↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
57/59

第56話『雷鳴の空域』

 蒼天の森にて──


 ラースが再生を始めると、青黒い輝きを帯びた鱗が映し出された。

 光を受けた面が硬質に反射し、その巨大な瞳はこちらをまっすぐに見据えている。


「これは、先ほどのゼルヴェリオンさんですね!」


「この迫力、心臓に悪いからやめてほしいな……ん?」


 映像の右端で闇が揺れ、灰色の古びたローブをまとった影が歩み出た。

 異様なことにフードの奥から覗いているのは、肉も皮もなく、剥き出しの白い頭蓋骨だった。


 骸骨は灰色のローブを引きずり、巨竜ゼルヴェリオンへ近づく。


 ゼルヴェリオンの足元で立ち止まると、口元をわずかに動かした。

 声は聞こえないが、落ち着いて何かを話しているようだ。


 そのとき、映像の端から一人の少女が飛びだしてきた。


「──リ、リディス!?」


 少女は満面の笑顔で、迷いなく骸骨の背へ跳びついた。

 衝撃で骸骨の身体が弾け、骨片が四方へ飛び散った。


 地面に転がった頭蓋骨が、カタカタと震え、リディスをにらんでいる。

 どうやら怒っているらしい。


 リディスは少し慌てた様子で謝っているように見える。


「こいつ、本当にあのリディスか!? 今と全然違うじゃないか……」


 散らばった骨が勝手に動き出し、吸い寄せられるように元の形へ戻っていく。

 やがて骸骨の姿が組み上がると、杖を軽く持ち上げてリディスへ合図を送った。


 リディスは少し真面目な表情になって一歩前へ出た。

 そしてその場にしゃがみ込み、手にした石で地面を削り始める。


 ゼルヴェリオンと骸骨は、その様子を見下ろしていた。


 線が伸び、円が重なり、地面の上で魔法陣が形を成していく。


 やがてリディスは顔を上げ、額の汗を拭う。

 彼女は魔法陣を見つめ、両手をそっと地面に置いた。


 ……プスン、と白い煙がひと筋上がる。


 骸骨は両手で頭を抱え、首を振った。


 そのままリディスに近づき、杖の先で魔法陣の一角をトントンと突く。

 リディスはハッとし、指摘された箇所へ数本の線を書き足した。


 線が繋がった瞬間、地面が純白の光を放ち始めた。

 リディスは両手を力強く叩きつけた。


 光が爆ぜ、幾筋もの輝きが天へと立ちのぼる。

 色鮮やかな火花が弾け、大輪の光が龍の鱗を五色に染めた。


 ゼルヴェリオンの青い眼が丸く見開かれる。


 光に照らされながら、リディスの目が輝いた。

 リディスは嬉しそうに骸骨へ飛びつき、ぎゅっと抱きしめた。



 映像を見終えて、思わず声が出た。


「ゼルヴェリオンの“花火”……元はこいつらの影響だったのか!?

 まったく、余計なことを教えてくれたもんだ……。

 それにリディスって、あんな明るいやつだったっけ?」


 ラースが静かに明滅する。


「映像を見る限り、リディスさんとゼルヴェリオンさんは、以前から面識があったようです。

 それに、骸骨の方も怒ってはいましたが、どこか慣れた様子でした。

 三人の関係性が気になりますね!」


 俺は腕を組んでうなる。


「たしかにな。

 ……でも、できればゼルヴェリオンには会いたくないんだよなぁ」


 ラースがくるりと回転する。


「そうですね。リディスさんのところにはまた伺うでしょうし……

 そこで、さりげなく聞くといいかもしれませんね」


 ラースと顔を見合わせてうなずき、俺たちは次のエリアへ進むことにした。


 ******


 蒼天の森を抜けてしばらく進んでいくと、開けたエリアに出た。


 一歩踏み込んだ瞬間、俺の全身を覆う艶やかな毛なみが、一斉に根本から立ち上がった。


「な、なんだこりゃ!」


 水溜まりを覗き込むと、そこに映っていたのは膨らんだ毛玉だった。


「どうやら、大気中に混じった電荷の影響で、毛が膨張しているようですね!」


 恐る恐る手足を動かしてみるが、可動域に問題はなく、身体も重くない。

 が、なんだかちょっと動きづらい……。


 気を取り直して周囲を見回すと、ここはかなりの高台であることが分かる。


「ここが《雷鳴の空域》のようですね!」


 目の前には、巨大な岩盤がねじれて盛り上がり、複雑な稜線が空へ向かって伸びている。

 上空には、洞窟内にもかかわらず暗雲が広がり、低い唸りが空気を震わせていた。


 見渡せば、同じような岩の塊があちこちでせり立ち、荒れた大地に複雑な影を落としている。


 《千里眼》と《ウィズセンサー》を発動し、周囲の様子を探る。


 足元の地面はところどころ深く裂け、何かに削り取られたような溝が深く沈んでいる。

 その底では、細い電光が這うように走り、暗がりを時折浮かび上がらせている。


 とりあえず、見える範囲に強い魔力反応はないようだ。


 ふと高台の一角に、食用植物を発見した。

 自生していた《シグノタケ》と《エルネアの葉》を鼻歌まじりに収納膜へしまっていると、耳の奥でジジッと細い音が走る。


 顔を上げると、遠くの闇が一瞬だけ明滅し、巨大な光球が猛烈な速度でこちらへ迫ってくるのが見えた。


 バチチチチッ!


