↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同接3人スタート! 制服姿で異世界配信を始めたら、飯テロで大バズりしました 〜異世界ごはん配信部〜  作者: 原島航平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/36

第16話:柑橘香る極上サクサクから揚げと黄金ローストチキン!

 翌日の放課後。


 あおいたちは部室の魔導冷蔵庫から、一晩特製タレに漬け込んだ『シトラスドードー肉』を取り出していた。


 炭酸水とハーブオイル、そして少量の塩で下処理された肉は、水分をしっかりと蓄えてプリプリと弾力があり、甘酸っぱい爽やかな香りがほのかに漂っている。


「よし! 保冷バッグに肉と調味料、ポータブル調理器具も詰めたよ!」



「ポータブル魔導コンロとフライヤーの魔導バッテリーも満タンよ。現地での調理準備は万全ね」


 部室のポータルを繋ぎ、あおいたちはポータブルコンロやフライヤーを抱えてポータルを潜った。


 転移した先は、中層『新緑の大樹海』の入り口近くに位置する【セーフキャンプ】だ。


 魔物の侵入を防ぐ安全結界が張られたエリアであり、鬱蒼とした森の中で木漏れ日が柔らかく差し込んでいる。


「遅いよあおいちゃん! 待ちくたびれて木の実をかじるところだった!」


 キャンプ地の木陰でソワソワと足踏みをしていたのは、黒を基調としたシンプルな私服姿のカグラだった。


 今日は革鎧を外し、背中の大剣も置いて身軽な装いだが、いつも通り、お腹から「ぐぅぅ〜」と小さく切ない音が鳴っている。


「あはは、ごめんなさいカグラさん! すぐ準備するから待っててね!」


あおいたちは折りたたみ式のキャンピングテーブルとポータブルフライヤーをセットし、宙に浮くポムドローンを起動させた。


「ポムドローン起動! 異世界野外チキンパーティー配信、スタートするよ〜!」


『ポムッ!』


 配信が開始された瞬間、画面上の同時接続者数が目まぐるしい勢いで跳ね上がっていく。


>名無しの冒険者:きたああああ! 待ってたぞ!!

>ガチ勢:今日の舞台はダンジョンキャンプか! 野外飯助かる!

>【古参】スライムニキ(¥10,000):全裸待機完了。昨日のシトラスドードー肉がどう化けたのか見せてみろ

>初見さん:同接一瞬で5万人越えてて草

>カグラ推し:てかカグラ様、私服姿助かりすぎるんだが!?


「みんなー、こんにちは! 異世界ごはん配信部です! 今日は昨日収穫した『シトラスドードー』の極上肉を使って、特製から揚げとローストチキンを作っていくよ〜!」


 あおいがカメラに向かって手を振ると、横で凛が手際よく仕込んでおいた肉を大皿へと並べた。


「まずは……『柑橘香る極上から揚げ』から揚げるね〜」


 凛は一口大に切った肉に、米粉と片栗粉をブレンドした衣を付け、適温に温まったフライヤーの油へと投入した。


――『シュワワワワァァァァッ!!』


 静かな森のセーフキャンプに、油のはじける軽快で心地よい音が響き渡る。


 ポムドローンがフライヤーの真上へと接近し、黄金色の油の中で衣がサクサクとキツネ色に変わっていく映像を超高画質で捉えた。


>名無しの冒険者:あああああ音だけで腹減るwww

>飯テロ被害者:ポムドローン、画質と集音マイクが無駄に良すぎるんだよなぁ!

>名無しの冒険者:カメラの横で生唾飲んでるカグラ様映ってて草


 凛が油から肉を引き揚げる。


「出来上がりか!」


 カグラが思わず前のめりになる。


「まだですよ〜。これから2度揚げで〜す。」


 凛が再び肉を油に泳がせる。


 およそ30秒。


 凛の手によってカラリと引き揚げられたから揚げが、大皿の上に山盛りとなって積み上げられた。


 衣はサクサクの黄金色。


 柑橘とハーブの甘酸っぱい香りが湯気とともに立ち上る。


「続いて、オーブンでじっくり焼いた『黄金ローストチキン』も出来上がりだよ〜!」


 オーブンの扉が開くと、特製ハーブソルトと追い果汁を塗って焼き上げられた骨付き肉が登場した。


 皮目がぱつんと張り、こんがり焦げ目のついたローストチキンから、滴る脂がジュージューと音を立てている。


「ちなみに、今回のお肉がなぜパサつかないのかというと――炭酸水に含まれる二酸化炭素がお肉のタンパク質を解きほぐし、水分と旨味を中に閉じ込めてくれたからよ」


 まひろがドヤ顔でカメラに解説を入れると、コメント欄は「なるほど分からん!」「科学の力すごーい!」と大盛り上がり。


 そして、ついにその時がやってきた。


「「「「いただきます!!」」」」


完成のアナウンスが響いた瞬間、カグラの手が音速で伸び、大皿のから揚げを掴み取った。


フーフーと息を吹きかける間もなく、大きな口でがぶりと噛みつく!


