↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
424/437

第三百八十二話:ラウネの特技

 それから、一通り町を回って見た。

 相変わらず、町には花が咲き乱れ、美しい場所だとは思うが、その裏に伸びる悪意の籠った手を想うと、ちょっと可哀そうに思えてくる。

 見た目は何ともないけど、見えないところでじわじわと腐り始めているみたいな、そんな感じだろうか。

 できれば、腐る前に何とかしたいところだけど、どうにもいい案が思いつかない。

 フェルには悪いと思ったが、花街にも足を延ばしてみたけれど、ここも本来はもっと建物が少なかったらしく、劇場などがある程度だったという。

 見たかった演武が見れたのはいいけど、これを特産品にすることはできないし、どうしたものかね。


「道づくりに関しては、我らが本気を出せば何とかなるだろう。取引先も、魅力的な品があれば乗ってくれる可能性はある。だが、物がない現状では、どうにもならんな」


「魅力的な品、うーん……」


 劇場の端で、考え込んでみるが、なかなか思いつかない。

 いっそのこと、視点を変えてみてはどうだろうか?

 そもそも、たとえ魅力的な品だとしても、取引先が欲しいと思うものでなければ意味はないわけだし、取引先が欲しいものを見つけるというのはありかもしれない。

 後は、他の人に意見を聞くのもいいだろう。

 俺達だけではわからないことも、他の人からすればなんてことはないものかもしれないし、聞き込みは大事だ。


「そうだな。ここは二手に分かれて、調べてみるとするか」


「うん」


 聞き込みをする班と、取引先を見つける班。二手に分かれることにする。

 俺はフェルと組むことになった。まあ、イグニスさんはリトの護衛みたいなものだし、当然の分かれ方だね。

 どちらをやるのかという話だけど、俺達は聞き込みする側になった。

 この世界の地理に関しては、リトの方が圧倒的に詳しいし、川から繋がる町に心当たりもあるようだ。

 なら、そちらは任せてしまっていいだろう。

 俺達は、ひたすら地道に聞き込みをするとしよう。


「それじゃあ、聞いて回ろっか」


「おー」


 できることなら、この町の人達に聞きたい。

 観光客に聞いても、この町のためになるような答えは返ってこないだろうからね。

 というか、多分観光客が求めているのは、潤沢な宿の部屋だと思う。

 今だって、相当数が野宿を強制させられているし、不満は多いだろう。

 もちろん、観光業を切り捨てるわけではないから、ある程度は聞いた方がいいかもしれないけど、宿関連は完全に相手の手の内だから、あまり手を出したくはない。

 この辺も、こちらの手の中に入れられたら強いけどね。


「さて、ききこみ」


 色々な場所で、話を聞いていく。

 元からこの町に住んでいる人達は、やはり観光客に迷惑しているようだ。

 いくらルールを厳格化しても、それを守らない奴は必ず出てくる。

 ポイ捨てに関してはかなり厳しく取り締まっているけれど、それは昼間の間だけで、夜の間はそもそも警備が少ないこともあり、あまり取り締まられない。

 夜にポイ捨てしたり、大声を出したり、迷惑している人はたくさんいる。

 特に宿屋の近くはそれが酷く、中には無断で家に入られたりすることもあったようだ。

 宿屋の周辺だけ治安が終わっている。警備隊の人も大変そうだ。

 大抵は、愚痴ばかりで、あまり有用な情報は掴めなかったけど、子供に話を聞いた時に、これはと思うものがあった。

 それが、花のアクセサリーである。


「花のアクセサリー?」


「うん! ラウネ姉ちゃんがくれたんだ!」


 そう言って見せてくれたのは、花飾りが施されたブローチだった。

 見たところ、質感は金属に近いけど、ちゃんとした花らしい。

 こんな質感なのもおかしいけど、切ったり張ったりした様子がないから、最初からこの形だったように思える。

 領主の家で、地図を出した時も思ったけど、もしかしてラウネさんって結構器用に植物を作れるんだろうか?

 それは後で聞いてみるとして、これは結構使えるのではないだろうか。

 見せてもらったのは、ブローチだけではなく、他にも色々あった。

 中には、はさみと言った実用的なものまであったし、もしこれを自在に作れるのだとしたら、強力な特産品になるかもしれない。

 まあ、ラウネさんの負担がやばいから、主力にしていいのかはわからないけど。


「ひとまず、戻る?」


「うん」


 とりあえず、これに関しては確認して見なければならない。

 俺達は、さっそく孤児院に戻ることにした。


「お帰りなさい。何かいい案は浮かびましたか?」


「かくにん、ある」


「おや、なんでしょう?」


 俺は、さっそく先程聞いた話をラウネさんにしてみる。

 ラウネさんは、ああ、と思い出したかのように手を叩いていた。

 ラウネさんの能力は、花を操ることのようだ。

 花であれば、好きな形に変形させたり、様々な属性を付与することができる。

 あの時見たブローチは、そう言う形に育つように調整した花であり、種さえあれば、それを量産することも難しくはないという。


「でも、本質は花ですし、日持ちはしませんよ?」


「あのとき、みた、かれて、なかった」


 俺が見たブローチなどの作品は、どれも枯れているようには見えなかった。

 渡してから間もないのかと思ったけど、以前から大事にしているというような発言もあったし、ここ数日で貰ったものではないだろう。

 それでも、枯れているようには見えなかったから、枯れさせないこともできるんじゃないだろうか?


「うーん、枯れさせないってことはできないです。地面に植わったままのものなら、できないことはないですが、切り離されてしまうと、どうしても」


「じゃあ、あれは?」


「見た目は枯れていないように見えても、しっかり枯れていると思いますよ?」


 見た目に変化はないけど、枯れている。

 でもそれって、花として扱うなら問題だけど、アクセサリーなどとして扱うなら、何の問題にもならないよね。

 それらは見た目を飾るために使うものであって、重要なのは見た目だ。

 それらが枯れても変わらないのなら、十分使える武器になると思う。


「なるほど……枯れてしまうとダメかと思いましたが、見た目だけにこだわるなら、それでもかまわないというわけですね」


「そうそう」


「すみません、枯れた花にも役割があるのですね」


 花は咲き誇る姿を愛でるもの。だから、枯れてしまえば、その価値は著しく落ちる。

 ラウネさんの考えでは、枯れてしまっては意味がないと思っていたようだ。

 でも、その能力があるなら、問題はない。

 まだ売れるかはわからないけど、これは強力な糸口になりそうだ。


「ありがとうございます。希望が見えてきました」


 ただ、売れるものがあっても、それを相手が欲しがるとは限らない。

 取引先が、アクセサリーなんていらないというのなら、意味はないだろう。

 まあ、アクセサリーだけに留まらず、ある程度色々なものを作れるようなので、汎用性はありそうだけど、その辺はリト達の成果に期待するしかない。

 リト達は、取引先を見つけられるだろうか。

 俺は、あちらの成果に期待しつつ、その帰りを待つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。