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ただのアニオタだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます ~逃げても離してくれない彼女たち~ ―雲乃伊戸女子高校の美山サキの場合―  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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恋人と親友って?

 家に近づくにつれ、黒い瘴気は視覚化できるほどに濃くなっていった。

 その正体は、もちろん一人しかいない。


 家の前に黒い瘴気を纏った誰かが立ち、わたしに向かって手を振っている。

 その人物を中心に瘴気が溢れ出している。

 まるでダンジョンの一番奥に鎮座するラスボスのようだ。


 わたしは恐る恐るその黒い人影に、近づいて行った。


「あ、サキちゃん、遅かったね? どこか寄ってたのかな?」


 にっこりと、しかし瞳の奥が一切笑っていない鏡子ちゃんがそこにいた。


「あ、鏡子ちゃん、うちに来てたんだ。ちょ、ちょっと買い物に行ってて……」


「お買い物なら、一度家に帰ってから連絡をくれても良かったんじゃないのかな?」


「ほ、ほら、アニメートで今日限定のアクスタが出たからさ、家に帰ってる間に売り切れになったら困るし……!」


 咄嗟に出た嘘に、鏡子ちゃんは一歩詰め寄る。


「サキちゃんがアニメのグッズを好きなのは知ってるけど、それなら連絡が欲しかったな。……並んでる間にでも」


「ご、ごめんね。わたしも焦って並んだからさ……並んでる間にbアニメストアで配信見てて、夢中になってたからさ」


「連絡をくれたら、わたしも向かったのに。……ねえ、サキちゃん。事故とかには遭ってないよね?」

(連絡してたら、やっぱり来るつもりだったのかよ! 変に言い訳で、拾い画像のアニメートの写真を送らなくてよかった……!)


「も、もちろん! 事故なんかには遭ってないし、ほ、ほら、ピンピンしてるでしょ?大丈夫だよ!」


 両手をバタバタさせながら言う、わたしの言葉に、鏡子ちゃんの声が一段と低くなった。


「事故……。事故って、乗り物だけじゃないんだよ……」


「へ?それってどういうこと?」


「サキちゃんを奪おうとする泥棒猫に出会うのも、事故みたいなものなんだよ。……例えば、伊藤先輩みたいな泥棒猫とか」

 心臓が跳ね上がった。


 しかし、彼女の名前を出された瞬間、わたしのこれまでの我慢は限界を迎えた。


「ちょっと待ってよ、鏡子ちゃん!! 流石にその言い方はあの人に失礼なんじゃないかな? あの人が何をしたっていうんだよ! 鏡子ちゃんのあの人が何か酷いことでもしたの?それに、鏡子ちゃんは、わたしの親友なんでしょ!? どうしてわたしの好きに動かさせてくれないの?わたしだって高校生なんだよ!自分の好きに動いてどこが悪いの? ――わたし、すごく悲しいよ!わたしってあなたの一体何なの!?なんで親友にそこまで管理されないといけないのよ?!」


「サキちゃん……」


 鏡子ちゃんの顔から、一瞬にして表情が消えた。


 確かに、優花里さんに親友を取られるかもという不安は分かる。


 でも、わたしは恋人としての優花里さんも、親友としての鏡子ちゃんも、二人とも大切で失いたくないんだ!


 だから二人の間に立ってどちらも傷付けたくなくて……確かに嘘をついたのはわたしだ、でもそれは二人が衝突しない様にするためなのに!


 それなのに、どうして……?あの人をそんなに悪く言うの?

 恋人がいて、親友もいるって、それって普通じゃないの?

 恋人と親友って、両立できるんじゃないの?


 脳裏に、さっき見た優花里さんの泣き顔が浮かんだ。

 彼女はあんなに優しく、わたしの嘘さえも受け止めて、わたしを守ってくれたのに……

 でも、今目の前にいる親友は、わたしを信用しようとせず、わたしが恋人と会うことを、制限しようと行動全てを束縛してくる。


「鏡子ちゃん、心配して家まで来てくれてありがとう。また明日ね」


 わたしは震える声でそう告げると、彼女を押しのけて、家の中に駆け込んだ。


 いつもなら絶対に離してくれないはずの彼女の体が、驚くほど簡単に、力なく後ろへ下がっていくのがわかった。


「サキちゃんっ!ちょっと待って!」


 ドアの向こうから、悲痛な彼女の声が聞こえる。


「さよなら、またね」


 わたしは別れの挨拶を言うと、それ以上何も聞きたくなくて、玄関に鍵をかけ、耳を塞いだまま二階の自室へ駆け上がった。


 耳を塞いでいても、それでも鏡子ちゃんの声が聞こえた……気がした。


 その夜、鏡子ちゃんからのRINEは一通も届かなかった。


 あんなに執拗だった通知音が止まった部屋は、不気味なほどに静まり返っていた。



 そして翌朝。

 朝、家に来ず、駅にも現れず、登校したわたしの目に飛び込んできたのは、鏡子ちゃんの空席だった。


 彼女は、学校を休んでいたのだった。

とうとう鏡子に切れてしまったサキ。

そのショックなのか、学校を休んでしまった鏡子。

二人の友情はどうなるのでしょうか?

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