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ただのアニオタだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます ~逃げても離してくれない彼女たち~ ―雲乃伊戸女子高校の美山サキの場合―  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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愛の応酬!?

「あ、あの女ーー!!」


 一人残された校門で、優花里は握りしめた拳を震わせていた。

 視界に焼き付いたのは、サキの唇を強引に奪い、勝ち誇ったような冷たい視線を向けてきた後藤鏡子の顔。


 「わたしの前でサキを! サキをーーっ!!」


 ふざけないで!!


 沸騰するような怒りが、優雅な仮面の下で煮えくり返る。


 サキはわたしだけの、唯一無二の恋人。

 昨日、わたしの部屋で、あの特別な空間で、互いの熱を確かめ合ったばかりなのに。


「ただ幼馴染として長くいただけの女のくせに……!!」


 サキの気持ちは、わたしに対しての方がよっぽど強いはず。


 始業式の日、あんなに愛おしそうに私を抱きしめてくれたサキ。

 寂しいと泣いた私を優しく慰めてくれたサキ。


 それなのに、あの子はサキの優しさを、あの壊れそうな脆さを利用して、無理やり繋ぎ止めている。


 昨日は、サキが親友との関係に悩んでいるから、純粋に助けたくて助言をした。

 それなのに、彼女はその優しさを逆手に取って、あんな卑劣な真似をして見せつけるなんて!


 「あの女は許さない、絶対に許さない!!」


 サキは、わたしだけのもの。

 誰にも、一ミリだって譲るつもりはない。


 たとえそれが、十年以上の月日を共にした幼馴染であっても。

 「許さないわ、あの女……。サキ、すぐにその唇を、わたしが綺麗に『消毒』してあげるから……!」


 優花里の瞳から、いつもの理知的な光が消え、代わりにどす黒い執着の炎が宿る。


 彼女はスマホを取り出すと、震える指先でサキへのメッセージを打ち込んだ。

 それは風紀委員長としての命令ではなく、一人の狂おしいほどに嫉妬に狂った女としての、最後通牒だった。


 ホームルームの最中、スマホが短く震えた。

 画面を覗くと、案の定、優花里さんからのRINE。

 恐る恐る画面を見ると……


 『放課後、生徒会室へ来なさい。今日の終礼後に校内放送で呼び出します』


 (ひいいいっ! 放送で呼び出しー!?)


 優花里さんがここまで強硬手段に出るなんて、相当、いや、天文学的なレベルで怒っている。

 校門での鏡子ちゃんの暴走を思い出して、わたしの背中に冷たい汗が流れた。


 そして、終礼のチャイムが鳴り響くと同時に黒板の上のスピーカーから、校内放送のメロディーが流れた。


『1年B組、美山サキさん。至急、生徒会室まで来てください』


 静かな、けれど有無を言わさない優花里さんの声が全校に響き渡った。


「え、美山さん、何したの?」


「風紀委員長から直々の呼び出しなんて……」


 ざわつくクラスメイトたち。斜め前の席では、鏡子ちゃんが獲物を離さない蛇のような鋭い目でわたしを射抜いていた。


 生徒会室に向かおうとするわたしに鏡子ちゃんが近づいてきた。


「サキちゃん、急に呼び出されるなんて心配だよ。わたしもついていくよ!」


「えっ、鏡子ちゃん、それは……!」


 止める間もなく、わたしの腕には鏡子ちゃんの細い腕が「専用」と言わんばかりの力で絡みついてきた。


 逃げ場のないまま、引きずられるように生徒会室へ。


 重厚な扉をノックすると、「どうぞ」と冷徹な声が響いた。


 室内へ入ると、デスクに座っていた優花里さんがゆっくりと立ち上がり、こちらへ近づいてくる。


(ひっ……!)


 見たこともないほど冷え切った、絶対零度の瞳。


 けれど、彼女の視線が突き刺さったのは、わたしの隣で勝ち誇ったように腕を組む鏡子ちゃんだった。


 「後藤さん。……あなた、校門であんな破廉恥な真似をして、我が校の生徒として、ふしだらだとは思わないんですか?」


 地を這うような低い声。


 「ふしだら? 心外ですね。わたしはサキちゃんとの『スキンシップ』のつもりだったんですよ。それが何か?」

 鏡子ちゃんも一歩も引かない。


 (ええっ!? あれがスキンシップ!?あまりに 濃すぎるよ、鏡子ちゃん!)


 わたしの心の中のツッコミを無視して、優花里さんの口角が不敵に上がった。


「そう。……あれがあなたの言う『スキンシップ』なのね。よく分かったわ」


 次の瞬間、優花里さんの白い指先がわたしの両頬をそっと包み込んだ。


「え……?」


 逃げる暇も、考える暇もなかった。

 視界いっぱいに優花里さんの美しい顔が迫り――。

 わたしの唇に、鏡子ちゃんの時とは比べものにならないほど、深く、情熱的な熱が重なった。


「――んっ!?」


 目の前で固まる鏡子ちゃん。

 パニックで思考が停止するわたし。


 「んんっ……! ゆ、優花里さん、何を……!?」


 唇に走った熱い衝撃に、わたしの心臓はバク転をしそうなほど跳ね上がった。


 優花里さんは、わたしの両頬を包んでいた手をゆっくりと離すと、氷のような微笑みを浮かべて鏡子ちゃんを見据えた。


「わたしも、美山さんと『スキンシップ』を取ったのよ。後藤さん、何かあるかしら?」


「ど、どうしてあなたが、サキちゃんとスキンシップを取る必要があるんですか!?」


 鏡子ちゃんの声が、怒りと困惑で裏返る。対する優花里さんは、勝ち誇ったように眉を上げた。

 「あら? 後藤さんは知らなかったのかしら。わたしとサキは――」


「ゆ、優花里先輩! 鏡子ちゃんも!冷静になってください!!」


 心臓が口から飛び出しそうだった。このままでは、ここで「付き合っている」とバラされてしまう。

 そうなれば、鏡子ちゃんは間違いなく爆発して、この生徒会室は瓦礫の山になるに違いない。


 わたしの悲鳴に近い制止の言葉に、優花里さんはハッとしたように表情を戻した。

 

 鏡子ちゃんも、わたしの尋常じゃない様子に呆気にとられている。


 「ごめんなさい! 失礼します!!」


 わたしはこの空気に耐えきれず、二人を置いたまま生徒会室を飛び出した。


 後ろから「サキちゃん!」「待ちなさい、サキ!」と二人分の呼び止める声が聞こえたけれど、振り返る余裕なんて一ミリもなかった。


「なんでだよ!もうやだよ!あの空気、耐えられないよ!」


今度は優花里が強硬手段に。

間に挟まれたサキはどこに向かうのか?

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