平常心
ご感想やブックマーク、評価等をありがとうございます!
大変励みになります!
翌日、事務仕事を軽くこなした後、いつも通り剣の素振りを行う。
形が崩れていないか入念に確認しながら、剣の先まで神経が通っているかのように集中する。
雑念を振り払うかのように、熱心に。
「小隊長!精が出ますね!」
剣を収めて振り返ると、小柄で軽薄そうな男がひらひらと手を振っていた。
その後ろで、大柄の男がこちらに向けて会釈をする。
彼らは、同じ小隊の部下である、ビットとトレモロだ。
「騎士として、いついかなる時も平常心であるべきだ。非常事態が続いている、今のような状況ならなおさらだ。」
「いつも通りでいいのなら、俺は訓練の時以外は剣を振りませんよ。」
ビットが減らず口をたたくが、訓練は本気で取り組んでいるのを知っている。
そうでなければ、理外の獣に食い殺されるまでの時間が短くなるからだ。
「非常事態ってことですが、小隊長は昨日のあれ、見ましたか?」
普段は寡黙なトレモロが、質問を投げかけてくる。
「光の柱のことか?既に調査のために使者を送っている。」
「あれって神託にあった勇者なんですかね。」
「さてな。だが北の大地の異変に続いて起こった事象だ。可能性は高いだろう。」
トレモロが口をつぐむ。
沈黙を避けるように、今度はビットが口を開いた。
「勇者っていうんなら、俺は小隊長がなるものだと思ってましたね。俺たちとは違って、騎士団長の息子としてガキの頃から鍛錬を積んでたんでしょう?今も国のため、民のために必死こいて仕事してるんだ。だからこそ、小隊長が勇者に選ばれるんじゃないかって思ってましたね。」
ビットの言葉に、トレモロもうなずく。
「たとえ勇者じゃなかろうと、騎士として人々を守るのが、私の役割だ。」
自分に言い聞かせるようにそう答えて、剣の素振りを再開する。
甘い気持ちを振り切るように、熱心に。




