第48話『耐熱の指輪』
鉄殻の墓所で、巨大鳥はこちらを一瞥し、低くグルルと鳴いた。
そのまま大きな翼を広げ、《雷紋の空殿》へ向かって舞い上がっていく。
初めて巨大鳥を見たときは「終わった」と本気で思ったけど……意外と悪いやつじゃないのかもしれない。
ひと息ついてから、俺とラースは次のエリアの方角──東へ向けて歩き出した。
遠くに揺らめく赤い光が見え、近づくほどに熱気が強くなっていく。
しばらく進んでいくと、やがて溶岩地帯が姿を現した。
「おぉ、ここが《灼熱の谷》……って、うおっ!!」
境界を一歩越えた瞬間、熱風がドンと体にぶつかってきた。
思わず目を細めるほどの熱気が頬の毛を撫で、チリチリと逆立つ。
岩肌は赤黒く焼け、ところどころが崩れ落ちている。
断崖の下では溶岩がボコボコと泡を立て、煮えたぎっていた。
「あ……あつすぎる……」
そのとき、すぐそばの岩陰で、何かがキラリと光った。
緋色に輝く、丸みを帯びた鉱石の群れが見える。
鑑定をかけると──
<<——ラーヴァスライム。 溶解性。>>
「げっ……!」
慌てて距離を取る。
このスライム、まったく動いてないから鉱石にしか見えない……怖すぎだろ!
いったん落ち着こう……。
冷静になって千里眼とウィズセンサーを発動すると、視界に魔力の格子模様が走り、谷の地形が浮かび上がった。
その網目の中、ラーヴァスライムの群れに混じって、一つだけ異様に強い魔力を放つ塊があることに気が付いた。
鑑定すると──
<<——溶光石。 耐熱装備素材。>>
「おぉ、耐熱!? これがあれば、何とかなるんじゃないか!」
見渡してみるが、溶光石は近くに一つしかないようだ。
スライムに触れないよう、そろそろと慎重に近づいていく。
《溶光石》をチョンチョンと触ってみるが……熱くない!
ショックスタンプで根元を砕いて、丸ごと回収する。
《ラーヴァスライム》と《溶光石》……見た目でまったく区別がつかないな……。
しかし、それにしても──
「あーーーー! あっつい!!」
地面が熱すぎて、足裏が焼け焦げる!
横を見ると、ラースはふよふよと浮いたまま平然としている。
「私は熱の影響を受けないようです!」
くっ……羨ましい。
ならば、とラースの上に飛び乗ってみる。
だが、浮いていても容赦なく熱気は襲ってくる。
「げ、限界だ……! 焼け死ぬ!」
俺はラースの背で叫んだ。
「ダメだこれ! 一回戻ってリディスに相談するしかない!」
******
《巡る霊脈の地》に戻ると、リディスは呆れ顔でため息をついた。
「ハァ……だから、あのへんのエリアは、入り口でいったん様子を見ろって言っただろ。
灼熱の谷を通るには、《耐熱の指輪》を作るしかないぞ。
まず、必要になるのが溶光石。
これは超レアだぞ。幻の鉱石と言われてて……」
リディスの言葉を遮るように爪を左右に振り、「チッチッ」と舌打ちをする。
収納膜をゴソゴソとまさぐって溶光石を取り出し、机の上にコロンと転がした。
「うぇっ!? な、なんで持ってるんだよ」
「ふふん……それはもちろん、“見る目”があるからだ!」
胸を張り、ドヤ顔で自身の目をアピールする。
「お、おぉ……じゃあこれは使わせてもらうぞ。
それから、“魔力の層”でコーティングするための媒体が必要になる」
「媒体……?」
「そう。《夜行蝶の鱗粉》を集めてきてくれ」
リディスはニッコリ笑って、俺に小さな瓶を手渡した。
リディスによると、《夜行蝶の鱗粉》には魔力を蓄える性質があり、さらに高い耐熱性を持つとのこと。
指輪の魔力を安定させ、《灼熱の谷》の熱にも耐えられるようにするための重要素材らしい。
「採取できるのは夜だけだ。木に止まったところを、優しく触って採るんだぞ。
この瓶1つ分必要で、だいたい五日くらいかかるからな」
こうして俺たちはリディスの小屋に泊まり込んで、雑用をしながら鱗粉集めに励むことになった。
******(リディス視点)
あれから数日──
ようやく《耐熱の指輪》が完成した。
長時間の細かい作業で目はかすむし、肩もガチガチだ。
俺はあくびをしながら外に出て、大きく伸びをした。
「んんん〜~……はぁ~、疲れたぁ〜……」
心地よい風に吹かれながらぼんやりしていると、木々の間をふわりと滑空する影が目に入った。
あの丸っこいシルエット――。
「おーい、クロ! 《耐熱の指輪》ができたぞー!」
呼びかけると、こちらに気づいたクロは滑空して目の前にふわりと降りてきた。
……ん? なんだか色が薄いような?
それに、この五日で太ったか?
まあ、よく食べてたもんな。
「どうだ、これ? ほら、しっぽ出せ」
俺はクロのふさふさした茶色の尻尾に指輪を通してやった。
「ぴったりだな! これでいいだろ」
すると、クロはこちらをチラリと一瞥してから小屋を駆けのぼった。
「……なんだあいつ。礼も言わずに。
よっぽど嬉しかったのか?」
周囲を眺めながら気持ちのいい風にあたっていると、背後から聞き慣れた声がした。
「リディス、呼んだか? 指輪はできたのか?」
振り返ると、クロが目をこすりながら立っていた。
「いや、今渡したじゃないか」
「え?」
「ん?」
小屋の屋根の縁から、先ほど《耐熱の指輪》をつけてやったクロ……?が仁王立ちして、クロを見下ろしていた。
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■クロ
身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
Extra:《跳星バースト》
■ラース
スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》《ウルトラアルティメット・ギャラクシーバースト》
パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《偏重計測パーツ》
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