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同接3人スタート! 制服姿で異世界配信を始めたら、飯テロで大バズりしました 〜異世界ごはん配信部〜  作者: 原島航平


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第32話:中層最深部ボス決戦! 荒れ狂う双極竜『ヴォル・フロスト』

 凍りついた分厚い氷床と、赤く脈打つマグマの裂け目がモザイク状に交差する特異な空間。


 ここは『氷雪・火山複合エリア』の中層最深部、相反する環境が衝突する境界エリアだ。


 一歩足を踏み入れれば、肺が凍りつくような吹雪と、肌を焦がす熱風が乱気流となって交互に押し寄せてくる。


「うわ、寒っ……からの熱っ! 気温差で脳がバグりそう!」


 まひろが広域環境センサーと魔法構築を兼ねたタブレット端末を操作しながら、思わず首をすくめる。


「ふふ、でもアキバで揃えたこの防具、断熱性もフットワークも完璧だよ! 動きやすさはバッチリ!」


あおいが鯉口を軽く切り、愛刀の柄に手をかけながら軽く跳ねてみせた。


「私も突入前に温かいスープでしっかり加温しておいたから手足の冷えはゼロだよ〜。指先の感覚もバッチリ!」


 凛が重厚な特殊断熱超合金大盾を構え、頼もしい笑顔を見せる。


「よし! ポムドローン、配信スタート! みんな、画面見えてるー?」


 あおいの合図で宙に浮かぶカメラ端末が起動し、決戦の火蓋が切って落された。


◆


>スライムニキ:きたあああああ! 中層最深部!

>名無しの冒険者:画質めちゃくちゃ綺麗! でも現場の環境ヤバすぎだろw

>ペンギン太郎:画面越しでも熱気と冷気が伝わってくる……!

>ソロキャンパー:安全第一でな! 応援してるぞー!


 配信開始と同時に勢いよく流れるコメント欄。その直後、洞窟全体がドカンと激しく揺れた。


グォォォォォォォンッ!!


 空気を震わせる咆哮とともに、奥の白煙から巨体が姿を現す。


 左半身は激しい炎を纏い、右半身は青白い氷に覆われた巨大な竜――中層エリアボス『双極竜ヴォル・フロスト』だ。


>ソロ キャンパー:片側は炎で片側は氷って……あんな温度差で体が自滅しないのか!?


「あの竜の本当の体温は、周囲を凍らせるほどの超低温よ! 左半身の炎は体内で作った【断熱ジェル】と【可燃性オイル】を外で燃やしてるだけ……いわば外付けの炎なの!」


 まひろがタブレットの解析データを素早く読み上げる。


「なるほど! 着ぐるみみたいなものなら、中の肉質は普通に刃が通るね!」


「そういうこと! オイルの分泌腺の周辺と、氷の鱗の隙間を狙うわよ! 凛、お願い!」


「任せて! ガードアップ!」


 凛が超合金大盾を構えて前へ踏み出す。


 直後、ヴォル・フロストの燃え盛る左腕が、轟音とともに振り下ろされた。まともに受ければ女子高生の身体ごと潰される質量だ。


「ふっ……!」


 だが、凛は真正面から受け止めない。衝突のコンマ一秒前、大盾を斜め上方へと滑らせる。


ガキィィンッ!!


 強烈なパリィ(受け流し)により巨腕の軌道は外側へ逸れ、横の岩盤をドゴォッと粉砕した。


「よし、巨腕はいなした! でも氷側から散弾が来るわ――プログラミング魔法陣、展開!」


 まひろが間髪入れずにタブレットの画面上で組み立て済みのコードをフリック。空間に浮かび上がった魔法陣から高圧の空気波が解き放たれる。


「『衝撃圧風(エア・ショック)』ッ!」


 ヴォル・フロストが右半身から放った大量の鋭利な氷柱散弾に対し、まひろの空気波が真っ向から激突。氷柱を空中ですべて粉砕・霧散させた。


「助かった、まひろちゃん! あおい、ガラ空きの右足!」


「了解っ! 突撃ー!」


 まひろが切り開いた射線を抜け、あおいが一気に加速。体勢を崩したボスの側面に滑り込み、鋭い居合の一閃を叩き込む!


