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ただのアニオタだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます ~逃げても離してくれない彼女たち~ ―雲乃伊戸女子高校の美山サキの場合―  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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降臨!!

ついに、待ちに待った土曜日がやってきた!


 昨晩も優花里さんからは「明日が待ち遠しいわ」という、文字からでもウキウキ加減が伝わってくるRINEが届いていた。メイドさんたちも、おもてなしの準備に余念がないそうだ。


「お姉〜起きなよ〜!」


「ん……もう、美嘉〜まだ7時じゃん、優花里さんは9時に来るのに〜」


「その優花里さんが、もう下に来てるんだよ〜!」


「えっ?嘘!」


 わたしは跳ね起きた。

 枕元のスマホで予定をを確認したが、約束は確かに9時。

 わたしの間違いではない。


 もしかして、急用か何かトラブルでもあったんだろうか?え〜?!


 眠気も一気に吹き飛び、パジャマのまま急いで一階へ駆け降りると、そこには優雅にコーヒーを片手に、うちの両親と談笑する優花里さんの姿があった。


「あ、サキ。おはよう。……ふふ、楽しみで昨夜はあまり眠れなくて。つい早く来すぎてしまったわ」


 いや、「つい」で2時間前は早すぎますよ、優花里さん!


 そんなに楽しみにしてくれたのは心底嬉しいけれど、彼女の行動力は時々、わたしの想像の斜め上をいく。


「サキ、またこんなに伊藤さんから立派なお土産をいただいたわよ」


「いつもすみませ……え、え〜っ!」


 両親が恐縮して頭を下げている。もう、うちの両親は完全に高級スイーツと彼女の礼儀正しさに釣られている気がする。しかもどれだけあるんだよ……

 おい、美嘉!もう開けて食ってるんじゃない!

 

 まあ、わたしも喜んでついて行くからいいんだけど。


 一旦2階に上がり、着替えたわたしが朝食を摂ろうとすると、優花里さんは「わたしがやるわ」と、かいがいしくお皿を並べたり準備を手伝ってくれた。


(日本を代表するお嬢様に、朝ごはんの準備をさせる一般市民のわたし……。これがバレたら全校生徒に消されるんじゃ……)


 結果、食事を済ませ、予定よりもかなり早めに家を出ることになった。


 優花里さんはいつものように家族へ丁寧に挨拶をして門を出る。

 今日は目立たない方の車だと言っていたけれど、それでも十分高級な車に乗り込み、車が静かに走り出した。


 運転席との仕切りがカチリと閉まった、その直後だった。


「サキ……っ!」


 優花里さんが、壊れ物を扱うような、けれど拒絶を許さない強さでわたしに抱きついてきた。


「毎日校門であなたを見るたびに……こうやってあなたを抱きしめることばかり考えていたわ。ようやく、誰にも邪魔されない時間が手に入ったのね」


 潤んだ瞳でわたしを見つめる彼女の声は、少しだけ震えていた。


「サキ、明日まで、あなたを絶対に離さないわ」


 そう囁かれ、唇を重ねられる。


 平日の朝、鏡子ちゃんに隣を譲り、一歩後ろで耐え忍んでいた彼女の独占欲が、今この密室で一気に溢れ出していた。


 わたしは、こんなにも綺麗な人に心から慕われている幸せを噛み締めながら、優花里さんの細くてしなやかな身体を、精一杯抱きしめ返した。


 車は伊藤家の広大な敷地に入り、優花里さんの居住棟である「優花里棟」のロビーに滑り込む。


 車を降りた瞬間、はるみさんが飛んできて、弾んだ顔でわたしの手を取ってくれた。


「サキ様〜お待ちしておりました!」


 そして、さなさん、あやさんも加わった三人が、改めて完璧な角度で深く頭を下げる。


「お帰りなさいませ、サキお嬢様!」


(ひゃああ……! もうここ、メイドカフェ『優花里』だよ。レベル高すぎるよ……!)


