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第54話『アイスブレイク』

 ズヴォォォォォォ──ッ!!


 入口から吹き込む暴風に押し返されながら、外へ向かって走る。

 逆風をぶち抜いて出口を飛び出した瞬間、背後から白光(びゃっこう)が押し寄せた。


「クロ! こっちです!」


「うおおおぉぉぉ!」


 視界が白に染まる中、ラースの声だけを頼りに《エアスタンプ》で空を蹴る。


 光を抜け、ラースの姿を捉えた瞬間、耳をつんざく咆哮が爆ぜた。



 グォバアアアアアァァァァッ!!



 空間がビリビリと震える。

 が──熱も風も、背中に何ひとつ伝わってこない。


 音が過ぎ去り、静寂が流れる。


 息を呑み、恐る恐る振り返った。


「な、なんだこりゃ……」


 先ほどまであったはずの地面が、巨大な曲線を描いて滑らかに抉り取られている。

 その軌跡は森や岩を消し去り、遥か彼方に見える《蒼天の森》の外壁を穿(うが)ち、どこまでも伸びていた。


 破壊を巻き起こした元凶──とてつもなく巨大な龍が、ゆっくりと動く。

 全身に青黒い鱗を(まと)い、背には薄青い膜を張る翼を携えている。


 巨龍を見据えて《鑑定》を走らせると、脳内に声が響いた。

 <<——鑑定不能。権限がありません>>


 け、権限!? 確かラースを鑑定した時、同じことを言われたような……?


 巨龍の瞳がこちらを見据えたとき、思わず全身の毛が逆立った。


 俺の前に、ラースが踊り出る。


「さがってください、クロ! ここは──」


 ラースの声をかき消すように、低く重たい声が響いた。


「かそけき身体で無事とは見事。だが、儂の眠りを妨げた罪は重い」


 その意味を理解するより早く、視界が黒に染まった。


「……え!?」


 気づけば俺は、星々が広がる暗闇の中に浮いていた。

 目の前にいたラースも、広大な森も、姿を消している。


「なんだこれ!? ラース!?」


 どこからも返事はなかった。

 先ほどの巨竜だけが、目の前で両翼を広げて浮いている。


 空間に声が響き渡った。


「儂は《ゼルヴェリオン》──星霜(せいそう)を超越せし者」


 青白い鱗が、闇の中で星のように(なま)めかしく(またた)いた。


「そして、これが消滅の理──《アナイア・ロア》。万物、滅せよ!」


 龍が口元を開くと、光が渦を描きながら口内へ集まっていく。


「ちょ、ちょっと待っ……!」


 逃げようとしたところで地面も壁もなく、身体をばたつかせることしかできない。


 コォォォォオオオオ……


 空間がゆっくりと歪み始めた。

 光が膨れ上がり、視界が白く染まる。


「お、終わったーー!」


 白い光を見つめながら、無念の思いで両手を握りしめた。

 覚悟を決めた瞬間──


 ぽんっ。


 間の抜けた音とともに、光がしゅんっと消える。


 ……ン?


 小さな火の玉が一つ、こちらに向かってくる。

 そのまま俺の目の前で──


 パァンッ!


 色鮮やかな花の模様を描いて弾けた。

 赤、青、金……星屑のような光が散り、空間に儚く溶けていく。


 ……なにこれ?


 龍は俺をじっと見つめた後、腹の底から笑い声を響かせた。


「ククク……クハハ……クァーッハハハハ!!

 冗談じゃ! 驚いたかの!?」


 先ほどまでの殺気は消え、巨大な影が楽しげに揺れた。


 周囲の風景がぐにゃりと歪み、足元に固い地面の感触が戻った。

 風に乗って木々の香りが漂う。


 目の前には、さきほどと同じ姿勢で巨龍が横たわっている。

 地面は視界の果てまで抉れたまま、煙を上げていた。


 じょ、冗談!? ……聞き間違いか?

 いや。もし本気だったら今頃やられてる。


 思考が追い付く前に、ラースが叫んだ。


「ここは私が気を引きます! 今のうちに退避を!」


 明滅しながら龍へ向かうラースに、慌てて声をかける。


「ええぇ!? ……い、いや! 待て、ラース!!」


 ラースはぴたりと止まり、不思議そうに光が揺らいだ。


「クロ……?」


 龍の瞳が、どこか懐かしむように細められる。


「クハハ! 軽い“じょーく”じゃ。

 はじめは“あいすぶれいく”が大事じゃと習うたからな。

 どうじゃ、面白かったじゃろ!」


 思わず、深いため息が漏れた。


「まっっったく面白くない!! そもそも最初、本気で殺そうとしただろ」


「ふんっ、儂を殺戮者(さつりくしゃ)のように言うでない。

 あれは、単なる“くしゃみ”じゃ。鼻がむずむずしての」


「く、くしゃみ!? ひょっとして、ラースの体当たりが原因か!」


 ラースは巨大な龍を見上げながら、不規則に瞬いた。


「それは申し訳ありません。

 ──ですが、それで周囲を吹き飛ばすのはいかがなものでしょうか」


 ……いいぞラース、よく言った!

------------


■クロ

身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》

尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》

ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》

Extra:《跳星バースト》


■ラース

スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》《ウルトラアルティメット・ギャラクシーバースト》

パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《偏重計測パーツ》


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次回2026/8/1、0:10頃、次話を更新予定です

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― 新着の感想 ―
くしゃみの反動が大きすぎますね〜w (´ε`) でも、ま、竜と和解できそうなのは、ホッと一安心。 (*´ω`*) 今後の交渉に期待ですよ! (「`・ω・)「
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