六冊目
俺はオリアナ坊とその他を連れて応接室に連れてきた。
「さて、何から話そうか」
「ワシらを働かせるんじゃろ?」
「そうなんだが……心を読むのは止めてくれ、ロンエル爺さん」
「ほっほ。こりゃ癖じゃ、治らん」
くっそ。
息を吐くように人の心を弄びやがって。
生前と何も変わりやしない……。
「これがワシじゃからのう」
やかましい。
「爺さん同士仲ようしようや」
「それだ。なんで俺を爺と呼ぶ?オリアナ坊もそうだったけど。俺の今の外見は青年のはずだが」
「え?おじーちゃんだよ?」「そーだよー」
「拙者にも老齢の殿方にしか見えませぬが……」
あれか?
魂が見てるのは同じ魂だけってことか?
元は八十過ぎの爺さんだから魂で判断してるこいつらには爺さんにしか見えないってことか?
「そういうことじゃ。お主の外見をどれ程変えようが本質は変わらん」
またこの爺さんは……。
「まあそれはいいとして、お前らにはここで働いてもらう」
「えー、拙者働きたくないでござる」
「その言葉を実際の武士から聞くことになるとは…」
「働くと言ってもこの城の管理を任せたいだけだ。なにも掃除洗濯をしろとは言わん」
「管理?」
「俺は図書館に籠るだろうからその他の部屋は自由に使ってくれていい。あの動けない奴らにもそう伝えておけ」
家事や洗濯をしてくれるに越したことは無いが、触れられないだろ?
言っても思念体だし、こいつら。
「触れられたら良いのか?」
「おお……」
もうこの爺さんにとやかく言うのは止めよう…。
キリがない。
「それなら、ほれ。メイドの娘らが何人かいたじゃろ。その子らに任せればよい」
「そんな人あの部屋にいたかしら?」
「あの部屋にはおらん。じゃが、この城にはおるじゃろ?」
「ああ、居たわね。この城お憑きの」
いたのか?
認識してないが?
今まで一人だったが、会ったことないぞ?
「呼べば来るんじゃないー?」「呼べば来ると思うよー?」
「誰かいるか!」
こんな感じか?
家政婦とか雇った試しがないから呼び方なんぞ分からんが。
お、三回ノック。
「失礼します。お呼びでしょうか。旦那様」
「うわっ」
「何か御用でしょうか?」
「あー……家事や洗濯はできるのか?」
頭の整理が追い付いていない。
この城は親父が買ったんだがこれも曰くつきの代物だったのか。
そういやなんか説明した気がするけど、子供のころ過ぎてあまり鮮明には思い出せないな。
「身体が無いので難しいかと思われます。私たち使用人はこの城に二百五十名程いますが、誰も身体が無いもので手持ち無沙汰となっております。今一度私たちにお仕える機会を」
「あ、ああ。やってくれるのはこっちから頼みたいほど有難いんだが、何分身体が無いしな……」
というかお前らそんなにいたのか。
二百五十人も見たことないぞ?
「旦那様のお母様のお部屋に身体がありましたが、あれは使用してもよろしいのでしょうか?」
ん?
身体?
そんなもんどこにあったって?
「お主の母君の部屋じゃよ。マネキンのようなものが並んでおったぞ?」
「マネキン?ちょっと行ってみるか。お前らもついてこい」
「ご案内します。こちらです」
……あったわ。
マネキンというかなんだこれ?
肌の質感といい、顔といい、人そのものだぞ?
カプセルにコールドスリープしてあるし。
これ出したら、意識戻るのか?
出してみるか…。
ここか?
ここをこう、で、こう。
機械音と同じくプシューという音と共に冷気が出て開いていく。
女性型で胸は控えめ、黒髪ロング、身長は百六十五ぐらいか?
……起きる気配はないから只の死体か?
なんでお袋はこんなものを地下に……。
しかも、二百五十人ぐらい余裕でありそうだし。
「ちょっとメイドさんこの中に入れるか?」
「かしこまりました」
仰向けになっている女性型の身体に仰向けに寝転ぶ。
すると見る見るうちに体に沈むように重なってしまった。
「どうだ?違和感はあるか?」
「おはようございます、旦那様。視界は良好、体の動作についてはコールドスリープしてた所為かは解りませんが、動かしにくいです」
「久々の身体で慣れんのじゃろうて」
「そういうもんか。なら後の二百五十人にも試すぞ。カリコリ兄弟、伝えてきてくれるか」
「「はーい」」
これでお手伝い問題は解決したな。
じゃあこいつらにも身体を与えてやるか。
何がしたいかは後でそれぞれに聞くとするか。
いつになったら本を読めるんだ……。




