海上の黒い煙
ご感想やブックマーク、評価等をありがとうございます!
大変励みになります!
海の沖の方で黒い煙が目撃されたと聞き、今度は港の方にやってきた。
手分けして、幾人かの漁師に話を聞くことにする。
私は、船の近くで網を引き上げている高齢の男性に話しかけた。
「仕事中失礼する。最近、この辺りで黒い煙のような物を見たりしただろうか?」
漁師は網を引き上げていた手を止めて、訝しげにこちらを向く。
「黒い煙?火事か何かか?」
「いえ、海の沖の方で目撃されたようなのですが。」
漁師はぼりぼりと顎を掻きながら、海の方を眺めた。
「そういやぁ、三日ほど前に漁に出た時、海の遠くの方で黒いもやが見えたことがあったな。」
「そのお話、詳しくお聞かせ願えますか?」
「詳しくっつってもよ・・・。嵐だと思って遠くに離れたからそれっきりだ。いや、待てよ。今にして思えば、雨音なんかはまったく聞こえなかったような気がするな。まぁ、波の音でかき消えてたって言われればそれまでだけどな。」
漁師の話を聞いて、私は少し考え込む。
嵐というには局所的で、少し不気味な感じがする。
とはいえ、実際に見てみないとなんとも言えない。
「あなたが見た黒いもやの場所まで、船で連れて行ってもらうことは可能だろうか?」
「その黒いもやは、翌日にはきれいさっぱりなくなってたよ。今から見に行くことはできないだろうよ。それに、嵐だったら転覆する可能性があるんだ。そんな危険なところには、商売道具は近づけたくないね。」
私の願いに、漁師はコバエでも追い払うかのように手を振った。
「そうか・・・。無理言ってすまなかった。情報提供、感謝する。」
私は、漁師にお礼を言って、仲間のもとへ合流した。