 乾いた音が、大気を震わせている。


 光球は、俺たちのいる高台の少し下でぴたりと静止した。

 激しい発光の中心にいるのは、両翼合わせて7mほどの一羽の怪鳥だった。


<<――サンダーブレイク。雷鳴の光翼。>>


 バチバチと輝く雷光を全身にまとい、周囲の空間がぐにゃりと歪んで見える。

 光球の中心で羽ばたくたび、雷の尾が不規則な光の軌跡を描いている。


 俺は高台から見下ろしながら身構えるが、サンダーブレイクはどうやらこちらに気づいていないようだ。


 鋭い視線が向けられているのは、真下の一点──

 一本の木のそばに立つ、影だった。


 緑の帽子に黄色い飾り布をつけた、俺より少し小さな体躯の小人。


<<──森人(エルド)。古樹の森の民。>>


 サンダーブレイクが巨大な翼を大きく広げる。

 力強く一振り羽ばたくと、巨大な光球が小人へ向けて落ちていった。


 だが、光球は不自然な軌道を描き、小人のそばの木へと進路を変える。


 次の瞬間、衝撃波が広がり、バリバリという爆音が鳴り響く。

 至近距離で爆風を浴びた小人は吹き飛び、コロコロとボールのように転がっている。


 見ると、直撃を受けた木は半ばから裂け、白煙を上げて崩れ落ちていた。


 小人は逃げるでもなく、ただ呆然と空を見上げていた。


「キュオォォッ!」


 サンダーブレイクが甲高い鳴き声をあげた。


 周囲の雷雲から光が糸のように伸び、サンダーブレイクの体へ吸い込まれ始める。

 再び光が膨れ上がっていく。


「やめろ!」


 思わず声をあげ、眼下のサンダーブレイクめがけて高台から飛び出した。


 完全に丸い毛玉となった身体のせいか、思ったよりも速度が出ない。

 何とか体勢を整え、空中で発動した《ショックスタンプ》をサンダーブレイクの翼へ叩きつける。


 衝撃が走り、怪鳥はバランスを崩してフラフラと羽ばたいた。


 着地した俺の視界に、先ほどの小人の姿が入る。

 驚いたことに、白いローブを纏った足先は地面から浮いていた。


 緑の帽子から覗く耳は細く尖り、後ろで無造作に束ねた金髪は、雷撃に当てられたせいか縮れて広がっている。

 美しい顔立ちだが、不釣り合いに大きな丸眼鏡をかけている。

 その奥の鮮やかな緑の瞳は、落ち着き払って雷鳥を見つめていた。


「おい、大丈夫かオマエ!? 逃げるぞ!!」


 小人──いや、少女は服の汚れを軽く払い、眼鏡の位置を直すと、静かに口を開いた。


「素晴らしい。雷雲のエネルギーを吸い上げ、体内の器官で魔力と融合しているのか。

 ……ところで、この毛玉は私に話しかけているのかな?」


「は!? おい、しっかりしろよ!」


「これは失敬。だが、君の攻撃によるヤツの硬直時間は、約五秒残っている。

 そして雷の再チャージ時間を加味すれば、我々が爆散するまでおよそ十秒の猶予があるようだ。

 九……八……」


 ジュオォォォォ……


 少女のカウントとともに、サンダーブレイクの巨体が再び不穏な光を帯び始める。

 大気がジリジリと鳴り出した。


「クロ! 早く逃げてください!」


 上空でラースが渾身の体当たりをかました。

 パチィンと光の粒子が弾け、怪鳥の体勢が大きく崩れる。


 サンダーブレイクは先ほどよりも大きくよろけ、羽ばたきを乱した。


「おぉ……! 炭化までのカウントダウンが、さらに約二十秒延伸されたようだ。

 二十六……二十五……」


 淡々とカウントを再開する少女に、俺は心の中で絶叫した。


 勘弁してくれ!

------------


■クロ

身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》

尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》

ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》

Extra:《跳星バースト》


■ラース

スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》《ウルトラアルティメット・ギャラクシーバースト》

パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《偏重計測パーツ》


---


次回2026/8/29、0:10頃、次話を更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼ツギクル
★押してもらえると嬉しいです★
(ランキング集計されてるらしいです) ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
骨⁉️ アンデッドもいるのか! (´⊙ω⊙`)! サンダーブレイクとエルド……っと。 _φ(・_・ 硬直時間や充填時間を正確に見抜ける能力持ちかな? (´・ω・`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。