第三百八十一話:町の名産品
外の勢力の介入によって、問題が起きているというのなら、その介入をすべて断ち切るのがいいとは思うけど、実際はそんなにうまくはいかない。
そんなことをすれば、流通を断ち切られるし、そもそも今の時点で宿屋の権利を握られている関係上、そう簡単に断ち切れるとも思えない。
すべてを自前で何とか出来るなら、そもそもこんなに困っていないし、どうにかして穴を突かないと、どうしようもない。
何か、隙があればいいのだけど。
「流通が止められた場合、何が不足する?」
「そうですね……食料品はもちろん、日用品や武器類、魔石もでしょうか。その他にも色々あると思います」
「この町で、自給自足できるものはないのか?」
「多少であれば生産していますが、町全体を潤すとなると、あまり。花でよければ、元となる種さえあれば、いくらでも作れますが」
「ふむ、名産品は花と言ったところか」
一応、領地はこの町だけではなく、他にもいくつかの町や村があるようだけど、それらの町が生産するものはそこまで多くはない。
すべてをかき集めれば、花の都だけなら何とかなるかもしれないが、そんなこと許容されるはずもないよね。
名産品も弱い。
花は確かに華やかではあるが、日持ちがしないのがネック。
押し花にするなどすれば多少は持つかもしれないが、せいぜい観光客が記念に少し買う程度だろう。
観光業で儲けていくならありな選択肢かもしれないが、今はその観光客をわずかに維持しつつ、追い返そうとしているわけで、それでは名産品の意味がない。
商人などに買ってもらうにしても、花はどちらかというと嗜好品だし、何かイベントでもないと数は売れない気がする。
「仮に売れる名産品があっても、流通を制限されてしまったら意味がないしな。流通網を確保するのが先決ではないか?」
「だが、この辺りは行き止まりなのだろう? どう確保するのだ?」
「空を飛ぶとか?」
「なるほど。空を飛んでいる相手を止められる関所はないな」
この世界には、空を飛ぶ手段を持つ人族は少ない。
一応、飛行魔法とか、ないことはないが、相当希少らしいので、わざわざそのためだけに法を整備するようなことはまだしていないようだ。
まあ、それやったら完全に違法な気がするけど、相手が攻撃してくるなら仕方ない、のか?
まあ、いずれにしても、空を飛ぶ方法を確立するのは難しいだろうから、あんまり意味はない気もするけど。
リトも、少し疲れてきただろうか?
「ちず、ない?」
「このあたりのものでしたら、用意できますよ」
とりあえず、このあたりの地形を把握したいと思って、ラウネさんに頼むと、少々お待ちくださいと言って、手を掲げた。
すると、どこからともなく植物の葉や蔓が伸びてきて、テーブルの上にちょっと立体的な地図が出来上がる。
こうして目の当たりにすると、本当に幻獣なんだなぁと思いつつ、随分器用だなと感心した。
「ここがこの町で、こちらが入り口です」
「ほんとに、いきどまり」
見た感じ、この町の周りは森に囲まれており、先には何もない。
入り口から先には、いくつかここの領地の町や村があり、その先に別の領地が広がっているようだ。
一応、森の先には広い川があるようだけど、海まで繋がっているのかな?
船があれば、ワンチャン隣の領地を通らずに、別の町まで行ける可能性もありそう。
「この川を利用できないか?」
「ふむ、確かに道が引ければ、船での運搬もできそうだな」
「そのあたりはどうなんです?」
「この領地に造船設備はありませんし、道を引けたとしても、魔物の駆除などをどうにかする必要がありますね」
俺が考えていることはみんなにもわかっていたのか、意見は出たけど、現実的には難しいとのこと。
まあ、森を切り開いて道にするって、かなり時間がかかることだからね。
フェルと初めて出会ったヒノアの大森林でも、一部を切り開くだけで命がけだったし、人の手で切り開くのには、時間もお金も相当かかる。
仮に道をどうにかできたとしても、船を作る場所がないならどうしようもないし、現実的ではないか。
「仮に船を出せたとして、行く当てはあるか?」
「海まで出れば、別の領地には出られます。面識はありませんが」
「取引先にできれば、そこで船を作ってもらい、航海ルートに加えてもらうこともできるかと思ったが……」
ここで船を作れなくても、取引先が船を作れるなら、確かに何とかはなるかもしれない。
ただ、その場合、こちらに船を回すということは、そうまでして手に入れたいと思うような品をこちらが用意しなければならない。
花に関しては、日持ちがしないし、船での輸送は難しい。となると、その他の品で、且つわざわざ船を出してくれるほど希少なものがないといけない。
そんなもの、この町にあるだろうか?
「うーん……」
「まあ。そう簡単には思いつかんか」
しばらく考えてみたけど、いい案は思いつかなかった。
そもそも、俺達はこの町についてあまりよく知らない。
もう一度町を回って見れば、何かこれだと思うものが見つかるかもしれないし、一度町を見て回って見るのはありじゃないだろうか。
「そうですね。この町の魅力は花だけではありません。町を見て回れば、何か気づくこともあるかも」
「いいだろう。今一度、町を回って見ることにしよう」
ひとまずの方針が決まり、領主の家を後にすることにした。
ラウネさんは、そろそろ孤児院に戻らないといけないとのことで、別れることになった。
一応、町についてある程度教えてもらったけど、何から見て回ろうか。
「ひとまず、飯でも食べるか」
「そうだね」
時間もいい感じだったので、腹ごなしに適当な店に入る。
そう言えば、この町では飲食店が多いんだよね。
ラウネさんによれば、これらの店も、最初は数軒だけで、他は後から作られたもののようだ。
特に、露店はその傾向が強く、半ば違法経営されているような状態だという。
まあ、利益は出ているし、それに伴ってポイ捨てなどのルールも超強化したから、まだ何とかなっているらしいけど、本当はこんな風にはしたくなかったという。
これまでにも、色々と苦労があったようだ。
「ご飯が美味しいって言うのは、強みになりませんかね?」
「観光においてはいいかもしれんが、輸出するとなると弱いな。どうしても、日持ちするものでないといけないというのがネックになる」
そもそも道を引けるかとか、取引先を確保できるのかという問題はあるにしろ、もしできた場合のことを考えると、それが一番のネックである。
船での移動はどうしても時間がかかるし、数を積めなければコストの方が高くなってしまう。
つまり、日持ちがして、大量に確保できるものでないといけないわけだ。
食料品は、携帯食料などにすれば日持ちはするかもしれないが、それに美味しさを求めることは少ないし、わざわざ取り寄せるほどのものでもないと思う。
なかなか難しい問題だなと思いつつ、ご飯を食べるのだった。