――『カリッ……ジュワァァァァッ!!』


セーフキャンプ全体に、恐ろしいほどの快音が響き渡った。


次の瞬間、カグラはゆっくりと目を閉じると、脱力したようにうっとりと頬に手を当てた。


「……はぁぁぁ……なにこれ、凄すぎる……」


 いつも凛々しいトップ配信者の口から、ふにゃりと解けたような吐息が漏れる。


 琥珀色の瞳はうっすらと潤み、至福の余韻を味わうように静かに咀嚼を続けた。


「カグラさん……!?」


「驚いたよ……衣が驚くほど軽やかで、一噛みごとに熱々の肉汁がジュワッと溢れ出してくる。なのにしつこさが全くない……! 鳥肉そのものから広がる柑橘とハーブの爽やかな風味が、油の重たさを魔法みたいに消し去っているんだ……!」


 カグラはうっとりとした表情のまま、吸い寄せられるように二個目、三個目のから揚げへと手を伸ばした。


「美味い……美味すぎるよ。噛むたびに幸せな香りが鼻を抜けていく……!」


 あおいと凛、まひろも出来立てのから揚げを口へと運ぶ。


――『サクッ……ジュワァッ!』

「んんん〜〜〜っ! 美味しいーーーっ!」


「うん……炭酸水のおかげでお肉がすごく柔らかいね〜。レモンをかけてないのに、爽やかな風味がついてて最高だよ〜」


「脂の旨味と柑橘の酸味のバランスが完璧ね……! これ、何個でもいけるわ!」


 続いてカグラは、骨付きの黄金ローストチキンを掴み、豪快にかぶりついた。


 皮目がバリッと破け、濃密な肉汁が顎を伝って滴り落ちる。


「んむっ! 炙った皮の香ばしさと、溢れ出る肉の旨味がたまらない……! 凛ちゃん、おかわり!! から揚げもチキンも全部だ!!」


 あおいたちが極上チキンの美味しさに歓声を上げる横で、キャンピングチェアの上にちょこんと座ったツノっちもまた、『特製・蒸しシトラスチキン』食べ、至福の時間を過ごしていた。


>名無しの冒険者:カリッて音やばすぎだろwwww

>ガチ勢:カグラ様が一瞬でメロメロになってて草

>名無しの冒険者:後ろでハフハフチキン食べてるツノっち可愛すぎかよ!

>【古参】スライムニキ(¥50,000):赤スパ送るからそのから揚げを画面越しに送ってください

>初見さん:音と映像の暴力で草。今すぐコンビニのチキン買いに走るわ

>名無しの冒険者:【吉報】同接9万人突破!!!


コメント欄は絶賛の声と高額スパチャ(赤スパ)の雨嵐で埋め尽くされ、同時接続者数はチャンネル史上最高記録となる【95,000人】を突破した!


◆


「ふぅ……食べた……満腹だ……」


 大皿に山盛りだったから揚げとローストチキンは、カグラの掃除機のような食べっぷりによって見事に綺麗サッパリ完食された。


 お腹をさすり、心底幸せそうな表情を浮かべるカグラ。

「本当に素晴らしい鶏肉料理だったよ。あおいちゃん、凛ちゃん、まひろちゃん……またいつでも仕入れに付き合うから、私を呼んでおくれ」


「ふふ、もちろんです! カグラさん、今日もありがとうございました!」


 ポムドローンに向かって手を振り、大盛況のうちに配信を終了させたあおいたち。


 ポータルを通って部室へと戻り、片付けを終えると、あおいは満足感いっぱいに背伸びをした。


「はぁ〜! 今日の配信も大成功だったね!」


「ええ。同接も最高記録を更新したし、スパチャの収益も凄まじいことになっているわ」


「ふふ、シトラスドードーのお肉、本当に美味しかったね〜」


夕暮れの部室。


 放課後のチャイムが遠くで鳴り響く中、あおいたちは顔を見合わせて笑い合った。


「次はどんな異世界食材を狩りに行こうか、凛ちゃん、まひろちゃん!」


 異世界ごはん配信部の、美味しさとロマンに満ちた冒険は、まだまだどこまでも続いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。