第三百六十一話:巫女の部隊
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神殿の目的は、帝国が持ちだした兵器を奪い取ること。そして、俺達の目的は、兵器が何であるかを調査し、もし幻獣であるならそれを助け出すことである。
同じなようで少し違う目的ではあるけど、村を助けるという一点においては、目的は一致していると言っていい。
であるなら、ここは村人に信用されている巫女を利用して、村を守り、どさくさに紛れて兵器を奪取するというのが一番だろうか。
仮に、兵器が本当に兵器で、幻獣関係ないってなったら、別に上げちゃってもいいし。
……いや、一応幻獣を捕らえることができる兵器もあるのだから、渡しちゃダメか。
もしそうだったら、完膚なきまでに破壊しよう。そうしよう。
「アーリヤ様がこうして見つかった今、兵器に固執する必要もないかもしれませんが、一応は上の命令。それに、アーリヤ様ゆかりのものであるなら、神殿が保有すべきです。なので、私達はこのまま村に陣取り、帝国を迎え撃つつもりですよ」
「貴様らだけで何とかなるのか? 一応は、帝国の兵隊だろう」
「おや、私達を舐めないでほしいですね。私が率いる部隊、ラクーンは、かく乱作戦はお手の物ですよ?」
神殿には、いくつかの部隊があり、巫女はそんな中でもすべての部隊を指揮する立場にあるらしい。
中でも、直轄部隊であるラクーンは、幻術に特化しているらしく、潜入はもちろん、かく乱なども得意なようだ。
幻術使いって、結構厄介そうだなぁ。フェルも同じく幻術が使えるけど、どっちが上だろうか。
あんまり信用しすぎて、化かされないようにしないといけないね。
「現在は、足止めをしてもらっています。村人を避難させるために、時間が必要でしたからね」
「貴様らは、アーリヤさえ手に入れば、他はどうでもいい集団だろう。わざわざ村人を助けるのは、信者確保のためか?」
「私達を血も涙もない様な集団にしないでくれます? これでも神の声を届ける者として、人々の救済には重きを置いています。あくまで、優先順位があるだけで、他がどうでもいいなどと思ってはいません」
今回は、アーリヤを捜索する任務ではなかったから、優先順位として罪のない人々が上がったってことか。
でも、以前の町で襲ってきたのは、何としてでも俺を確保したかったから、他はどうでもいいって思っていたってことだよね?
優先順位をつけるのは大事かもしれないけど、だからと言って平然と殺しができるのはよくわからない。
日々の糧をいただくため、とかならまだわかるけど、完全に私利私欲だもんね。
本当に、神殿はアーリヤを捕まえて何をする気なんだろうか。
「本来なら、すでに村人の避難は完了して、陣地作成に入っているはずだったんですけどね。思いの外馬鹿が……げふんげふん、村愛の強い方がいらっしゃるようで、なかなか避難してくれないのです」
「さっきの連中か。まあ、奴らがいたところで、戦力にはならんだろうな」
一応、すでに村の大半は避難させたようなのだけど、一部がまだ残っているから、迎撃準備もできない様子。
村人は、別に戦闘経験があるわけでもないし、特別な加護を持っているわけでもない。
だから、どう考えても足手まといであり、巫女としてはさっさと避難してほしいらしいのだけど、話を聞いてくれないという。
こうなってくると、村人を守りながら戦うことになり、こちらとしても不利になる。
巫女の部隊も、直接戦闘はそんなに得意じゃないみたいだしね。
「ええ。ですが、ここにアーリヤ様がご降臨なさったと言うのなら、話は別です。その大いなる力をもってすれば、帝国を退けることくらい、簡単ですよね?」
「貴様、我らを体のいい戦力として使うつもりか?」
「その通り。腐っても神の護衛なのですから、それくらいは簡単でしょう?」
本来、守りながらの戦闘は分が悪いが、俺達という戦力がいるなら、それでも勝率は高い。
特に、巫女にとって、アーリヤは絶対的な存在っぽいし、味方についてくれるなら、負けはありえないと思っていることだろう。
帝国の兵器がどんなもんかはわからないけど、普通の兵士達なら、まあ、何とかはなると思う。
というか、倒すだけなら、遠距離からブレスで薙ぎ払ってもいいくらいだしね。
もちろん、そんなことしたら兵士達がただじゃすまないから、絶対にやらないけど。
「むら、まもりたい、おなじ。なら、きょうりょく、する」
「流石はアーリヤ様! 頭の固い護衛とは違いますね!」
「こんな奴らと肩を並べるなど死んでもごめんだが……まあ、要は兵士を無力化し、兵器を奪取すればいいのだろう? それくらいなら、簡単だ」
リトは心底嫌そうな顔をしていたが、村を守るためにも、兵器となってしまっているかもしれない幻獣を助け出すためにも、無駄な敵を作るべきではない。
さて、そうなってくると、もう少し情報が欲しいな。
巫女は兵器について、何か知らないだろうか?
「では、ひとまず、帝国の動きについて情報共有しておきましょうか」
そう言って、巫女はかく乱部隊からの情報を俺達に伝えてくれた。
まず、規模としてはおおよそ二百人程度らしい。ほとんどは歩兵部隊みたいだけど、その後ろに兵器を運ぶ輜重部隊がいるみたいだね。
運んでいる兵器は、かなりの大きさで、部隊の半数以上がその運搬に割かれているようだ。
兵器自体はコンテナの中にしまわれて運ばれているらしく、中身はわかっていない。
強引に見ようとすることはできるが、今回は村人に対し、村を救ったということを見せつけ、信者となってもらうことも含まれているらしいので、村人が残っている今、到着されないのも困るから、あえて見ていないらしい。
村人の避難が完了していれば、お得意のかく乱戦法でどうとでもなったらしいんだけどね。村人に見られていると、それが難しいようだ。
だったら村人に幻術をかけて避難させてしまえば、とも思ったけど、そういうことはしないんだろうか?
基準がよくわからない。
「このままのペースなら、恐らくあと三日もすればここに到着するでしょう。それまでに、村人の説得ができればいいんですけどね」
「ああなった人間に何を言っても無駄だ。人は理屈では動かん。合理的でなくても、命を賭してでも動く時がある。神殿なら、それくらいはわかっているだろう?」
「ええ、まあ、そう言う感情を利用してきましたからね。今回は、ちょっと焚きつけ方が悪かったかもしれません」
「ならば、避難させることはもう諦めよ。今の戦力だけで、迎え撃つしかない」
「仕事が増えるのは嫌ですが、アーリヤ様と共闘できると考えれば、これ以上ない誉れですね。なら、さっさと陣地作成に入ってしまいましょうか」
そう言って、巫女はなにやらトランシーバーのようなものを取り出し、どこかに連絡を取った。
すると、どこからともなく黒いフードを被った集団が現れ、てきぱきとなにやら準備を始めていく。
いるとは思っていたけど、本当にどこにいるんだよ。気配を感じないんだけど?
とても人間とは思えない技に驚愕しつつ、とりあえず様子を見ることにした。




