危険な一目惚れ
オマケが続く
「今日も会いに来てしまいました」
想い人である先輩に会いに、中央テロム州まで来た。
「……」
全てを真っ黒に染めてしまいそうな程黒い髪を持ち、とにかくかっこいい先輩を考えると、頬が熱くなってくる。
シラガネミキ、自分が想いを抱いている先輩とは学園も学年も違う。しかし、独占したいと思う程には慕っている自負がある。
足が軽い。早く先輩の家に行って、一緒に寝たい。そう思って、走る。
「……飛行機で来てしまったので、今月は節約ですね」
エクシオ州から中央テロム州に行く手段は、車で高速道路を走る、新幹線を乗る、そして飛行機で行く、これらの三種類が存在する。私は、一番早く着いて、一番高くつく飛行機で移動した。
「ですが、今日は泊まらせてもらいます。あわよくば、一緒に寝て……」
『かわいいよ、チヨ』
「……!」
ミキ先輩の甘い言葉が思い浮かんだ。少しだけ、体が火照る感覚に陥った。
「……?」
しかし、ミキの自宅の前に着いたとき、その感覚がなくなった。
家の前に、知らない女性がいた。
「……綺麗ですね」
思わず小声でそう呟く。
素直に、心の底からそう思った。その女性は黒い聖堂服を着ていて、凛としている。橙色の、整えられた長い髪が、眩しい。ただ立っているだけで、輝いてみえる。
大好きな女優と、姿形が似ていると思った。
「……」
その少女がなぜ、自分の想い人の自宅の前にいるのか、理解できなかった。
もしかしたら、この女性は自分の想い人である先輩の彼女なのかもしれない。ここまで美しい女性なら、ミキ先輩とつり合っているかもしれない。
そう考えてしまって、自己嫌悪に陥った。そして同時に、先輩への独占欲が、強くなった。
◇◇◇◇◇
「鬱陶しくなければ、良いのですが……」
大好きな先輩に会うべく、中央テロム州まで来た。
「……」
私の事を包み込み暖かくしてくれそうな先輩の事を考えて、心が躍る。
シロガネミキ、学園も学年も違う。しかし、先輩のモノになりたいと思う程には慕っている自負がある。
早く先輩と会いたい。そして、一緒に寝たい。そう思って、ミキ先輩の家の前で帰宅を待つ。
「……飛行機で来てしまった私は、やっぱり鬱陶しいかもですね」
アカント州から中央テロム州に行く手段は、車で高速道路を走る、新幹線に乗る、そして飛行機で行く、これらの三種類が存在する。私は、一番早く行ける飛行機で移動した。
「……せめて、抱き枕になりたいです」
『綺麗だね、ヒヨリ」
「……!」
ミキ先輩の甘い声を想像する。少しだけ、心臓の鼓動が早くなった。
「……誰でしょう?」
しかし、誰かがこの家の前で止まって、その心臓の鼓動が元に戻った。
知らない少女が、走って来た。
「……かわいいです」
思わずそう呟く。
一目見て、率直にそう思った。その少女は黒い軍服を着ていて、色気が滲み出ている。紫色の、ウェーブが掛かった髪が、美しい。ただ立っているだけで、目を奪われてしまう。
大好きな女優と、姿形が似ていると思った。
「……」
その少女がなぜ、自分の想い人の自宅の前にいるのか、理解できなかった。
もしかしたら、この少女は自分の想い人である先輩の彼女なのかもしれない。ここまで可愛らしい少女なら、ミキ先輩とつり合っているかもしれない。
そう考えてしまって、自己嫌悪に陥ってしまった。そして同時に、先輩への独占欲が強くなった。
◇◇◇◇◇
「もしかして、こちらのお宅に御用ですか?」
少し強めの口調で、言葉を吐く。その際、相手を睨みつけた。
「はい。私を一番大切に思ってくれている人に会いに来ました」
笑顔を絶やさずに、しかし目が笑っていない少女が、柔らかい声で口答えしてくる。
「いえ、ミキ先輩は私を一番大事にしたいと思っています」
「まさか、ミキ先輩は私を一番大事にしたいと思っているのです」
歪められた事実があったので訂正したのだが、それをこの女は否定してきた。
なんなんだこの女は、腹立たしい。先輩の彼女として相応しい私に牽制でもしているのか。なんとも愚かだ。
「今日は私がミキ先輩のお家に泊まるので、あなたは速やかに帰りください」
「いえ、今日は私がミキ先輩の家に泊まるので、あなたがさっさと帰ってください」
「ふざけるな」、などと口走りそうになるのをなんとか止める。
せっかく先輩と過ごす二人きりの時間を満喫しようとここに来たのに、この女に邪魔されてたまるか。ミキ先輩は自分と寝るのだ。
「帰れ」
「それはこっちのセリフです」
「お前にミキ先輩は渡さない」
「あなたにミキ先輩は渡しません」
思わず敬語が消えてしまった。しかし相手は譲らないと言った姿勢で、毅然とした態度で返してくる。
「早く帰らないと、力尽くで帰らせますよ?」
