表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あすかの幸せについて  作者: こうた
第13章 定義された日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/141

第8話 静かな確信

確信というものは、劇的な瞬間ではなく、


気づけばそこにある状態として訪れる。



---


十月。



---


空気が少し乾き始める季節。



---


あすかはいつも通り「人生の交差点」に立っていた。



---


カラン。



---


扉が開く。



---


顔を上げる。



---


朝比奈だった。



---


もう「来た」という事実に動揺しない。



---


ただ、少しだけ安心する。



---


「こんばんは」



---


「こんばんは」



---


それだけで十分な関係。



---



---


朝比奈は席に座る。



---


グラスが置かれる。



---


氷の音が小さく鳴る。



---



---


少しの沈黙。



---


しかしそれは、


空白ではない。



---


満たされた沈黙だった。



---



---


朝比奈が言う。



---


「最近、思うんですけど」



---


あすかは視線を向ける。



---


「何ですか」



---



---


朝比奈は少しだけ笑う。



---


「もう、不安がほとんどないなって」



---



---


あすかは少しだけ驚く。



---


そして静かにうなずく。



---


「私もです」



---



---


それは確認ではなく、


共有だった。



---



---


朝比奈は続ける。



---


「最初は、ちゃんと好きでいられるかとか」



---


「続くのかとか」



---



---


少し間。



---



---


「そういうの、考えてました」



---



---


あすかは静かに聞いている。



---



---


そして言う。



---


「今は、考えてないです」



---



---


朝比奈は少し笑う。



---


「同じです」



---



---


沈黙。



---


でもその沈黙は、


揺れのない水面のようだった。



---



---


あすかは思う。



---


この関係には、


もう“確認作業”がいらない。



---



---


好きかどうかを疑わない。



---


一緒にいる理由を探さない。



---



---


それでも続いている。



---



---


それは、


静かな確信だった。



---



---


朝比奈がグラスを置く。



---


「ここ、好きです」



---


あすかは少しだけ笑う。



---


「知ってます」



---



---


朝比奈も笑う。



---


「伝わってるんですね」



---



---


あすかはうなずく。



---


「たぶん、全部じゃないですけど」



---



---


朝比奈は少しだけ目を細める。



---


「それで十分です」



---



---


夜が更ける。



---


店は静かだ。



---



---


あすかは思う。



---


この人といる時間は、


説明がいらない。



---



---


そして、


疑いもいらない。



---



---


それが今の自分にとって、


一番大きな変化だった。



---



---


朝比奈が立ち上がる。



---


「帰ります」



---


あすかはうなずく。



---


「はい」



---



---


扉の前。



---


朝比奈は一度だけ振り返る。



---


そして言う。



---


「また明日」



---



---


あすかは少しだけ笑う。



---


「はい」



---



---


カラン。



---


扉が閉まる。



---



---


静けさ。



---


でも孤独ではない。



---



---


あすかは思う。



---


私は今、


この関係を疑っていない。



---



---


それは、


かつての自分にはなかった感覚だった。



---



---


そしてそれは、


確かに幸せの形のひとつだった。



---



---


(第13章 第9話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