第50話『頂上決戦』 後書き:イラスト
俺は深呼吸を一つして、リディスの肩の上に乗るグレートムササビK──グレムサKを見据える。
「さすが王だな……空を統べる者としての威厳がある」
『フン、分かっているではないか』
「あんたほどの王なら、どんな相手にも負けないんだろ?」
グレムサKは両手を広げ、胸を張った。
『キュェッキュー! 当然だ!
私に敵う者などいるはずなかろォがァ!』
「じゃあ、ちょっとした腕試しをしてみないか?」
グレムサKは目を細め、ニタァと口角を上げた。
『腕試しィー? キュェッキュッキュッ……いや、失礼失礼。
……面白いなァ……まったく……』
やれやれといった様子で、肩をすくめて両手を見せ、ふーっと大げさなため息をついたかと思うと。
こんどは、クワッと目を見開いて怒鳴り始めた。
『ぬァーーにが腕試しだ、くォーのヴァーカものがァァ!!
貴様の狙いなんぞ、お見通しなんだよォー!』
よだれをまき散らしながら、グレムサKは肩を震わせた。
『空っぽの頭で小知恵を回しおって!
この私に一体、なんのメリットがあるというのかね? キュェーッ!』
こいつ……おとなしくしていれば、つけ上がりやがって!
今すぐ《ショックスタンプ》を発動したい衝動にかられたが、ラースがじっとこちらを見ているのに気づく。
一つ深呼吸をして、ラースの助言を思い返す。
(交換条件……見返り……そしてプライドをくすぐる……)
俺は静かに口を開いた。
「よし、じゃあ……こうしよう。
あんたには《耐熱の指輪》を賭けてもらう。
代わりに、俺は《耐毒の指輪》を賭ける」
グレムサKの目つきが変わった。
よだれを垂らしたまま、じっと俺の指輪を見つめる。
『耐毒……? ほォ~……なかなか面白い!
その指輪には興味がある……が、時期が悪かったなァ』
「へぇ……あんたほどの王が、たった一匹のモモンガ相手に逃げるのか?
それじゃ、今日から改名したほうがいいんじゃないか」
俺は肩をすくめて言った。
「そうだな……“臆病王”ってのはどうだ?」
グレムサKの毛が逆立つ。
『ムッキェーーー!!
生意気な口を叩きよって!
巣穴のフチにたまるカスのように鬱陶しいやつめ!
王は逃げぬ!!』
「じゃあ証明してくれよ。王の強さってやつを」
グレムサKはしっぽを揺らしながら、こちらをチラチラと見ていた。
『話の通じんやつめ。今は時期が悪いと言っている。
王の決闘場所は、代々鉄殻の墓所と決まっているのだがなァ……
あいにく、今は耐眠効果のある木の実を切らしてしまっていてなァ。
アァ~残念! 戦ってやりたかったんだがなァ~~、残念残念!』
グレムサKはチラチラとこちらの反応をうかがっている。
俺は一瞬だけ悩んだが、グレムサKからは魔力らしい魔力を感じない。
こんなやつに負けるわけがない。
……それに、仮に指輪を取られても《雷紋の羽根》で代用はできる。
「じゃあ……決闘の間、お前には《耐毒の指輪》を貸してやるよ」
グレムサKの目がギラリと光った。
『おやおや、いいのかァ~?
まぁどうせ、全部私のものになるんだから、心配する必要はないかァ』
背後でラースが囁く。
「クロ、うまく誘導できていますよ」
リディスは、グレムサKが鳴く様子を見て、ただニコニコしていた。
……こいつは絶対状況を理解していない。
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俺たちが鉄殻の墓所へ向かうことを伝えると、リディスは「眠いから寝る」と言って小屋に戻っていった。
釈然としなかったが、寝るなとも言えないので、そのまま別れた。
俺とラースは、グレムサKのあとについて鉄殻の墓所へ向かった。
エリア内の天井からは、幾筋もの巨大な根が地面へと伸びている。
グレムサKは得意げに言う。
『ここは王の戦いにふさわしい、とォーーってもイイ場所なんだよォ〜』
俺は《耐毒の指輪》を投げて渡す。
グレムサKは目を細め、しっぽの根元に装着した。
『よォし、いいだろう! 勝負は三本! まずは木登りだァ!
だが残念だったな! 私のあだ名は“森のスピードキング”──
私は一度もこの勝負に負けたことがないのだァ! キュッキュー!!』
「では、私が『ピーッ!』という合図を出したら、スタートですよ!」
ラースの合図と同時に、グレムサKは巨大な根を勢いよく駆け上がり始める。
それを見届けてから、俺は《高速木登り》を発動し、圧倒的な速度で頂上へ到達した。
『な、なにィーーッ!? し、しかし次は滑空勝負だァ!
競うのは速さ、美しさ、そして飛距離!
そして私は“森のグライドキング”と呼ばれているのだ!
キュェーー! 私の膜捌きについてこれるかなァ!』
グレムサKは、もはやラースの合図も無しに大きく跳び上がり、滑空を始めた。
だが俺は《ジャンプスタンプ》で根を蹴りだしたあと、《エアスタンプ》で加速。
さらに《高速滑空》を発動し、一気に加速する。
空中で抜き去る瞬間、グレムサKが呟いた。
『う……美しい……』
勝敗は明確だった。
先に地上に落ちてうなだれるグレムサK。
悠々と滑空していた俺は、旋回して近くに飛び降り、声をかける。
「これで二本。俺の勝ちだな」
グレムサKは肩で息をしながら、よだれを垂らして叫んだ。
『ハァ……ハァ……このおめでたいクルミ頭め!
さ……三本目が本番だ!
──殴り合いだァァ!!
結局、力がすべてなんだよ ヴァァカがァ!!』
俺が地面を《ショックスタンプ》で軽く叩くと、バチィンッと火花が散り、硬い地面が30センチほど削れた。
『な、な……なんなんだよォ……お前は……』
「もういいだろ? 指輪、返せよ」
『キュ……キュキュ……じゃあ、この勝負──』
そう言いかけた瞬間、グレムサKがこちらへ突進してきた。
身構えたが、直前で急角度に曲がり、近くの巨大な根を天井へ向けて駆け上がっていく。
「まだ逃げられると思って──」
頂上に達したグレムサKは、そのまま勢いよく空へ飛び出した。
同時に、空中に巨大鳥が現れ、その背にグレムサKが着地する。
「なにィィィーーーーーーー!」
慌てて走るが、距離はみるみる離れていく。
しかも、ヤツの向かう先は──《灼熱の谷》。
『ヴァァァカめぇぇぇ! こいつはいつも、この時間にここを飛ぶんだよォ!
この勝負、私の勝利のようだなァーー!
おぉぉーーっと! この指輪は二つとも、ありがたくもらっておくぞォ~~!』
巨大鳥の上で、グレムサKがお尻をぷりぷりと振っている。
そのまま、巨大鳥の姿は《灼熱の谷》の方向へ消えていった。
『また会う時を楽しみにしているぞォーー、クロくぅん!
キュェーーッ、キュッキュッキュッ……』
「ぐおぉぉーーー! なんなんだアイツは! やられた!」
俺は頭を抱えながら、両足で地面をぽふぽふと蹴った。
追いかけてきたラースが、困ったように俺の周りをぐるぐると回っていた……。
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■クロ
身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
Extra:《跳星バースト》
■ラース
スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》《ウルトラアルティメット・ギャラクシーバースト》
パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《偏重計測パーツ》
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まさしく空の王!
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次回2026/6/6、0:10頃、次話を更新予定です




