第44話『一度だけ』 後書き:イラスト
******(クロ視点)
《跳兎の石庭》にて──
俺の全身には、紫色の根がガッチリと絡みついている。
手足どころか、尻尾ですら動かせそうにない。
《無核ノミア》に感染した男の口が眼前に迫った。
「うああっ……」
──だめだ、やられる。
その瞬間だった。
天井の向こうから、腹の底を揺さぶるような重低音が響いた。
空間全体がびりびりと震え、地面が大きく揺れる。
強烈な揺れに反応するかのように、《無核ノミア》の根の動きがぴたりと止まる。
感染している人も動物も、全てが同時に動きを止めた。
天井の岩盤がバラバラと崩れ落ち、粉塵が舞い落ちる。
再び、重い衝撃が天井を打つ。
──なにかが近づいている。
ド……ッ。
ドン……ッ!
ズドンッ!!!
衝撃と共に、エリア全体が波打つように揺れた。
「……来る……!」
天井が盛り上がり──岩盤が、爆ぜた。
眩い光の中、黒い影が一直線に落下してきた。
「うわあああああああ!」
叫び声とともに、影は地面へ突き刺さる。
ズドォォォォンッ!!
地響きが走り、衝撃波が広がる。
俺を拘束していた根は千切れ飛び、感染した周囲の生物が弾け飛ぶ。
その影は、粉塵の中でゆっくりと立ち上がった。
今にも泣き出しそうな顔で。
「……クロ~……」
「ダット! 来てくれたのか!」
「よ……良かった。間に合った~……。
僕だって……僕だって友達を……助けたいんだ……!!」
胸の奥がじんと熱くなり、自然と尻尾が丸くなる。
「おぉ、よく言った! 見直したぞ……かっこいいじゃないか!」
中央の《無核ノミア》に視線を定め、爪先を向ける。
「よし! これで勝ちだ! 行けダット!!」
「ひぃぃっ……クロ、助けてぇ!」
後ろを見ると、感染した人や動物に追われながら、涙目でダットが逃げ回っていた。
「な、何やってんだ! パッと行ってパッと蹴るだけでいいんだよ!」
「絶対ヤダ無理! もうできない! 見ると体が動かないんだよ~!」
「おま……さっき上からバシッと決めただろ!!」
「あ、あれは……跳星脚っていう技なんだけど……
目をつぶった時しか出せなくて……そのまま落ちてきただけなんだよ~……」
この期に及んでの逃げ腰ぶりに、頭を押さえる。
改めて、周囲の様子を確認すると、敵の数が相当多い。
そして《無核ノミア》を覆う岩……
あれは、さっき覚えた《バーストスタンプ》でも壊せないかもしれない。
……でも、ダットのキック力が噛み合えば──
……よし。
俺はダットに走り寄り、襲い掛かってくる感染者を殴り飛ばしながら、作戦を伝えた。
「……って感じだ。一度だけ頑張れるか」
「ほ、本気で蹴って大丈夫なの?」
「大丈夫だ! い、いや!……いいか。大事なことだから、もう一度だけ言うぞ!
そっとだ! そーっと、全力で蹴り飛ばすんだ」
ダットがごくりと唾を飲む。
「わ……分かった」
目で合図を送ると、俺は右へ、ダットは左へ走り出した。
円を描くように、広場の外周を二人で大きく回り込む。
感染者たちも、俺たちを追って二手に分かれた。
足音と唸り声が背後から迫る中、外周を駆け抜ける。
やがて、前方からダットがこちらへ駆けてくるのが見えた。
「やるぞ、ダット!!」
俺の声を受けて、ダットはぴたりと立ち止まった。
ダットは中央を向き、そのまま静かに目を閉じた。
俺は走りながら《防御膜》を展開する。
同時に肉球へ魔力を蓄積し続けて、《バーストスタンプ》を発動。
その勢いのままダットの足の先へ飛び乗る。
感染者が左右から押し寄せてくる。
だが──そのおかげで、中央への道はぽっかりと開けている。
俺はダットの足をがっしりと掴み、丸見えとなった中央部を見据えた。
「おい! おぞましいのはてめーだ! 無核ノミア!!」
無核ノミアを覆う変色した岩盤が大きく脈打ち──声が響いた。
(なぜ……我の名を知る)
「そこだね」
ダットが呟いた瞬間、太ももが爆ぜるように膨張した。
ミシミシと筋肉が盛り上がり、地面がひび割れる。
俺を足の甲に乗せたまま、ダットの足が大きく後ろに持ち上げられる。
「ああああああああああ!
跳!!!! 星!!!!」
次の瞬間、凄まじい加速が背中を押しつぶす。
俺の身体は、青い残光を引きながら中央へ向かって一直線に射出された。
急加速に耐えながら、岩盤に包まれた《無核ノミア》に向けて、俺は魔力を最大まで込めた右手を構える。
「バァァーーーーースト!!」
跳星脚の威力の乗った《バーストスタンプ》が深く突き刺さり、瞬間、岩盤は爆散した。
その勢いのまま、むき出しとなった銀色の塊──《無核ノミア》本体へ肉球を叩きつける。
バキィンッ!!
《無核ノミア》の中心をぶち抜き、銀色の塊は粉々に四散する。
しかし、それでも俺の身体の勢いは衰えず、中心地を一瞬で抜けていく。
《跳兎の石庭》の壁が猛烈な勢いで迫ってくる。
「うおおおおっ!」
俺は進行方向へ向けて連続で《エアスタンプ》を叩き込んだ。
速度が一気に削がれる。
反射的に皮膜をばっと広げる。
急激に速度が弱まり──
トンッ。
軽い音を立てて広場の壁に着地した。
はっ、はっ……と荒い息が漏れる。
「危うく、ダットに殺されるところだった……」
死の危険を感じたせいか、尻尾がぶわっと膨らんでいる。
気づくと、目の前の壁は、ゆっくりと元の色を取り戻し始めていた。
広場にいるすべての者が、不思議そうに辺りを見回している。
「……やっぱりこの人たちは、無核ノミアに操られていただけだったみたいだな」
周辺には砕けた《無核ノミア》の破片が散らばり、少しずつ蒸発し始めていた。
その時、足元に落ちているかけらのひとつが、小さく震えた。
(……生は……無価値……等しく我が元へ還れ……)
あまりにも低く冷たい声に、ぞわりと背筋が冷える。
思わずカッとなり、握りしめた拳に力が入る。
「……何だお前……ふざけんな!
命は……俺たちのもんだ!!」
一瞬の静寂が張り詰める。
(……覚えたぞ……
……我は……原初ノミア……この星のすべてを喰らい尽くす……)
次第に声が途切れていき、あたりの破片はすべて霧となって消えた。
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■クロ
身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
Extra:《跳星バースト》
■ラース
スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》
パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《??パーツ》
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上層・下層のバトルイメージ。(ラースがかわいくない…泣)
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