シルフィーナの黒い煙
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「黒い煙、ですか?」
父上に呼び出された私は、南の町、シルフィーナで目撃されたとされる情報を共有されていた。
北の大地から最も遠いシルフィーナでは、理外の獣の目撃情報はほとんど存在しない。
しかし、黒い煙と聞くと、理外の獣が脳裏をよぎるのは職業病だろうか。
「そうだ。北の大地が黒い霧で覆われて以降、シルフィーナで黒い煙の目撃情報が増えてきている。ただし、現状では理外の獣からの被害は報告されていない。そもそも、シルフィーナの住民は、理外の獣との接触自体が少ない。見間違えという可能性も捨てきれないのがもどかしいな。」
そう言いながら、父上は肩をすくめた。
見間違えであれば、笑い話で済むだろう。
しかし、歴史上理外の獣からの被害が少ないシルフィーナには、騎士団はあまり派遣されていない。
万が一、理外の獣に襲われることがあれば、かつて北の大地に存在し、滅んでしまった町と同じ未来をたどってしまうかもしれない。
決して無視できぬ情報だ。
「人の言葉を操る理外の獣の動向も気になる。やつらが何かを企んでいる可能性も否定できない。よって、ゼータ小隊から数名、シルフィーナに騎士を派遣し、情報収集を行ってもらいたい。また、ルーシー殿から、遠距離で会話ができる道具の実験を行いたいという申請が届いている。勇者殿もシルフィーナに同行してもらい、道具の性能を確認するように。」
「遠距離で会話ができる道具・・・。シルフィーナと王都との距離で問題がなければ、いずれ北の大地へ勇者が向かう際にも、心強い道具になりそうですね。」
私は、以前実験で触った銀鉱石を思い浮かべながら、いずれ来たる未来に向けて思考を飛ばした。
黒い霧に覆われた北の大地は、百年もの間、人の手が入っていない未知の領域だ。
手探りの状態でも、リアルタイムで情報をやり取りできるという有用性は計り知れないだろう。
私は、シルフィーナの一件が杞憂であることと、今回の実験が成功することを共に願うのであった。




