佐々木美加 2
幼い頃から人見知りで大人しかった。
たびたび大人たちから可愛い子だと言われる為、それなりに整った容姿をしている自覚はあったが、注目されるのが恥かしくて何時もうつむいている子供だった。
小学生の頃は同じように大人しい数人の友人とそれなりに穏やかに学校生活を過ごしていたが、中学生になり事情が変わってきた。
中学生になって背が伸びた私は急激に大人びてしまった。
よく男子から話しかけられるようになり、告白されることも増えた。
当時から男子が苦手だったのでその全て断っていたのだが、それが振られた男子だけではなく一部の女子の反感をかったらしい。
全体的に行儀の良い学校だったため、イジメになることはなかったが友人たちはその雰囲気に耐えられずに離れていった。
もちろん皆が皆そうだったわけではないけれど、1人で過ごすことが増えたまま中学生活は終わった。
問題なのは私が通っていたのが中高一貫の学校だったことだろう。
中学校の雰囲気がそのまま高校になっても続いた。
おそらく私がもっと積極的ならばそれも変わっていたのかもしれないが、私は高校1年生も1人でうつむいたまま過ごしてしまった。
このままの高校生活が続くのだろうと思っていたが、それを変えてくれたのが『アイドル』だった。
1人で過ごすことの多い私は昼休みなどをよく図書室で過ごしていたのだが、高校の図書室には様々なCDやDVDも置いてあり、イヤホンを持ちこめば備え付けのプレーヤーで視聴することが出来た。
1年生の頃から時折映画やお芝居のDVDを見ていたのだが、2年生になって暫くふと目に付いたアイドルのライブDVDを見て世界が変わった。
そこでは可愛い少女たちがスポットライトを浴びて歌い踊っていた。
それは有名なアイドルグループの一つで、テレビでよく見る少女たちだったが、テレビで見るよりもその姿はもっともっと魅力的だった。
時に笑顔で手をふり、時に真剣な顔で汗を飛ばし、観客と一体となって舞台を作り上げているその姿に何時しか私は夢中になっていた。
それからは一日の過ごし方が変わった。ただ何となく過ごしていた1人の時間は、彼女たちの情報を集め、CDやDVD、ネットの動画サイトを見る時間へと変わっていった。
その過程で友人も出来た。
ある日の昼休み、スマートフォンで動画を見ていることに気付いたアイドルファンの女子が声を掛けてきてくれたのだ。
彼女は高校から入学してきた外部生で、なんとなく雰囲気的に話しかけずらかった私のことが気になっていたらしく、機会を伺っていてくれたらしい。
「一緒にオタ活できる友達が欲しかったんだ」
そう言って照れくさそうに笑った彼女は何時しか大切な友人になっていた。
私よりもアイドルに詳しい友人が出来たことで私のアイドルオタク活動、訳してオタ活も変わった。
今までは1つのグループを追っていたが彼女の勧めで色々なアイドルグループを見るようになった。
そこでは様々な少女たちが夢に向かって頑張っていた。
友人はそんな彼女たちを応援したいと熱く語っていた。
だが私は応援したいと思う気持ち以外にも、なにかあるように感じ始めていた。
「チケットが取れたよ!」
2年生が終わり春休みになって、私は初めてアイドルのライブを生で見ることが出来た。
関東の外れに住んでいたため、近場でライブが行われることは少なくなかなか機会がなかったのだが、友人に誘われ東京で開催されたライブへと参戦することになったのだった。
楽しくて、圧倒され、感動した。
「私も……」
「え、なに?」
アンコールの声の鳴り響くなか、私は心のままに声を出していた。
「私もあそこに行きたい、アイドルになりたい」
瞬間、暗転していたステージに光が差し、少女たちが戻ってきた。
アンコールは盛り上がり、そして最後には重大発表が待っていた。
『新グループ結成! 一般オーディション開始!』
少女たちと観客の驚きが一際大きく響いた。
アイドルになりたいとはっきり意識したこのライブでなされたこの告知。
私はこれが運命だと思うことにした。




