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第二百七十四話:レミアの大森林

 累計三百話を達成しました、ありがとうございます。

 短い滞在となってしまったが、借家を引き払って町を発つ。

 エミリアさんは、急な退去にびっくりしたようで、何とか留まってもらおうと必死の様子だったけど、その件に関しては本当に申し訳ない。

 Sランク冒険者が滞在しているとなれば、相乗効果で他の冒険者も来る可能性もあるし、ダンジョンの攻略も進んだかもしれないからね。

 まあ、結局ダンジョンに関しては、ディートリヒさんがボスまで倒してしまって、攻略したも同然だから、もう目的は果たしたと言ってもいいのかもしれないけど。

 ディートリヒさんだって、一応報告はしているはずだしね。


『ディートリヒさん、大丈夫かな』


『奴のことより、自分の心配をしたらどうだ? 自分がまだまだ子供だということが、身に染みてわかっただろう』


『いや、それはそうなんだけど、これからやっていけるのかなって』


 強さという意味では、心配などしていない。

 ドラゴンを単身で倒せるような強さがあるのだから、むしろ俺がいつ狩られるかもしれないということを心配すべきだろう。

 俺も、まだまだ上がいるんだということは理解できたし、強さを追い求める修行をするのは、前向きな気持ちになった。

 ただ、俺が心配しているのはそう言うことではなく、ディートリヒさんの評判のことである。

 今のところ、ディートリヒさんは、各地に強力な魔物、この場合は恐らく幻獣を倒していくことによって、名を上げている。

 特に、ドラゴン狩りの話は有名なようだから、同じような依頼が舞い込む可能性は十分にあるだろう。

 しかし、今はドラゴンは幻獣の一人で、神の遣いであるということを知ってしまった。

 今まで倒してきた相手を、もう倒すことはできない。そう考えると、ディートリヒさんに対する評判も、変わっていくのではないかと思うのだ。

 人々を助けることに変わりはないだろうけど、その過程で、魔物を倒すことがなくなれば、いらぬ噂が立つかもしれない。

 それが、ディートリヒさんを心配するものならいいけれど、もし、魔物と繋がっているなんて言う突拍子もない解釈をされたら、ディートリヒさんは再び追い出されてしまうかもしれない。

 そうなったら、ちょっと悲しいなって。


『何を言うかと思えば……奴が孤独になったところで、我らに関係があるか?』


『あるよ。俺が真実を伝えちゃったから、こうなってるわけだし』


『あのなぁ、結果として、奴は幻獣を殺し歩いていた。それは許されることではないし、やり方はあれだったとはいえ、止めた貴様は褒められるべき存在だろう。貴様が気にする必要はない』


『うーん……』


 まあ、確かにそうなんだけどね。

 真実を伝えなければ、これからも幻獣がやられることになっていただろうし、ニクスやフェルに被害が出ていたかもしれない。

 それを考えれば、死ぬわけでもないだろうし、問題はないように思える。

 今後会うかどうかはわからないけど、もし困っていたら、責任もって助けてあげないといけないね。


『余計なことを考えるな。それより、今はレミアの大森林のことだ』


『あ、うん』


 ディートリヒさんのことは気になるけど、今は泉の声の主を探すことである。

 レミアの大森林は、竜脈が複数通っていることもあり、豊富な魔力に満ちている。

 それ故に、人々も開拓することができず、最低限、森の浅瀬に入れる程度らしい。

 そんな場所で、恐らく奥まで入っていったであろうディートリヒさんは凄いと思うけど、今はそれは置いておいて。

 ニクスの予想では、竜脈を通じて、声を届けている者がいるのではないかという話だった。

 幻獣の中には、転移能力を持つ者もおり、それらは竜脈の流れに乗って移動することができるのだという。

 傷つき、弱っている状態だからこそ、転移まではできなくとも、声を届ける程度ならできたと考えて、その仮説に至ったわけだけど、まずは確証を得なければならない。

 だからこそ、ディートリヒさんが声を聞いたという、レミアの大森林に向かっているわけだ。


『仮に声が聞こえたとして、特定とかできる?』


『ある程度なら、竜脈の流れを見て、どの方角から来たくらいならわかるかもしれんが、基本的には無理だろうな』


『なら、方角から闇雲に探すしかないんだね』


『そもそも、竜脈から声が聞こえたから、その主を探しに行こうなんて考える馬鹿はいないんだがな。だがまあ、そこは安心しろ。追えそうな奴に心当たりがある』


『え、ほんと?』


 もし、その声が転移能力によって届けられたものならば、同じく転移能力を持った者ならば、特定も可能かもしれないという。

 確かに、俺達は竜脈の流れを見るくらいしかできないけど、転移能力持ちは竜脈の中に入れるわけだからね。

 当然、より詳細に方角を見つけることができるし、声の強さから、ある程度の距離を推察することもできるかもしれない。

 なるほど、それなら何とかなりそうだ。ニクスの広い顔に感謝だね。


『その幻獣は、レミアの大森林にいるんですか?』


『いや、いない。ただ、レミアの大森林にも、幻獣はいるはずだ』


『へぇ、知り合い?』


『知り合いと言えば知り合いだが……』


 ニクスは、少し難しそうな顔をしながら言い淀んでいる。

 何か問題でもあるんだろうか?


『……とりあえず、これだけは言っておく。もし奴から招待されても、絶対に受けるなよ』


『? それってどういう……』


『ああ、思い出すだけで忌々しい……!』


 どうやら、昔に何かあったようである。

 何があったかはわからないけど、ニクスにも苦手なものってあるんだね。

 そこまでニクスが苦手なものなら、ちょっと会って見たい気持ちもあるけど、ニクスが手に負えないほどのレベルだと考えるなら、下手したらお陀仏だし、危ない橋は渡らない方がいいか。


『なんか怖くなってきた……』


『大丈夫だよ、フェルは俺が守るから』


『ふふ、ありがとう、ルミエール』


 そんなことを話しながら飛び続けること数週間、ようやくレミアの大森林へとやってきた。

 大森林というだけあって、かなり広大で、見渡す限り森になっている。

 ヒノアの大森林と違うところは、その木の色だろうか。

 全体的に暗く、葉の色も緑というよりは青に近い。

 寒い地方なら、もしかしたらこういう色もあるかもしれないけど、ここはそこまで寒冷というわけではないし、季節も夏。ちょっと変な色合いだね。


『ここが複数の竜脈が通る場所だからこその光景だな。木々が魔力を吸収して、溜め込んでいる証拠だ』


『へぇ』


 魔力、というか、この場合は竜脈があるか否かの問題かな?

 竜脈の近くの大地は、豊かになったり、強固になったりと様々な効果をもたらす。

 それは土地によって変わり、この土地の場合は、溜め込む性質が強いようだ。

 竜脈の魔力によって育まれた木々は、魔力を豊富に吸収し、その色を変えるのだ。

 ニクスの話では、ヒノアの大森林にも竜脈が通っていて、あそこはこことは違い、放出することに寄っているようである。

 それ故に、木々は大きく成長し、魔物も魔石が大きくなりやすいのだとか。

 一口に竜脈と言っても、いろんな効果があるんだね。

 なかなか面白いなと思いつつも、今回の目的は、泉である。

 さて、こんな広大な森から見つけることができるんだろうか。

 ちょっと不安に思いながら、森の中に入っていった。

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