勇者の説得
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熊型の理外の獣の攻撃で、バリケードにわずかな隙間ができてしまった。
その隙間から、猿型の理外の獣が集落に侵入してくる。
舞台は、あっという間に乱戦に移行し始めた。
状況を察知したムンガが、集落中に向けて叫んだ。
「騎士殿!女子供を連れてユークリードへ!お頼み申す!」
熊型の理外の獣は、依然バリケードを壊そうと体当たりを続けている。
これ以上は持ちそうにないと判断した私は、小隊に声をかけた。
「撤退だ!集落の南側からこの戦況を抜け出す!勇者殿、活路を開くぞ!」
そう言いながら勇者の方に目を向けると、勇者は必死に戦っているムンガに注目していた。
嫌な予感とは当たるものだ。
「ゼータ、悪い。ちょっと時間をくれ。」
そう言うや否や、勇者は壊れかけのバリケードに向けて突っ込んでいった。
穴が開いた両端に手を当てて、全身に青白い光をほとばしらせながら、バリケードを押し込んでいく。
「ぐぬぬぬぬ、こんにゃろー!」
勇者は、力ずくで理外の獣が侵入してくる穴を塞ぐと、ムンガに向かって大きく吠えた。
「ムンガさん!あんたが大事にしているものは、この土地だけじゃないんだろう?他にも沢山あるはずだ!」
「確かに、この土地に眠る英霊も、私の愛する家族も、大切にしているものは数多くある。しかし、そのどれも捨てきれないから、こうして戦っているんだ!」
「そんな言い方して、あきらめてんじゃねぇ!本当に全部大切なら、全員でこの地に帰ってくるやり方を考えるんだ!」
「ユークリードの民ではない勇者殿に、何が分かる!」
「分からねぇよ!でもな、あんたらがこの地をどれだけ愛しているかは、痛いほど分かったんだよ!その覚悟を無駄にするような蛮行は、見ちゃいられねぇ!」
勇者の言葉に、ムンガは一瞬たじろいだ。
しかし、次の瞬間、荒々しい激情にかられた声で怒りを露わにする。
「ならば一体、一体どうすれば良いというのだ!愛するこの土地を、汚れた獣たちに蹂躙されていく様を見てろとでもいうのか!」
「俺たちが力になる!今は難しいけど、力を蓄えて、必ずこの地を取り戻すと約束する!だからその時まで、全員で生きてこの場を切り抜けよう!」
勇者の言葉に、ムンガは息をのんだ。
激しい葛藤が彼を襲っていることは、その表情を見れば誰でも分かるだろう。
「勇者殿、約束してくれるか。必ずこの地を開放すると。」
「当たり前だ!一緒に戦った戦友だろう!」
「友か・・・。」
ムンガはふっと笑うと、表情を引き締めて周囲に声を張り上げた。
「全員撤退!ユークリードへ避難する!」
勇者の言葉に感化された集落の人々が、すぐさま撤退の準備に取り掛かるのだった。




