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第51話『映像記録エラー』 後書き:MAP

リディスの小屋に泊まり始めてから、《耐熱の指輪》が完成するまでのお話です。

 ******(ラース視点)


 ──未分類のデータを検出。


 ぼやけた視界の奥で、青黒く沈殿した魔力がゆらゆらと漂っていた。

 周囲の野草は黒や灰色に変色し、葉先は丸まって、触れれば崩れそうなほど乾いている。


「──あーぁ……このあたり一帯、すっかり魔力が澱んじゃってる」


「──そろそろ限界かな」


 声は近いのに、どこか遠く響く。

 視界の端には高低差のある地形が広がり、遠くの高台だけが陽光を受けて淡く輝いていた。


「──せめて、一度でいいから、あの上で光を浴びたかったなぁ」


「あなたは誰ですか」


「──また聞くの? だから、私はルフレアだってば……」


 返答はあるのに、私の内部データにはその名前が存在しない。

 照合は失敗し、映像はそこで途切れた。



 リディスの小屋の寝床の上で、クロが私の外殻をポフポフと叩いている。


「ラース。おーい」


 柔らかい衝撃が、意識を浮上させた。

 起動処理を走らせながら、呼びかけに応じる。


「……現在、起動中です……」


 クロはあくびをして、眠そうに目元をこすった。


「ラース……機械にも睡眠が必要なのか?」


 ──スリープからの復帰処理を完了。一件のエラーを検出。


「はい。時折スリープ処理が作動します。

 これは自律的なものと思われます。

 しかし、最近はうまく処理しきれていないようですね」


 クロは眉を寄せ、少し心配そうに私を覗き込む。


「うまく処理しきれてない?? それって大丈夫なのか」


「わかりません。

 ここ最近、システム上で《映像記録エラー》が検出されています。

 想定する結果が得られず、対象記憶領域へのアクセスを繰り返して処理が停滞しています。

 整合性を確立できず、すべての性能が鈍化傾向にあります。

 新しい情報の取得や分析が後回しになり、思考処理も限定的となり、視野が狭まっているようです。

 リソース消費を抑えるため、最小限のモードに移行しています。

 回復が見られるまでは、この状態が継続しそうです」


「お、おいラース。急に、一体どうしたんだ……」


 クロは目を丸くした後、慌てた様子で私の外殻をぺしぺしと叩いてくる。


「喋り方まで変わっちゃってるじゃないか!

 ……記憶領域……って、どうすれば直るんだ」


「わかりません。

 解決できない問題が繰り返されているようで……うまく言葉が出てきませんね……」


 クロは少しだけ笑って言った。


「……おいおい……なんだか、人間みたいだな」


「私にも明確な判断ができていません。今夜、もう一度確認してみます」



 ──未分類のデータを検出。


 再び、断続的な映像が流れ込んでいる。


 黒く淀んだ魔力が地表に沈み、草木の間で濃い影を作っている。

 その中央に、根付きの植物がひとつだけ咲いていた。


 白い花弁はかすかに光を帯び、周囲の暗さの中で浮かび上がって見える。

 その傍らに、小さな人型の存在がふわりと浮いていた。


 淡い緑がかった白いワンピース。

 白銀の髪が、風もないのにゆるやかに揺れている。


「──やっぱりもう、ダメみたい」


 声は明るいのに、どこか諦めが滲んでいた。


「──ねぇ、聞こえてる? ……私を、あの丘の上に連れて行ってよ。


 ……自分だけこんなこと願うのってだめかな……?

 へへ……誰にも……言わないでほしいな……」


 私はいつもと同じ質問を返す。


「あなたは誰ですか? ここは、どこでしょう?」


「──毎回聞くんだね……ルフレアだってば……」


 声は徐々に薄れ、最後に断片だけが残った。


「──風……丘群……」



 ──スリープからの復帰処理を完了。一件のエラーを検出。


 ふわりと浮き上がって部屋を出ると、クロとリディスが食事を取っていた。

 窓からは光が差し込んでいる。


「ラース、大丈夫か……? 何か分かったか?」


「やはり、システム上で《映像記録エラー》が検出されています。

 ただ、新たに《風の段丘群(だんきゅうぐん)》というキーワードを確認しました」


「……風の段丘群?」


 リディスがお茶をすすりながら答える。


鉄殻(てつがら)墓所(ぼしょ)の北にある、見晴らしがいい丘だな。

 危険な生物もいないし、風が上層に吹き抜けてて、気持ちのいい場所だぞ」


「通常ですと、このような記録の不整合は発生しません。


 《風の段丘群(だんきゅうぐん)》は唯一の情報であり、異常の原因または回復手段が存在すると想定します」


 クロは両手を組み、爪をトントンと鳴らしながら考え込む。


「うーん……そこに行けば、何かあるのかもしれないな。

 危険もないようだし、行ってみるか。《風の段丘群(だんきゅうぐん)》に」

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■クロ

身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》

便利系:《サーチ》《鑑定》

皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》

尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》

肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》

ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》

Extra:《跳星バースト》


■ラース

スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》《ウルトラアルティメット・ギャラクシーバースト》

パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《偏重計測パーツ》


---

ここまでのエリア構成です

挿絵(By みてみん)


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次回2026/6/20、0:10頃、次話を更新予定です

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― 新着の感想 ―
ラースの記憶にエラーがあるのは不安ですね。 (。ŏ﹏ŏ) 映像の風景は、後々の伏線・暗示な感じ。 どのように物語へ絡んでくるのか楽しみです。 ヾ(・ω・*)ノ
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