勇者の実家
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「シルフィーナの町よ!俺は帰ってきたぞー!」
両手を空に上げて雄たけびを上げる勇者を尻目に、私はシルフィーナの町を眺めていた。
どこまでも続いているように見える青い水平線に、真っ白い壁の建物がよく映える。
心なしか、王都にいるときよりも、日差しが強いように感じた。
町全体に活気が溢れており、特に港付近は漁をする人々や魚を販売する人々でごった返しているようだ。
町の中心にある噴水付近では、子供たちがボールを蹴って遊んでいる。
いつの間にか、子供たちの中に勇者が混ざって遊んでいた。何をやっているんだ・・・。
「我々は土地勘がないのでね。地元の人間に案内を頼みたいものだ、勇者殿。」
子供たちから勇者を引っぺがして、町の案内を頼む。
勇者は、肩で風を切りながら、町の中をぐんぐんと進んで行く。
どうやら、情報収集によさそうな場所を知っているようだ。
安心して勇者の後ろをついていくと、やがてこじんまりとした民家にたどり着いた。
「ここが俺の実家だ!ただいまー!父ちゃん、母ちゃんいるー?」
前言撤回、勇者はただ実家に帰省しただけだった。
今回の任務とはまったく関係のない場所に頭を抱えている私を放っておいて、勇者は建物の玄関をガラガラと開けて中に入っていった。
慌てて後を追いかけていくと、中には勇者とよく似た顔をしている妙齢の女性が立っていた。
「母ちゃん、友達のゼータとビットとトレモロ!あと昔一緒に遊んでたラビ姉!」
「いや、友達ではない。」
勇者の紹介の仕方に、間髪入れずに突っ込んでしまった。
しかし、私と勇者の関係性はどのように表現すればよいのだろうか?
小隊メンバーのような上司と部下との関係とは違う気がする。
少し頭を悩ませていると、勇者の母がのほほんと口を開く。
「あらまぁ、エースと仲良くしてくれてありがとうね。私はエースの母のルビーナです。せっかく来てくださったのですから、ぜひ家に上がっていってくださいな。」
手招きするルビーナに導かれるように、家のリビングに足を踏み入れる。
部屋の中は片付けられていて、質素な印象だった。
部屋の隅におかれている器具は、漁で使用するものだろうか。
勇者のご両親が漁を行っていると、以前勇者本人が言っていた。
リビングに腰を下ろすと、ルビーナがそわそわした様子で勇者に声をかける。
「ね、ね、エース。久しぶりにあれ見せて!」
「おぉ、あれね。」
勇者が女神様の加護を使用したようだ。
全身に青白い光を纏わせている勇者を見て、ルビーナはキャッキャと喜んでいる。
「ルビーナ殿・・・。女神様の加護は宴会芸ではないのだが・・・。」
勇者の母上は、なんともマイペースな御仁のようだった。




