第25話:祝・10万人突破! 夏休み完結&感謝のメガ盛り特大パフェ配信
「き、ききき、来た……! 来たよまひろちゃん、凛ちゃん! 見て見て見てーーーーっ!!」
宿題地獄を無事に(?)切り抜けた2学期初日の放課後。
あおいがタブレットの画面を指さしながら、壊れたロボットのようにカタカタと身体を震わせていた。
画面に表示されているのは、彼女たちのチャンネル『異世界ごはん配信部』のアナリティクス画面。
そこに刻まれた数字は――『99,999』。
「あと一人……あと一人で……!」
「ふふ、あおいちゃん落ち着いて。まひろちゃん、ポムドローン起動して〜」
「ええ。最高の瞬間をみんなで迎えましょう」
まひろがドローンのスイッチを入れた瞬間、カウントがコトンと跳ね上がった。
――『100,000』
「「「チャンネル登録者数10万人突破ーーーーーっ!!!!!」」」
画面を開いた瞬間に飛び込んできた快挙に、コメント欄は一瞬で祝いの弾幕で埋め尽くされた。
>スライムニキ:祝10万人きたあああああああああ!!!
>名無しの冒険者:おめでとうううう! 同接2桁の頃から見てたから感無量だわ!
>ペンギン太郎:おめ! 夏休みの飯テロ配信の成果だな!
>ソロキャンパー:10万人おめでとう! これからも最高の飯テロ頼むぞー!
>腹ペコ通りすがり:おめでとう! 今夜の記念配信なにするの!?
「みんな、本当にありがとーーーっ! 同接3人から始まったこのチャンネルが、まさか10万人になれるなんて夢みたいだよ〜〜っ!」
「本当にね。最初はあおいが無茶苦茶な勢いだけだったのに……リスナーのみんなの応援のおかげよ」
感極まって涙ぐむあおいと、珍しく素直に感謝を口にして目を細めるまひろ。
そんな二人の前に、凛が「ふふっ」と大きな布を被せた巨大な物体を運び込んできた。
「さあ二人とも、しんみりするのはまだ早いよ〜? 今日は10万人突破&夏休み完結の感謝企画!『全高五十センチ超え! 異世界メガ盛り感謝特大パフェ』を作るよ〜!」
「「ご、五十センチーーーーーっ!?」」
◆
凛が卓上に置いたのは、まるで花瓶かと見紛うほどの巨大な特製ガラスピッチャー。
そこに、この夏休みの異世界配信で集めてきた極上の異世界食材が惜しげもなく投入されていく。
「まずは一番下に、サクサクに焼き上げたパイ生地と濃厚カスタード! その上に、氷河ダンジョンの氷結晶で作った甘酸っぱい『極彩色ベリーのグラニテ』を敷き詰めて……」
ザクザクとしたパイの層の上に、色鮮やかなピンク色の氷の粒が美しく重なる。
続いて凛が取り出したのは、溢れんばかりの純白の生クリームと、黄金色に輝く巨大な果実だった。
「中層には、密林樹海で獲った完熟プレミアムマンゴーの果肉と、ふわふわの特製生クリーム! 最後に、自家製の激ウマ焦がしキャラメルソースを回しかけて……完成だよ〜!」
どーんと眼前にそびえ立ったのは、宝石のように彩られた圧巻のパフェタワー。
あまりの迫力と美しさに、あおいもまひろも口ぐぐっと開けたまま見上げていた。
>スライムニキ:うわあああデカすぎワロタwwww
>名無しの冒険者:50cmは草。もはや建築物だろこれwww
>スイーツマニア:パイ、グラニテ、マンゴー、生クリームの層が美しすぎる……!
>ペンギン太郎:これまでの夏休みの思い出が全部詰まってるパフェだな!
「すごぁい……! 異世界で獲った美味しそうなものが全部入ってるよ〜!」
「ええ、まさに私たちの夏休みの集大成ね。……さああおい、最初のひとすくいを行きなさい!」
「うんっ! いただきまーす!」
あおいはロングスプーンを構えると、タワーの頂点に向かって思い切り突き立てた。
◆
すくい上げたのは、山盛りの生クリームと、トロリと熟したマンゴーの塊。
口の中に放り込んだ瞬間――あおいはスプーンを握りしめたまま、うっとりと目を閉じた。
――『……トロン……シュワッ』
濃厚なミルクのコクが弾ける生クリームと、噛む必要すらないほど柔らかいマンゴーの果汁が混ざり合い、口いっぱいに幸せな甘さが広がっていく。
「んふぅ……っ! 生クリームがすごく軽くて、口の中でシュワって消えちゃう……! マンゴーの濃厚な甘みと合わさって、一口目からほっぺたが落ちそうだよ〜!」
「次は中層のグラニテと一緒に食べてみて」という凛の言葉に促され、今度はスプーンを深く差し込み、ベリーの氷層ごとすくい上げる。
――『シャリッ……ザクッ……!』
「うわっ……! 食感が一変した!」
あおいはパッと目を輝かせた。
「上はふわとろだったのに、下に行くとシャリシャリの氷とサクサクのパイが出てきて全然飽きない! ベリーの甘酸っぱさが生クリームの甘さをキュッと引き締めてくれて、いくらでも食べられちゃう!」
まひろもスプーンを手に取り、静かに一口。
――『……ふふっ』
口に含んだ瞬間、まひろの口元から自然と笑みがこぼれた。
「……ズルいわね、凛。生クリームの甘み、グラニテの冷たさと酸味、そしてパイの香ばしさ……計算され尽くした味のグラニテタワーだわ。この夏にみんなで探索したダンジョンの光景が目に浮かぶみたい……」
三人(と、特製ミニグラスで苺生クリームをペロペロ舐めて「きゅ〜♪」と顔をクリームだらけにするツノっち)は、巨大なパフェを笑顔で突き合いながら、夏休みの思い出を語り合った。
>スライムニキ:あおいちゃんたちの笑顔、本当に最高だな
>名無しの冒険者:観てるこっちまで幸せな気分になるわ
>腹ペコ通りすがり:10万人おめでとう! これからもずっと推し続けるぞ!
◆
「ふはぁーーーーっ! 美味しかったーーーっ! 50センチもあったのに、三人で食べたらあっという間だったね!」
すっかり空になった巨大グラスを前に、あおいは満足そうにお腹をさすった。
そして、カメラに向かってまっすぐな視線を向ける。
「みんな! この夏休み、私たちの配信を観てくれて、応援してくれて、本当にありがとうございました!」
まひろと凛もあおいの隣に並び、カメラに向かって深々と頭を下げた。
「今日から二学期が始まって、学校も忙しくなるけれど……『異世界ごはん配信部』はまだまだ止まりません! これからも美味しいものをたくさん探して、みんなに最高の飯テロをお届けします!」
「ふふ、次の目標は目指せ登録者数五十万人、ね」
「ええ。あおいが部活を作ったあの日のように、これからも突進あるのみよ」
リスナーからの「二学期もついて行くぞ!」「お疲れ様!」「これからも頑張れ!」という温かい祝福コメントが画面を埋め尽くしていく。
「それじゃあみんな、二学期最初の配信、行くよ〜!」
あおいの合図で、三人は弾けるような笑顔で声を揃えた。
「「「ごちそうさまでした! 次回の配信もお楽しみにーーーっ!!」」」
――『ピッ(配信終了)』
ドローンの赤ランプが消え、静かになった部室。
けれど三人の顔には、明さらなる冒険への希望に満ちた眩しい笑顔が咲き誇っていたのだった。




