本は大切に
別視点スタート
「ギャハハ! おかしすぎる!!」
アカント州の大きな図書館で、ポテトチップスを食べながら、本を読んでいた。
「ギャハハハハ!!」
油まみれになった手で、本をめくっていく。面白い描写があると、大きな声を出して笑う。
「あのー、すみません」
先が気になるので、更に本をめくっていく。内容が実におかしくて笑えてくる。
ポテトチップスを手で掴み、口に運ぶ。手が油まみれになっていた。
「ギャハハハハ!!!」
「あのー……」
ポテトチップスを食べていたら、喉が渇いた。だから、ペットボトルの水を飲んだ。
「あの、聞いてます?」
「はい?」
耳に劈くような大きさで、声をかけられた。振り向けば、真っ白な肌でオレンジ色の髪色をした、自分より背が高そうな白人女性が立っていた。座っているからわからないが、多分高い。
「図書館にお菓子を持ち込まないでください。大きな声を出さないでください。本は大切に扱ってください」
「え、なぜですか?」
「……は?」
意味不明な事を言われたので、聞き返す。
「そんなの僕の勝手じゃないですか」
「いや、ここは公共の施設で……」
「うるさいですね。黙らせますよ?」
「……チッ」
僕はただ、好きなように本を読んでいるだけだ。それなのに、この女性は何を言っているのであろう。
女性が舌打ちをすると、雰囲気が変わった。
「あ……あの図書委員であるイロハシロコを怒らせるなんて……」
「や、やばい、逃げよう……」
「巻き込まれないように……」
周りの人が逃げ始める。自分も逃げた方が良いかもしれない。
さっきまで何もなかったのに、人が銃で撃たれたみたいな重苦しい空気が流れている。
「ちょっと表に出ろ」
「誰が聞きますかって」
「良いからでろ」
「え、力強い!?」
腕を掴まれた。まるで大型トラックに轢かれたような痛みが走る。
「ちょ、痛いんですけど……」
「殺しますよ?」
「なんで!?」
悪霊も泣いてしまいそうな顔で、脅される。
怖い、ただそれだけの感情に支配された。本能的に、勝てないと思った。
そして、図書館の外に連れて来られた。
「な、何をするつもりですか……?」
「殴るんですけど」
「僕が何をしたって言うんですか!!」
「死ね」
「口悪い……て痛い!!」
女性に突き飛ばされ、地面に倒される。そして、馬乗りされると、顔を殴られた。
手は止まらず、激痛だけが僕を襲ってくる。脳みそが腐ってきそうだ。
「ちょ、やめて……」
「本を粗末に扱いやがって、許さないぞ?」
「ご、ごめんなさいー……」
しばらく、この女性に殴られ続けた。
◇◇◇◇◇
「で、名前は?」
「イチノセアミです」
「そんなわけないですよね?」
「本当ですよ!」
「まだ殴り足りなかったみたいですね?」
「シノビクサリクです!」
体感として三十分程殴られ続けた後、地面に土下座させられた。小さめで鋭利な石が背側の体に食い込んできて痛い。
名前を知られたくなかったから自分の通う高校の先輩の名前を名乗ったが、すぐに本名を言う羽目になってしまった。なぜバレた。
「トリアス総合学園の生徒ですね?」
「チクるのはやめてください! アミ先輩に怒られるので……」
「あ?」
「うぅ……」
「はぁ、ここで待っててください。あなたの事をしっかりと報告させてもらいますから」
怒りっぽく良いながら、女性は後ろを向いた。
これはチャンスだ。ここに留まっていたら、また死体みたいに殴られるに決まっている。
足音を立てずに、静かに歩く。こんな警戒心の薄い女性に説教されるわけにはいかない。だから、さっさと逃げるのだ。
「よし、今だ!」
ある程度離れた所で、走る。
自分の行為に何の問題があったのかは不明だ。しかし、怒られるのは怖いから、全力疾走で、逃げる。
「ふぅ、撒いたようですね」
後ろを見て、かの悪魔のような女性がいない事を確認した。
そうやって全力疾走をしながら振り向いたので、前の障害物にぶつかってしまった。とても痛い。
「こんにちは」
「なぜここに!?」
なんと嫌な障害物、なぜか前に先程の女性がいた。
え、なんで。後ろを見てもいなかったはず。いや、おかしい。瞬間移動でもしやがったのか。
「やっぱり殴り足りなかったみたいですね」
「うぐぅ……」
「私と一緒にトリアス州に帰りましょう。久しぶりに親とも会いたいですし」
アカント女子学園の制服を着た女性が、満面の笑みを浮かべてそう言う。満面の笑みなんて表現したが、違う。狂気的な笑みとしか思えない。
考えていると、殴られた。
「どぉぉじでー!」
「因果応報ですよ?」
笑みを浮かべながら、女性は僕を殴った。
◇◇◇◇◇
「それでは、帰りましょうか」
「うわーん!」
大きな荷物みたいに、女性に背負われて空港に連れて来られた。
殴られ続けた後、しばらく気を失っていたらしい。そして、気が付いたら無様に、背中合わせで背負われていた。
「飛行機の中でくらい静かにしておいてくださいね、リクさん」
「今から怒られにいくんですよ!? 静かにできるわけないじゃないですか!!」
「本気で殺しますよ?」
「黒人差別反対です!!」
「あ?」
「そ、そんな、冗談じゃないですか……」
とりあえず暴れてみたが、威圧感のある声により一瞬で黙らされた。この女性はとても恐ろしい、表現するならハチの大群だ。
ここまで怖い人はそうそういない。生徒会の先輩にも、トリアス総合学園の治安を守る部活である治安維持部の部長にも、怖い人はいるのだが、怖さの系統は違う。ちなみに、その人達はこの女性と同じく白い肌をしている女性なので、白人女性には怖い人が多いのかもしれない。
髪色も身長も違うのに、どうしてここまで怖くなるのだ。
「くっ、スズ先輩と雰囲気は似ていますが、アンズ先輩みたいな雰囲気も感じますね……」
「何の話です?」
「白人女性は怖いなーって」
「ふふふふふ」
「いや、アミ先輩は僕と同じで褐色なのかどうかは知らないですが、あんまし怖くないんですよね……」
「あんまり先輩を舐めない方が良いですよ?」
「白人女性って怖くないですか……?」
狂気的な笑い声を発して、女性は言った。
アミ先輩、イチノセアミっていう女性は自分と同じ褐色の肌をしている。そして怖くない。しかしその親友であるスズ先輩、ハチツカスズっていう女性はこの人と同じ肌が白色だ。そして超怖い。さらに、アンズ先輩っていう、治安維持部の部長も白色の肌で、超怖い。
「あの、白人女性の笑顔って、どうしてそんなに怖いんですか……?」
「その言い方だと、他に笑顔が怖い白人女性を知っているようですね。先程言っていたスズ先輩とアンズ先輩の事だと思いますが」
「スズ先輩はあなたよりも背が高いし、なんか怖いんですよ。アンズ先輩は僕より背が低いですが、普通に強くて怖いって感じです」
別に嘘をつく必要性が無いので、素直に言う。ここにスズ先輩かアンズ先輩がいたなら話は違っていたが、今はいない。
「ちなみに私は?」
「言ったら殺されます?」
「内容次第ですよ」
「すっごく怖いです」
「内容次第って、気を遣えって意味ですよ」
「殺さないで!」
「静かにしろ」
「はい……」
理不尽な物言いで、白い肌の女性は言った。
短いのですぐに次を出します




