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第二百八十五話:転生後の姿

 日も落ちてきて、辺りが暗くなり始めた頃、フェルが見つけたという住処に到着した。

 どうやら、洞穴らしい。

 地層が露出した小高い丘の下にできた小さな洞穴。

 水場からもほどほどに遠く、地面もあまり濡れていない。

 洞穴の中は、少しいびつな石に囲まれており、ここなら確かに住処としては十分だろう。

 この短期間で、よく見付けられたものだ。


『湿地にしては上等な住処だな。よくやった』


『ありがとうございます!』


『でも、ちょっと狭いのが難点だね』


 住処としては十分とは言ったが、流石に俺達三人が全員で入るとなれば手狭過ぎる。

 ニクス一人くらいなら余裕だけど、俺達は外に出るか、人化しなければ一緒に入ることは難しいだろう。

 まあ、場所も場所だし、これ以上を望むのは罰当たりかもしれないけどね。


『それはごめん。でも、あんまり時間もなさそうだったしさ』


『責めてるわけじゃないよ。とても感謝してる』


『ふむ……まあ、転生の間だけでも使わせてもらえれば十分だ。そう時間はかからない』


『転生って、どうなるの?』


『体を炎で焼き、灰となる。そして、その灰から、新たな体が生まれるのだ』


 貴様も見たことがあるだろう? と言ってきたけど、心当たりがない。

 色々考えてみたけど、多分、ヒノアの大森林の住処にあった、あれだろうか?

 俺が住処を見つけたばかりの頃、奥の方に灰が溜まっていたけど、あれがニクスの灰だったのかもしれない。

 灰になって、そこから生まれるなんて、凄く神秘的だね。


『あまり見せるようなものでもないから、少し待っていろ。すぐに済ませる』


 そう言って、ニクスは洞穴の中へと入っていく。

 ニクスの体から発せられる光が、だんだんと小さくなっていくのを見て、ちょっと心配になった。

 果たして、どんな姿になるんだろう? 転生した拍子に、俺達のこと忘れたりしないよね?


『大丈夫だよ。ニクスさんはそんなに弱い人じゃないって』


『それはそうかもしれないけど、やっぱり心配じゃない?』


『まあね。でも、今までにも何回もやってきたことなんでしょう? なら大丈夫だよ』


 確かに、ニクスはすでに何回も転生をしてきただろう。

 その時は、同行者などもいなかっただろうし、全部一人でやっていたはずだから、今より危ない状況だったのは間違いない。

 それでも、きちんと生き残っているのだから、そんなに危険なものではないのかもしれない。

 ちょっとそわそわしながらも、その場で待つ。

 しばらくして、洞穴の中から、ひと際大きな光が発せられた。

 転生、したんだろうか?


『……見に行くべきかな?』


『どうかな。あんまり見せたくなさそうだったし、待つべきかも』


 万が一にも何かあったら嫌だけど、ニクスが嫌がることはしたくない。

 どうしたものかとそわそわしていると、やがて洞穴の中から、小さな影が出てくるのに気が付いた。

 もしかして、ニクス?


『終わったぞ』


『ニクス、なんだよね?』


『そうだ。このような姿ではあるがな』


 そこにいたのは、小さな雛鳥だった。

 いつもは、俺のことを見下ろしてくるニクスなのに、今では手のひらよりも小さい。

 仄かに発光する体と、緋色の羽が似ていると言えば似ているけど、普段の偉大な姿とは似ても似つかない、可愛らしい姿だった。


『可愛い……』


『……おい、我を愛玩動物として見るな』


『す、すみません! つい……』


 声も少し変わっているように思えるけど、この喋り方はニクスで間違いない。

 いやはや、子供の姿になるとは言っていたけど、思ったよりも小さくなったな。

 この姿では、その辺の魔物に一飲みにされてしまいそうだ。


『この姿ならば、そこまで邪魔にはならんだろう。入っていいぞ』


『う、うん』


 ニクスの許可も出たので、洞穴の中に入る。

 奥には、転生の後らしき灰の山があった。

 これが、さっきまで動いていたニクスの体なんだよね。そう考えると、ちょっと不思議な気持ちになる。

 ひとまず、夜ももう遅いので、適当に寝床を整えて、寝る準備をした。


『ねぇ、その姿って、どれくらいで成長するの?』


『このような雛の姿なのはほんの数日だけだ。それからすぐに成長し、貴様の体の半分くらいにはなろう。完全に元に戻るには、一年くらいか』


『結構かかるんだね』


 いや、一年であれだけの大きさになるならかなり早いとは思うけど、定期的に転生しなければならないと考えると、その一年はだいぶ大変そうだ。

 この小ささでは、その辺の魔物にも後れを取るかもしれないし、そうでなくても、不慮の事故で死んでしまう可能性もある。

 もちろん、その度にまた転生するんだろうけど、それではいつまで経っても成長できない。

 まともに行動できるまでは、あまり外に出られないと考えると、安全な住処が重要なのもの頷けるね。


『いつもなら、完全に成熟するまでは外に出ることはないが、ここで一年も足止めを食らうと考えると、早めに出ることも考えた方がいいかもしれん』


『それ、大丈夫なの? 弱体化してるんでしょ?』


『雛から成長できれば、多少の魔法は扱える。その辺の魔物に後れを取ることもなくなるだろう。そこまで心配するようなことじゃない』


『そうかなぁ……』


 一応、ある程度成長すれば、制限も緩和され、普通に魔法を使うこともできるようになるみたいだけど、それでも全盛期に比べたらかなり弱体化している状態。

 必然的に、いつもよりは危険が増えるし、あんまり出歩かない方がいいと思うんだけど。


『我はそこまで弱くはない。たとえ力が制限されようとも、今までの知識と経験があれば、大抵の奴には負けん』


『ほんと?』


『ああ。仮に負けたとしても、その時はまた転生するだけだ。危険と判断したなら、その時に改めて引きこもればいいだけの話。簡単なことだろう?』


『たとえそうでも、俺はニクスが死ぬところを見たくはないよ』


 何度でも転生できるから、死んでもいいというのは、ちょっと違うと思う。

 今回みたいに、自主的に転生するのだったら、安全な場所ですることもできるけど、誰かに殺されたりして転生したら、その場で転生することになる。

 最悪、目の前に殺した元凶がいる状態で転生する場合もあるわけで、それでは何度も殺されることになってしまうかもしれない。

 雛鳥の状態でどこまで抵抗できるかはわからないけど、力が制限されているなら勝ち目は薄いだろうし、何度も痛い目を見ることになるだろう。

 そんなの、拷問と同じだ。いくら転生できるとは言っても、痛覚がないわけではないんだから。


『本当に、貴様はお人好しだな』


『ニクスだからだよ』


『はぁ、まあいい。なら、しばらくはここで療養するとしよう』


 ニクスも納得してくれたようなので、ひとまずは安心である。

 イナバさんの捜索はしばらく頓挫することになるけど、ニクスの安全に比べたら、仕方のないことだ。

 さて、そうと決まれば、ニクスのためにもお世話を頑張ろう。いつも、やってもらっていることを返すのだ。

 俺は、小さくなったニクスを両手で囲いながら、眠りについた。

 誤字報告ありがとうございます。

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