シュバッ! ズバァンッ!


「グォアァァァッ!?」


 鮮やかな刃筋が氷の鱗の隙間を切り裂く。痛みに暴れるボスは左半身から可燃性オイルを撒き散らし、足元を一気に火の海に変えようと火花を散らした。


「広域発火はさせない! 冷却スクリプト、実行!」


 まひろがタブレットの画面を素早くタップすると、青白い魔法陣が着火寸前のオイル流出孔へピンポイントで展開される。


「『冷却凍破(フリーズ・ランス)』ッ!」


 極寒の冷気弾がオイルの噴出孔を根元から凍りつかせ、激しい炎の連鎖を未然に鎮火させた。


「ナイス相殺、まひろちゃん! 次、尻尾来るよ!」


「任せて! たーっ!」

オイルを封じられて苛立つボスが振るった巨大な尻尾に対し、凛が踏み込んで尻尾の根元へ大盾の縁を鋭く打ち当てる。

ガンッ!!


 見事なタイミングの弾きで巨尾を上空へ跳ね上げ、完全に無傷で攻撃をいなしてみせた。


>スライムニキ:まひろちゃんのタブレット魔法サポートヤバすぎるだろww

>名無しの冒険者:爆速コード実行で氷柱砕いて、オイルの発火まで凍らせて止めたぞ!?

>ペンギン太郎:指示出ししながらプログラミング魔法陣で戦うのカッコよすぎ!

>ソロキャンパー:凛ちゃんのパリィ精度高すぎる


 まひろのタブレット操作による的確な魔法攻撃と牽制が、パーティの攻防の手数を何倍にも引き上げていた。


 だが、手痛い連続ダメージを溜めたヴォル・フロストが大きく距離を取り、息を深く吸い込む。


 体表のオイルが一気に溢れ出し、右半身からは極寒の吹雪が立ち上った。


「マズい……超低温の水分と灼熱のオイルを混ぜてる! 口腔外で一気に『水蒸気爆発』を引き起こす気よ!」


「ええっ、水蒸気爆発!?」


「あんなの直撃したら跡形もなく吹き飛ぶわ……! 凛ちゃん、アースアンカーを打って風除けの体制を! 私が足元を崩す!」


「了解! ……ハァッ!」


 凛は大盾底部のアンカーを岩盤へ叩き込み、爆風を上空へ削ぐための傾斜を作る。あおいとまひろはその真後ろへ滑り込んだ。


 ヴォル・フロストが灼熱と極寒の圧縮ブレスを解き放とうとした――その瞬間!


「崩落プログラム……『岩床崩落(グラン・ブレイク)』ッ!!」


 まひろがタブレット画面の実行ボタンを力強くタップ。ボスの足元にあるマグマと氷床の脆い境界線に一斉に破壊魔法陣が組み上げられ、一気に爆砕した。

グラッ……!


「グォアッ!?」


 足元が崩れたボスは大きくバランスを崩し、頭部が上空へと跳ね上がる。


 それによって、放たれたブレスの射線が垂直に近い上空へと一気に逸れた!


ドドドガァァァァンッ!!!!!


 上空で過熱蒸気の爆発的な膨張が起き、洞窟の天井を激しく砕き割る。


 直撃は免れたものの、上空から叩きつけられた猛烈な『爆風の余波』と熱波が地上を襲う!


ギギギギッ……!


「くっ……うあぁぁぁっ!!」


 直撃ではなく「余波」であるにもかかわらず、凄まじい衝撃波の質量に押され、凛の足は地面を削りながら後ろへ滑らされた。アンカーを伝って大盾を支える両腕に猛烈な打撲の衝撃と痺れが走る。


(まひろちゃんが足元を崩してくれなかったら全滅だった……! でも、この余波くらい……絶対防ぎ切ってみせる……っ!)


