佐々木美加 1
「美加ちゃん、今日もいいかな?」
お風呂から自分の部屋へ帰ってくると、扉の前で待っていた少女が首を傾げてそう言った。
「もちろん、いいよ。ほら、風邪引いちゃうから早く入って? ハナちゃん」
「うん、ありがと」
鍵を開けてハナちゃんとともに部屋に入る。
部屋は広さ8畳のフローリングになっており、入寮時に用意されていた最低限の家具だけが置いてある。
「お邪魔します。……朝ぶりだね、テンコ」
部屋へと入ったハナちゃんはすっかり自分の位置となったベッドに乗ると壁際まで行き、枕の位置に置いてあった狐のヌイグルミであるテンコを抱きしめた。
その様子を微笑ましく思いながら、私は着替えを仕舞ったりと寝る準備を整え、テンコへの挨拶をハナちゃんが終えると、2人で今日1日のことを話し笑い合った。
ここ数日ですっかりお馴染みになった光景。
しばらくすると話し疲れたハナちゃんがテンコを枕にして先に寝てしまうのもいつものことだった。
笑顔で眠る3つ年下の、だけれど同期の少女の美しい顔を眺め私は思う。
「まさかホントに受かっちゃうなんて……」
オーディションに受かったあの日から私の暮らしは変わった。
ただ漠然と過ごしていた日々は終わり、毎日が充実している。
これは初めて勇気を出した私へのご褒美なのだろうか?
ハナちゃんの艶やかな黒髪を撫でながらも、私はあの時のことを思い出していた。




