訓練 その2
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剣の訓練を初めて数日後、騎士団長が別の用事で指導ができないため、試験的にジャックが指導に当たることとなった。
「形なんぞ崩れてもいい。全力で素振りをしろ。振った数だけ覚えておけ。」
ジャックは模造刀ではなく、真剣を手渡しながらこう告げた。
呆気に取られている勇者に一瞥をくれることもなく、ジャックはどこかへ行ってしまった。
「・・・。これで指導してることになるのか?」
「・・・。まあ素振りも形の一つだ。真面目にやるように。」
疑問符を掲げる勇者をたしなめるが、正直私も肩透かしをくらった気分だった。
王城に侵入してまで、己を売り込みに来た男のやることだろうか。
だが、勇者とともに訓練をするのに慣れてきた私も、勇者と同じように素振りを行うこととした。
剣先まで自分の一部であるかのように、熱を込めて素振りを行う。
勇者もそれに続いて、真面目に素振りに取り組んでいく。
「110、111、112・・・。」
勇者は初日に比べると、目に見えてきれいに剣を振れているように思える。
こうして、休みながら剣を振り続け、日が傾き始めたころ、酒臭いジャックが戻ってきた。
「1891、1892・・・。あ、ジャックのおっさん!どこ行ってたんだよ!もうちょっとで素振りは二千回いくぜ。」
ほろ酔い気分で心地よさそうなジャックが、勇者の素振りを見て顔色を変えた。
ずかずかと勇者に近づいて、その土手っ腹に蹴りを入れる。
「ぐぇっ!?・・・何してんだよおっさん!」
「何してんだはこっちのセリフだ!俺は言ったよな?形なんぞ崩れてもいいから全力で素振りしろって!全力ってのはな、こうやるんだよ!」
勇者が手放した真剣を手にしたジャックが、大上段から下段にかけて大ぶりに剣を振り回した。
ブオォン!
空間を切り裂くような一撃が、周囲の空気を揺らす。
その剛腕から繰り出された剣戟に、私と勇者は戦慄を覚えた。
「剣を振れる回数ってのはな、要するに敵を殺せる回数と同じだ。敵の骨を断ち、肉を切り裂く回数と同じなんだよ。もし、お前が100回骨を断つような斬撃を放てたとして、101匹の理外の獣に襲われたらどうなる?殺せなかった残りの一匹に、すべての民は食われることになるぞ!素振りの回数は、己の限界を知るための指標だったってのに、お前は敵の命を絶つような素振りをしたか!?」
ジャックの言葉に、勇者が目を見開いた。
決して不真面目に素振りをやっていたわけではない。
それでも、理外の獣を切るための覚悟が足りていなかったことに気づかされたようだ。
彼は頭をがしがしとかいて吐き捨てる。
「貴重な一日を無駄にしちまった。今日はもう帰りやがれ。明日もう一度、素振りから始めろ。」
機嫌の悪さを隠そうともしないジャックは、再び町へ姿を消した。