 凛が痛む腕に力を込め、歯を食いしばって大盾の角度を死守する。


 衝撃波と熱風の余波は大盾の傾斜によって真っ二つに裂かれ、背中の二人を寸前で避けて吹き抜けていった。

「ふぅ……ふぅ……防ぎ……切ったよ……!」


「まひろちゃんの魔法で浮いた! あおい、今っ!!」


「うんっ! 凛ちゃん、盾借りるよっ!!」


 あおいは凛の大盾の縁を足場にして高く跳躍。


 水蒸気爆発を上に逸らされ、体勢を崩して首元がガラ空きになったボスの真下へ飛び込むと、刀を両手で深く握り直し、真っ向から一刀両断に振り下ろした!


ズバァァァンッ!!


「グォオオオォォォッ……!!」


 急所の結合部を一閃で深く断ち切られたヴォル・フロストは天を仰いで咆哮し、体表の炎を消しながら崩れ落ちると、静かに光の粒子となって消滅した。


◆


 激戦の最深部に静寂が戻る。まひろの端末に『Target Clear』の文字が浮かんだ。


「やったぁぁぁぁ! 勝ったぁぁぁ!」


 あおいが残心から刀を鞘へ納め、ガッツポーズを決める。


 しかし、凛は大盾から手を離したまま、痛む両腕を押さえてペタンと座り込んでいた。


「凛ちゃんっ! 腕大丈夫!?」


「急いで冷やさないと! 直撃は避けたけど、あの爆風の衝撃で酷い打撲と痺れが出てるわ……!」


 あおいとまひろが慌てて駆け寄り、コールドスプレーと湿布で手際よく応急手当をする。


「あはは……ごめんね、ちょっと腕が重くて痺れちゃって……。まひろちゃんが射線を逸らしてくれなかったらヤバかったよ〜」


 凛は痛みに耐えながらも、ホッとした優しい笑顔を浮かべた。


>スライムニキ:まひろちゃんの魔法サポートが最初から最後まで神すぎた!!

>名無しの冒険者:射線逸らしだけじゃなく道中の攻撃消しも完璧だったな!

>ペンギン太郎:手当しっかりな! 凛ちゃん本当によく耐えた!


 ボスの消滅に伴い、眩い光とともにドロップアイテムが出現する。


 それは、美しいマーブル模様の脂が乗り切った、信じられないほど巨大で瑞々しい最上級部位――『双極竜の極上サーロイン肉』だった。


「うわぁ……すごい霜降り肉! でも……凛ちゃん、今日は包丁握っちゃダメだからね!」


 あおいが持ち込んだキャンプチェアを広げ、凛を優しく座らせる。


「そうよ、今日はしっかり休んで。……でも、この極上のお肉を最高の状態で食べたいのは譲れないわ」


「うん! だから今日は……【凛シェフの指示調理配信】にするよ!」


「えっ、私のお手伝い?」


 驚く凛に向かって、あおいとまひろが笑ってみせる。


「そう! 凛ちゃんは特等席で監督役! 火加減も包丁も、全部凛ちゃんの指示通りに私たちがやってみせるから!」


「ふふ、それなら任せて。私の目に狂いはないわよ。まひろちゃん、包丁の角度から教えるね〜」


>スライムニキ:うおおお! 凛総監督の指示調理配信きたー!!

>名無しの冒険者:あおいとまひろの調理スキルが試される時……!

>ソロキャンパー:指示役と実行役の連携か! 絶対美味いのができるぞ!


 リスナーの歓声に包まれながら、あおいとまひろが腕まくりをして肉の前に立つ。


「それじゃあ新米シェフのお二人さん、最高の焼き加減を目指すよ〜!」


 凛の楽しそうな指示のもと、過酷な激闘を終えた三人の『勝利の豪華ごはんタイム』が幕を開けた。

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