「あら、私に勝てるとお思いで?」
「喧嘩ですね、買ってやりますよ」
「あなたがお売りになられたはずですが」
とりあえず敬語を戻して、相手を睨みつける。相手も、私を睨みつけてきた。
気づいたら手が出ていた。この女に先輩を渡したくない。先輩は私のモノだ。誰にも渡したくない。
相手も、やり返しと言わんばかりに私を殴りつけてくる。
「この!」
「ミキ先輩を誘惑するとは、許せません!」
「はぁ!?」
周りの目線など気にならない。想い人の家の前で殴り合いの喧嘩をしているのは、冷静に考えると迷惑極まりないのだが、今はどうでもいい。
「ちょっと!?」
黒髪で制服姿の少年が帰ってきた。この人がミキ先輩である。
「チヨ!? ヒヨリ!?」
私と敵の女の間に割って入って、先輩は喧嘩を止めてくる。
何とも優しい人だ。だが、今は邪魔しないでほしい。
「ミキ先輩、この方が生意気にもあなたに色目を使っています」
「ミキ先輩、この方があなたを篭絡するしようとしております」
「なんだとお前」
「何ですかあなた」
「とりあえず落ち着いて!!」
ミキ先輩になだめられて、とりあえず家に上がった。
◇◇◇◇◇
「……」
「……」
「二人とも……?」
家で、チヨとヒヨリ、オレを慕ってくれている二人の少女が、睨みあっていた。
先程、家の前で他の人の迷惑を顧みずに殴り合いをしていた少女達であったので、まあそうなるだろうとは思った。だが、せっかく来てくれたのに帰すわけにはいかない。
普段、二人は争いを好まないタイプである。チヨの場合はめんどくさがるタイプなのだが、ヒヨリの場合は心優しく争いを止めるタイプである。あの喧嘩を見たら全く説得力がないのだけど。
「シスターは礼拝をする時間なのでは?」
「ご心配なく。そちらこそ、軍の招集がかかる頃合いなのではないですか?」
二人は、お互いに帰ってほしいという欲望を剥き出しにしていた。
個人としては仲良くしてほしいのだが、難しいかもしれない。
「デザートでも食べます?」
「お風呂の時間ですよ」
「仲良くしようよ!」
あまりの雰囲気の悪さに、思わず叫んだ。いつもの、チヨの場合はいつもめんどくさがりであるがしっかりと自身の仕事をこなすギャップ、ヒヨリの場合は普段は真面目であるが時たまに意地悪になるギャップが、微塵も感じられない。
この惨状を見るまで、二人はきっと仲良くなれると、勝手に思っていた。なぜなら、ヒヨリはチヨの推し女優に似ていて、チヨはヒヨリの推し女優に似ているからである。容姿もそうだが、雰囲気も似ているから、きっと好きになってくれると、本当に思っていた。
「そうだ、二人で一緒にゲームとかはどうかな?」
唐突ではあるが、オレは女の子同士の恋愛模様が好きだ。だから、この二人には恋仲になってほしい。
とにかく、まずは仲良くなってもらいたいので、ゲームをしてもらおうと思った。
「良いでしょう。負けたら帰ってください」
「ふふ、負けて泣いても遅いですからね」
自宅にあるテレビゲームのコントローラーをそれぞれチヨとヒヨリに渡すと、二人は人が変わったようにゲームを始めた。ちなみに、格ゲーである。
最初は、二人は黙々とコントローラーを操作していたが、段々とうるさくなってきた。
例えば、ヒヨリが操作ミスをしてしまったとき、
「あら、操作が上手いですね」
などとチヨが煽る。
また、チヨがコンボミスで倒されたとき、
「今のコンボ、とても素晴らしいです」
などとヒヨリが煽る。
なんという事だ。二人の仲は悪くなる一方である。
「あれ、仲良くなってる気がしない……」
「あぁ! このキャラ弱すぎます!!」
「くっ、このキャラクターは難しいですね」
ここで、気が付いた。格ゲーをやったら逆に仲が悪くなっているのではないか、と。
普段仲が良い人達がやるのなら煽りなども良いスパイスになるはずであるが、仲が悪いとその限りではないようだ。単純に、判断ミスをしてしまった。
「こんなまどろっこしい事をやるより、物理で決着をつけましょう」
「その点に関してはあなたに同意します、掃除用具さん」
「は?」
「あなたが髪を床につけながら歩けば社会貢献になりますよ」
「なんだとこの堕落シスター、さっさと表に出ろ」
「やらせないよ!?」
外に出て喧嘩をしようとする二人を、何とか止める。
恋仲になるのは叶わなくても、せめて友達にはなってほしい。だって、オレとは仲が良いのに、二人が仲悪いのは、寂しい。
あわよくば恋仲になってほしいのだが、まずは二人の険悪な雰囲気を取り除こう。
「……わかりました」
「……はい」
「すっごい不満そう……」
結局、二人とも自宅に泊まる事になった。その間は雰囲気が最悪すぎて、頭を抱えずにはいられなかった。
次からまた別視点




