぎは寿命を縮める。それは身をもって知っているから。
「……なにやら騒がしいですね」
領主の心配をしながら家まで着くと、なにやら声が聞こえてくるのがわかった。
誰か来ているんだろうか?
「ああ、ラウネ様、お帰りなさいませ」
「ええ。何かあったのですか?」
「それが……」
メイドさんが出迎えてくれたので、話を聞いてみると、どうやら来客があったようだ。
お相手は、隣の領地の人らしい。
この町を、観光地にしようと画策し、色々言ってきている人だ。
また無茶な要求を言ってきているのかと思ったけど、今回は文句を言いに来たらしい。
それが、新たに道を作っていることに対するもののようだった。
「ここ最近、新たに道を作っているようだけど、そんなことに力を入れるより、観光地化に向けて、もっと宿や店を増やしたらどうなのかと、詰め寄っているようで……」
「あらあら」
お相手の考えとしては、道なんか作っても、どうせ自分の領地を通ることになるんだから、無駄なことをしてないで、諦めて従えってことだね。
川の存在を知らないのか、知っていて無理だと思っているのかはわからないけど、だいぶ高圧的なようだ。
領主も、ナツキさんほど話がうまいわけではないようで、断り切れなくて困っているらしい。
これは、助けに入った方がいいだろうか?
「いったい何の騒ぎだ?」
「あ、にくす!」
どうしたものか迷っていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
振り返れば、そこにはリトとイグニスさんの姿がある。
どうやら帰ってきたようだ。
「港町まで話をつけに行って帰って見れば、立派な道ができていたから期待して見れば、また問題事か?」
「うん、それがね……」
俺は、先ほどメイドさんから聞いたことを話す。
すると、リトは呆れたように手を額に当てて、ため息をついた。
「すでに勝負はついているというのに、なんとも浅はかなことだ」
「しょうぶ、てことは、もしかして?」
「ああ、取引相手は見つかった。まだお試しという段階だが、船を出してもいいそうだ」
「おー!」
どうやら、無事に取引相手を見つけてきてくれたらしい。
まだ、どんなものがあるのかはわかっていないから、お試しで船を出してみて、儲かりそうなら今後もご贔屓にということらしいけど、こちらが見つけた特産品を考えれば、継続的に取引してくれる可能性は高い。
流石はリト、頼りになる。
「とりあえず、その面倒な奴にはお帰りいただけ。何なら、我が話をつけてやろうか?」
「それなら私もご一緒しますね。その姿では、ね?」
「む、そうだな。全く、早く成長しないものか」
リトを気遣ってか、ラウネさんが名乗りを上げる。
領主は今も話をしているようだけど、乱入する形になって大丈夫だろうか?
まあ、何とかなるか。
「どうかお願いします」
「ええ、あなたは皆さんにお茶でも出してあげてくださいな」
そう言って、ラウネさんとリトは去っていった。
果たして、うまく話をまとめられるといいけれど。
そんなことを思いながら、応接室で待つことになった。