 まだ二回目の訪問なのに、この圧倒的なホーム感。

 三人の温かい眼差しと優花里さんの心遣いが、なんだか優花里さんに1週間、我慢を強いて悪いことをしていたという、申し訳なかった心を溶かしてくれるみたいで、胸の奥がじんわりと熱くなる。


 優花里さんと共にエレベーターに乗り込み、三階へ。


 「荷物は自分で持ちます!」と言い張ったけれど、「お客様にそんなことはさせられませんわ」とはるみさんに笑顔で固辞され、結局お任せすることになった。


 はるみさんが荷物を運んでエレベーターの向こうへ消えた、その刹那。

静寂に包まれた部屋の中、優花里さんが吸い寄せられるように歩み寄ってきた。


「サキ……」


 ギュッと、折れそうなほど強く抱きしめられる。

 重なる唇。さっき車の中で交わしたばかりなのに、彼女の熱は少しも冷めていない。

 こうして抱きしめ合い、キスを重ねていると、不思議と心が凪いでいくのを感じる。


 学校中が憧れる、あの高嶺の華を独占している贅沢。

 オタクのわたしが、どうしてこんな運命の渦中にいるんだろう……なんて、柄にもないことを考えてしまう。


「サキ……また、これに着替えてくれるかしら?」


 唇を離した彼女が、楽しそうに畳んだ服を差し出してきた。


「あ、はい……」


(出たよ! もうこれ優花里邸専用のわたしの「制服」だよ!)


 以前着せられた、あの気合の入りすぎたメイドさんの衣装だ。


 わたしは苦笑しながらも、「わかりました。着替えてきますね」と承諾し、豪華なクローゼットへと入った。


 数分後。


 慣れない手つきで着替えを終えたわたし。


 でもこのメイド服、よくよく見たらフランスのあのハイブランドのタグがついてるよ。

 どうりで布地の肌触りが違ったんだよ、この前は焦ってて気が付かなかったけど。

 あのブランドがこんなメイド服なんて作らないだろうから、特注なんだろうな……     

 そのブランドにこういう服を作らせるのって、世界中で優花里さんしかいないんだろうな……


 そして、鏡の前で深呼吸してから扉を開ける。


「優花里さん、お待たせしまし――って、えええ〜っ!?」


 そこには、わたしの想像を絶する光景が広がっていた。

 クローゼットの扉を開けた瞬間、私の思考はホワイトアウトした。


「……え?」


 そこに立っていたのは、優花里さんであって、優花里さんではなかった。


 アニメ『リリー』の世界から、そのまま次元の壁を突き破って現れたかのような、寸分違わぬ「リリー」そのものがそこに立っていたのだ。


「リリー……さん!そ、それ……どうしたんですか!?」


 あまりの完成度に、語彙力が霧散して叫んでしまう。


 優花里さんは、衣装の裾を少しだけ持ち上げ、頬を朱に染めてはにかんだ。


「ふふ、さなさんがこういうお裁縫事がとても上手なの。それで彼女に教えてもらいながら、二人で夜な夜な縫い上げたのよ。最初はメイドたちやサキとお揃いの衣装にしようかとも思ったのだけれど……。メイドたちから、わたしにはこれが似合うと強く勧められて。……似合うかしら?」


 もう「似合う」なんてレベルじゃない。

「いや……! 本物かと思いましたよ!! アニメのリリーが3D化して現世に降臨したら、間違いなくこうなるだろうっていう完璧なクオリティです!!」


 尊い……あまりの神々しさに、文字通り鼻血が噴き出しそうになる。


 わたしは震える手でスマホを掴み取った。


「写真、撮っていいですか!? いや、嫌って言われても撮りますけど! むしろ撮らせてください、お願いします!」


「あら……。そんなに喜んでいただけるなんて、頑張って作った甲斐があったわ!」


 優花里さんの控えめな快諾を得るやいなや、わたしはシャッター音の嵐を巻き起こした。


 連写、パノラマ、動画モード。あらゆる角度から、奇跡の三次元リリーを記録していく。


 アニオタとしての究極の幸せが、今、目の前にある。

 推しキャラが、愛する恋人の姿を借りて目の前に現れる。これ以上の多幸感が、この世のどこにあるというのか。


「あああ、最高です……尊いです……生きててよかった……リアルリリーがこの目で見られるなんて」


 わたしはスマホを構えたまま、優花里さんのあまりの美しさと、自分に向けられる慈愛に満ちた眼差しに、ただただ圧倒されていた。


 これからの二日間、この「聖域」でどんな奇跡が続くのか。


 わたしは確信した。この週末は、私の人生において最も濃密で、最も「尊い」時間になるということを。

サキにとって夢の様な時間?が始まりました。

これからどんな事が待っているのでしょうか?

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