第8話 昼休み
昼の時間になっても三人の時間はまちまちだけれど、業務の合間にサッサと連絡は取りあっている。
まあ、方法はいくらでも。
夜のことも考えて、お昼は近所のうどん屋さんで軽く済ませようってことだけは。
(長引いたりすると一緒にとはいかないからね。)
顧客相手の話だから、延びることなんてままある。
上手な人ならうまくやるみたいだけど、私にはまだそこまでの腕はない。
なので、たいていは水咲さんがお店に先乗りして、場所を取っててくれるので、そこに佳奈と私が合流するってのが主流。
(先輩に場所取りさせてるみたいで、申し訳ないなぁ。)
でも今日はたまたま私が一番乗り。
席を立つ時に二人には『先に行くね。』ってサイン送っておいたから、すぐ来ると思うけど……。
店に入って見回すと、時間が時間だからか、そこそこのお客さんがいて、ちょっと席の確保が難しそうだなと考えながら、とりあえず注文の列に並ぶ。
今日のメニューは釜玉明太入り、これに決めている。
少々のねぎをトッピングして、出汁で頂くのが私流。
ラッキーなことに、注文の品を受け取った私は、偶然見つけた空いたばかりの4人掛けのテーブルを飛びつくように確保。
(何とか抑えた。)
一人で4人掛けテーブルを占拠してるって、傍から見たら嫌なやつだものね。
皆、席は欲しいから、『ここ空いてますか?』と聞いてくるお客さんもいる。
その度に『すみません。連れがありますので。』と断らないといけないのも苦痛だよ。
そう思いながら入り口を見ると、二人が連れ立って入ってくるのが見えて一安心。
少し腰を上げて、ここにいるよ。と二人に見えるように手を振ってアピール。
気付いた二人も軽く手を振り返したのを見て、私は座り直すと箸を手に取って
(いただきます。)
といくらかの麺を口にした。
「けど、なんでもっと早く言わないのよ。」
水咲さんが、持って来たうどんをテーブルに起きながら、佳奈へと口をとがらせながら言う。
「えっ、だって私の誕生日を祝ってよって言ってるみたいで、言いにくかったし……」
そう答えながら佳奈も、席に着く。
そんな二人のやり取りを聞きながら、二人の手元に目が行った。
(ハハ、明太までみんな同じ。)
ふたりの前には、同じ釜玉明太入りがドンと置かれていた。
「でも結局、そうなった。」
水咲さんは容赦ない。けど、顔は十分笑っているし、当の佳奈も「へへっ」とか何とか上手く流しているし。
「今日言われたから、当然プレゼントなんか用意できないからね。」
『当然でしょ?』と水咲さんは続けるが、私もそれには同意見。
プレゼントしたくても、今日の今日じゃさすがに用意できないし、せっかくだから、佳奈にはしっかり考えて、いいものをプレゼントしたいじゃない。
「ううん。来てもらえるだけで十分」
ゆっくりと首を横に振りながら、佳奈は笑顔を見せる。
そんな佳奈を見て、私と水咲さんはどちらからとなく目を合わせる。
(なんか、いじめ過ぎた?)
水咲さんがそう言っているよう。
「別の日でいいよねプレゼント。忘れた頃になるかも知れんけどね。」
ニヤリと笑いながら水咲さんは佳奈に声を掛ける。
「えー、でも何か悪いし……」
「いいの、いいの。でも私の誕生日覚えといてね。ちょっと先だけど9月7日ね。
念のため言っとくと、おとめ座だから。」
さらに笑みを深めながら水咲さんが佳奈へと念押ししてる。
(私も覚えとかなきゃ、メモメモ…と)
「……その反応、ちょっと、ね。」
水咲さんが佳奈にそう言いながら、最後に私に賛意を求めるように視線が向く。
「いや、意外って言うか……」
「だから、それ。意外ってなーに?」
「いえ、ごめんなさい。なんかイメージ……」
(あちゃ、佳奈、ドツボに入ってるって――)
「イメージって、私のイメージかしら?何かおかしい? どう、美羽?」
水咲さんが話を振る相手に私を選ぶ。
私はうどんを一口すすり終わってから、
「いえ、全然!……微塵も。」
とわざと大仰に答える。
「でしょう?」
よくできましたと言わんばかりに頷いて、再び佳奈へと話しかける。
「佳奈も、今日だと“かに座”ね。――
かに座か。ふ~ん。挟まれないように気を付けよッと。」
「ハハ、ふたりとも、もうその辺にしときません?冷めちゃいますよ。」
私の提案に二人は素直に乗っかかる。
「それはそれとして、少しくらい飲み物とか、食べ物とか買って帰るんでしょ?」
水咲が佳奈に確認する。
「まあ、ある程度ですね。ウーバーとかもありですけど」
「あぁ、確かに楽かもね、それ。」
(ウーバーって便利だけど、ちょっと高いんだよね……)
「どう?美羽」
「はぁ、いいですね。」
おそらく少し引き攣っていたと思う。
次話から少しづつ変わっていきますよ




