第43話『翼の記憶』
******(ラース視点)
私はアルネの後ろにつき、《樹影の根域》を《マシナリードライブ》で進んでいる。
ふいに、アルネが口を開いた。
「……そういえば、クロってどんな人なの?」
「クロは、共に危険を乗り越えてきた仲間……そう、相棒です!
とても、頼りになります!
ダットさんは、どんな方なんですか?」
アルネは振り返り、瞳をきらりと光らせた。
「クロと同じかな……ダットも、すごく頼りになるんだよ。
気弱に見えるけど、本当は誰よりも強いんだ……」
アルネは胸の前で、包帯を巻いた手首を握り、言葉を続けた。
「私ね、小さい頃、遺跡の奥にこっそり忍び込むことが好きだったんだ。
そこは巨大な石群がたくさんあって、とてもキレイなんだけど……。
古くなった遺跡は本当に危険だから、入ることを禁止されてた。
でも、そんなこと昔はよくわかってなかったんだよね。
──描きたい景色があったら止まれなくて」
******(回想)
ある日、遺跡に忍び込んで、壁に絵を描いてたんだ。
そしたら、突然、頭の上の岩が崩れ落ちてきたの。
揺れと音に身体がすくんで、はっと見上げた時、巨大な岩が目の前に迫ってた。
“避けられない”って思って、目をつぶったの。
そしたら、すごい衝撃音がして、体にびりびりとした感覚だけが伝わってきて。
恐る恐る目を開けて、上を見たらね。
岩石は砕け散って、ルーミナ菌がキラキラと舞い散って……そこには“翼”が広がってた。
その中心にいた人は、そのままふわっと降りてきて。
振り向いて、すぐにダットだと気付いたよ。
震えながら私の手を握ってきて。
『ごめん……怖かった……?』って。
その時にはもう、翼は消えちゃってたけど……胸がぎゅっとして、息が止まるかと思った。
あれが……“運命”の始まり──
******
アルネは、はにかんだ笑みを浮かべた後、再び前へ歩き出した。
「私は、何をやってもダメだけど……ダットは違うんだ。
ふだんは隠してるけど、私が本当に困ったとき、翼を広げて駆けつけてくれるの」
横を歩くアルネの頬は、うっすらと赤い。
「とても素敵な方ですね!
記憶を封印された後、そんなことがあったんですね……」
「……え? あ……そ、そうなの!
まだ、こっちの世界へ来たばかりで、記憶が揺れてた頃の話……かな」
アルネは、歩幅をほんの少し速めた。
少しずつ、周囲の壁や根に紫色の変色が現れ始めた。
「これは……何かに浸食されているように見えますね」
アルネは時折、爪を噛みながらつぶやいている。
「……“封印”のひずみが、こんなところまで……?
そんな……まさか! “闇の氾濫”が近づいているというの……?」
アルネが、足を止めて小さく息を吸った。
「……ここだね」
視界の先には巨大な円形の広場が広がっていた。
「あれが私たちの村に繋がる大樹の根だよ」
広場の中央部には、天井から地面へと一本の太い根が貫通している。
地面と根の接触部に、小さな《銀色の塊》が張り付いていた。
周囲には、細い紫色の管が網のように広がり、一定の周期で脈打っている。
アルネは眉をひそめた。
「……あんなの、前はなかった……」
スケッチブックとペンを取り出しながら続ける。
「“観察”と“記録”が必要だね。ちょっといいかな」
アルネは、ペンをくるりと回して静止した。
次の瞬間──ペン先が走り、周囲の構造が描き出されていく。
流線やスピード線が重なり、脈動までもが正確に再現されていた。
アルネは腰のバッグから、一枚の紙を取り出す。
「……見て。以前はこうだったの」
そこには、書きあげた絵と同じ構図で大樹の根が描かれていた。
根は薄青く光り、魔力が上へ巡る様子を見て取れる。
一方、現在の広場では──根には《銀色の塊》が張り付き、その周囲は汚染され変色している。
アルネが右目を押さえる。
「くっ……大樹の魔力不足、雷角鳥様の衰弱、“影界の封印”の揺らぎ……
すべては、あの《銀色の塊》が原因ね。
……上への道も、浸食された根で塞がれているみたい」
「なるほど……《銀色の塊》を破壊すればいいということですね。
お任せください! あの程度であれば、容易に粉砕可能です!」
魔力を全身に纏い、下部パネルを高速で回転させる。
最高速で《銀色の塊》へ向かって走り出すと、即座にアルネの声が遠ざかった。
「何か様子が……ちょっと待っ──」
──その瞬間。
前方の地面が、ぐぐっと隆起した。
「あっ」
突然、急角度の上り坂が目の前に現れた。
止まることも避けることもできず、勢いのまま宙へ放り出される。
「あーーーー!」
私は、美しい放物線を描いて飛んだ。
《銀色の塊》を──
完全に飛び越えて。
「ああっ……これは計算外──!」
猛烈な勢いで広場の向かいの壁が迫ってくる。
ドォンッ!!
衝撃が走り、私は壁にめり込んで停止した。
細かい破片や砂煙が周囲を覆う。
アルネが砂埃を払いながら、慌てた様子で駆け寄ってきた。
「ラ、ラース!? だ、大丈夫!?」
「多少驚きましたが、問題はありません」
私は広場の中央へ視線を向けた。
地面はなおも隆起と沈降を繰り返している。
更に周囲の岩盤が寄り集まり、《銀色の塊》を包み込むように盛り上がっていく。
「……なるほど。
《銀色の塊》が周囲の地面の変動を制御し、身を守っているようです。
しかし、あれでは攻撃が困難ですね」
「……うーん」
アルネは外周を見渡し、小さく呟いた。
「……“円環”……“螺旋”……」
アルネは少し沈黙した後、ぱっと顔を上げた。
「だったら……こういうの、どうかな」
アルネはニヤリと笑い、腰のバッグからスケッチブックとペンを取り出した。
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■クロ
身体強化系:《高速木登り》《高速滑空》《千里眼》
便利系:《サーチ》《鑑定》
皮膜系:《収納膜》《防御膜》《隠密膜》
尻尾系:《ファントムテール》《スラッシュテール》
肉球系:《ジャンプスタンプ》《ショックスタンプ》《エアスタンプ》《ヒールスタンプ》《バーストスタンプ》
ヒゲ系:《ウィズセンサー》《ウィズスピア》
■ラース
スキル:《マシナリードライブ》《マシナリージャンプ》《マシナリークラッシュ》
パーツ:《言語パーツ》《通信パーツ》《観測パーツ》《??パーツ》
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