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世界 x(クロス)  作者: 快速
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第十七章 メリの実力


 シャイニングは、フロードとの通信を終えた後、教会の外に出た。闇夜に沈む町の中で、体を輝かせ腕を近くの家へ向けた。その腕から、光の波動が放たれた。波動は、家々を貫通し、中にいた住民を石にした。寝静まっている住民は、誰一人この異変に気づかない。シャイニングはこれを繰り返し続けた。


 警察署についたメリは、考えなしに、とりあえず警報を鳴らす事にした。受付のテーブルに滑り込み、その裏にある警報ボタンを押した。夜中で誰もいない警察署のエントランスホールに警報が鳴り響く。警報は関係者全てに届く。宿舎の警官や、署長も飛び起きる筈だ。


 次はどうするか? そう考えていると、フロードから着信があった。


 フロードはビルの粉塵に紛れ、地下鉄の駅に入っていた。顔や腕に刺さったガラス片を抜きながら歩いている。体を強化していたため、大事には至っていない。周りには電車を待つ人々だ。傷だらけのフロードを訝しげに見る人もいる。


「メリ、聞こえるか?」

「聞こえるよ。一応警報鳴らしたよ!」たしかに、メリの声の背後から警報が聞こえる。

「よし、緊急事態だってのはわかるな? お前に頼みたいことがある」

「え? マジで? 良いけど……」メリの声は、自信の無さと、恐怖に引きつっていた。


 線路を電車が通り抜けた。轟音がフロードの聴覚を占領する。


「え? 今の音なに⁈」メリは必要以上にビビっている。轟音が過ぎ去るのを待ち、フロードは話し始めた。


「今教会にシャイニングが現れて、ホワイト達を石化させやがった。前のシャイニングとは別のシャイニングだ。メリ、教会に行ってシャイニングの心の波長を調べろ! そして位置を調べて俺に教えるんだ!」

「え? 私心の波長の調べ方わからないよ! ホワイトさんかヒゲに頼んでよ!」

「ホワイトもヒゲも石化されたんだよ! 言っただろ! 今俺は奴の攻撃を受けている。どういう事かわかるか?」


 メリはどういう事か分からず、息を呑み、黙った。


「俺にシャイニングを殺せる可能性があるから、シャイニングは俺を襲っているんだ! メリ、奴の位置を調べろ」

「えぇ……やった事無い……」

「お前いつも、自分はやらないだけで、やろうと思えば出来るって言ってるだろ! 証明してみせろ!」


 フロードの声は、メリに勇気を与えず、やらなきゃ殺される、という恐怖を与えた。


「あぁ……やってみる……」メリは自信なさげな、うめき声を出した。

「分かったら連絡をくれ!」


 フロードは通話を切り、駅内を見渡した。地下に入ったのは正解かもしれない。シャイニングが操れそうな兵器は無いし、電車を自分に突っ込ませれるような事も、できるとは思えない。フロードはしばらく地下を移動する事にした。


 メリはホワイトのデスクをあさり、心の波長の調べ方の載っているマニュアルを探した。ホワイトの性格からして、マニュアルはデスクに取っておくだろうと判断したのだ。

 その予想は当たり、一番下の引き出しにマニュアルはあった。

 心の波長を調べるマニュアルとともに、その情報を仲間のスマホに送る方法も、青いバインダーにまとめてあった。

 メリはそれを見て「よし……」と呟き、教会にテレポートした。正確にいうと、教会には行った事が無いので、近くのファーストフード店の前にテレポートした。


 メリはいつもの癖で、通りの真ん中にテレポートするのではなく、人通りの少ない路地に出現した。人が多い場所にテレポートすると、出現した瞬間に人とぶつかる恐れがあるので、小柄で吹っ飛ばされやすいメリは、いつも路地に出現するようにしていた。今回は夜中なので、その心配は少ないが、その癖のお陰でメリは助かった。

 というのも、路地を出ようとしたところ、メリは不思議な魔力と音に気づいたのだ。恐る恐る路地から頭を出すと、人型の光の塊が、家々に魔法をかけているところだった。


(あいつシャイニングじゃん。なにやってんの?)


 メリはシャイニングのことを、資料でしか見た事が無いが、その特徴は、ほかに類を見ないため、一瞬でわかった。どうやらこちらには背を向けているようだが、メリはビビリのため、路地を反対側に走り、遠回りをして教会に向かった。


 教会の扉の前に誰かが立っている。メリは壁に張り付きながら、その誰かから目を離さず、教会の扉に近づいていった。ある程度近づくと、石にされた警官だという事に気がついた。


「うわぁーーやだやだ……」メリは恐怖に身を震わせながら、教会の扉を開けた。


 教会の中は、黄色の穏やかな明かりがついていた。見知った人達の変わり果てた姿が明かりに照らされている。


「あぁ……まるで美術館……」メリはため息を漏らす。


 石にされたヒゲのヒゲをポキっと毟りながら、展示された仲間達を眺めた。こんな事をしている場合では無い。メリは床に座り込み、マニュアルを開いた。


 まずは、シャイニングの魔法の痕跡を見つけ出す。これは簡単だ。石にされた人に触り、そこから魔力を分析する。指紋とか、DNAを調べるようなものだ。魔力は心から生まれる。つまり、魔力を分析すれば心の波長がわかるのだ。


 心の波長が分かったら、スマホのマップを起動し、地球全体を把握する。そして、そのマップを元に、地球全体をスキャンし、心の波長が一致する人間を探し出す。

 上手くいけば、マップに赤い点滅が発生する。あとはその点滅を拡大すれば、正確な位置が分かるのだ。


「うわ、出来た! 簡単じゃん!」


 本当は簡単では無い。いや、理屈自体は簡単なのだが、地球上全てをスキャンするのだから、よほど魔力に余裕のある人間にしか、簡単とは思えないのだ。ホワイトは初めてこの作業をした時、息切れしたほどである。メリはある意味天才だった。

 メリはマニュアルをめくり、フロードのスマホにシャイニングの情報を送った。


 地下鉄をウロウロするフロードのスマホが鳴った。フロードはスマホを取り出し、早速マップを開いた。


「よし、位置がわかったんだな」


 フロードは地図を見た。アメリカ中が見えるように、地図を縮小した。しかし、シャイニングの位置を示す赤い点滅は無い。

 アメリカにはいないのか、と思い、さらに地図を縮小する。無い。思い切って、地球全体が見渡せるほど地図を縮小した。

 

「無い……」点滅は地球上のどこにも無かった。


 フロードはメリにビデオ通話をかけた。メリはすぐに画面に現れた。その顔は曇っている。


「メリ、どうした? 心の波長を調べられなかったのか?」

「いや、出来たんだけど……なんていうか……。やばい事に気付いちゃって……」

「なんだやばい事って?」

「地図を最大限まで縮小してみて、やばいから……」


 メリはイマイチ要領を得ない。フロードは仕方なく通話を保留し、地図を再度みる事にした。メリの言った通り、最大限まで縮小する。地球が親指の爪ほどの大きさになった時、心の波長を表す赤い点滅が姿を現した。


 それは地球の外、宇宙にあった。

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