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ただのアニオタだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます ~逃げても離してくれない彼女たち~ ―雲乃伊戸女子高校の美山サキの場合―  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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お食事会!!

「――リリーはそんなあなたを許さないのだわ!」


 リリーの衣装を纏った優花里さんが、人指し指をこちらに向けて、アニメでお馴染みの決め台詞を完璧な口調で言い放った。


「く〜〜っ!!」


 その瞬間、わたしの脳内回路は完全にショートした。

 オーバーヒートどころの騒ぎじゃない。

 目の前には、三次元に降臨した推しのリリー。

 そのリリーそっくりの恋人に、至近距離でそんな最高の手向け(台詞)をぶつけられて、平静を保てるオタクがこの世にいるだろうか?

 

 いや、断じていない!(倒置法)


 気づけば、わたしは数学のワークを放り出し、衝動のままに優花里さんをソファへ押し倒していた。


「あら……サキがこんなに積極的なのは、初めてね」


 仰向けになった優花里さんは、驚きに目を見開きつつも、どこか嬉しそうに、リリーの格好のまま慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。


「優花里さんが悪いんですよ〜! その格好で、リリーの決め台詞なんか言われた日には、わたしの気持ちが大爆発ですってば〜!」


 わたしは押し倒した勢いのまま、彼女の唇を奪った。

 深く、熱く、甘いキス。 そのまま彼女の細い体をギュッと抱きしめる。


(あぁ……今わたしは、リリーと唇を重ねて、抱きしめている……何この、人生最高のシチュエーション!?)


 リリーの衣装のフリルの質感、優花里さんの体温、鼓動。すべてが夢のようで、あまりに幸せすぎて、罰が当たるんじゃないかと怖くなるほどだ。


 しばらくそのままで、至福の時間を噛み締めていたけれど……。


「――さあ、サキ。感情の爆発も落ち着いたところで、勉強の続きをしましょうね」


 不意に、優花里さんの声がいつもの落ち着いたトーンに戻り、スッと背筋を伸ばされた。


「わわ……っ!」


 急に冷静さが戻ってくる。 わたしは……わたしは、日本を代表するお嬢様である優花里さんを、衝動的に押し倒して、キスをして、抱きついていた……。

(な、なんちゅうことを……わたしは、なんちゅうことを……!)


 顔が火を噴くほど熱くなるのを自覚しながら、慌てて体を離す。

 優花里さんは、少しだけ顔を赤らめつつも、乱れた髪を直すと、何事もなかったかのように再びペンを取った。


「……さあ、この問題の公式だけど。リリーの魔法のように、複雑に見えても基礎がしっかりしていれば解けるわ」


 やっぱり彼女は教えるのが上手い人だった。

 リリー姿の彼女から放たれる分かりやすい解説は、オーバーヒートしていたわたしの脳にもすっと浸透し、霧が晴れるように理解できていった。

 

 羞恥心と幸福感、そして勉強への集中。わたしの心臓は、この夜、休まる暇もなさそうだった。


 ある程度勉強も進み、難解な数式と格闘していたころ、インターホンからさなさんの落ち着いた声が流れてきた。


「優花里お嬢様、夕食の支度が整いました。食堂へいらしてください」


「分かったわ。サキ、夕食に行きましょう」


 リリーの姿をした優花里さんが、優雅な所作でわたしに右手を差し出してきた。

 勉強の疲れと、目の前の「完璧なリリー」の美しさに当てられて、わたしの脳はすっかり思考停止していた。


「――はい、リリー様……はっ!しまった!」


 つい、そんな言葉が口を突いて出た。

 多分、今のわたしの目には大きなハートマークが浮かんでいるに違いない。


 そのままリリー様(!)に手を引かれるようにエレベーターに乗り、二階へ。


 食堂の扉が開くと、そこにはメイドカフェ風の制服に身を包んだ美しきメイドさんたちが整列していた。


「うわぁ……! すごいよ!こんな豪華な食事、昔家族で行った温泉旅館以来だよ……!」


 てっきりフルコースのフランス料理が並んでいるのかと思いきや、テーブルに並んでいたのは彩り豊かな和食だった。


「意外かしら? でも、毎日いただくものだと、どうしても和食が多くなるのよ」


 聞けば、今日の夕食はわたしが来る前に優花里さんが下ごしらえをしておいてくれたのだという。


 仕上げは三人のメイドさんたちが手分けしてくれたらしい。


(みんなすごいな……ここのメイドさんたちなら、将来いいお嫁さんになるんだろうなぁ。食べる専門のわたしには縁のない話だけど……。あ、でも優花里さんが奥さんになったら、毎日彼女の手料理が……)


 いかん、妄想が進んでついニヤけてしまった。 でも、もし裸エプロンのリリー姿でキッチンに立つ優花里さんがいたら、わたしの理性は今度こそ木っ端微塵になるだろう。それほどまでに、今の彼女の「リリー姿」は破壊力抜群なのだ。いや、考えがもうおっさんだよ!何考えてるんだ、わたし!!


 着席し、メイドさんたちがテキパキと給仕を始めてくれる。ふと、わたしは思い切って口を開いた。


「あの……優花里さん」


「なあに、サキ」


「無理だったらいいんですけど……さなさん、あやさん、はるみさんたちも、一緒にお食事するのは無理でしょうか?」


 優花里さんは少し意外そうに目を丸くした。

「そうね……ただ、彼女たちは給仕をしてくれるから、席を外すと料理が滞ってしまうわ」


「いつも、皆さんはどこでお食事を?」


「給仕が終わってから、厨房の隣の準備室でいただいております。基本的な献立は優花里お嬢様と同じものです」 さなさんが丁寧に答えてくれた。


「それなら、みんなで食べませんか? 給仕なら、わたしもやりますから!」


「そんな! お客様であるサキ様にお任せするなんて……!」


 戸惑うメイドさんたちに、優花里さんが穏やかに微笑みかけた。


「さなさん、サキがああ言っているのだから。あやさんも、はるみさんも、今日は一緒に食事をしましょう。……サキ、あなたは本当に優しい子ね」


「いえ、やっぱり食事は賑やかに食べるほうが楽しいですから」


「……確かにそうね。わたしはお父様やお母様、優紀子お姉様(優魅も)と食べる時以外は、ここで一人で食べているから。これからはみんなで囲むのもいいかもしれないわね」


「サキ様、ありがとうございます!」

 三人が揃って深く頭を下げる。


「いえいえ! わたしが皆さんとお話ししながら食べたいだけですから!」


「サキ。そうやって自然に周りに気を配れるところ、わたしにはまだまだ足りていないわ。気がついたらいつでも教えてね」


 憧れの、そして完璧だと思っていた優花里さんにそんな風に言われるなんて。


 恐縮しつつも、温かな光に包まれたような不思議な多幸感の中で、賑やかな夕食会が始まった。

サキの提案で和やかな食事が始まりました。

私も好きなアニメキャラやメイドさんと食事してみたいです。

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