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ただのアニオタだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます ~逃げても離してくれない彼女たち~ ―雲乃伊戸女子高校の美山サキの場合―  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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わたし何やってるんだろ……?

 「あ、あの……サキ。よ、よかったら、一緒に帰れないかしら……?」


 「うっ!可愛い……」


 俯き加減に、もじもじしながらの「可愛いおねだり」。朝の凛々しい委員長とのギャップに、わたしの心は撃ち抜かれた。


 「はい! 喜んで!」(鏡子ちゃん、ごめんね。でも優花里さんはわたしの彼女なんだよ)


 校門を出るまでは、別々に昇降口を出たわたし達。

 鏡子ちゃんに言われた通り、ちゃんとダッシュをして校門へ。


 そして校門を出て数分、人目を避けた場所で待機していた黒塗りのリムジンに滑り込む。

 ドアが閉まった瞬間、優花里さんが愛おしそうに微笑んだ。


「サキ、会いたかったわ。別荘の時以来ね」


「はい、優花里さん。今朝は本当にありがとうございました!でもあの後だったのに大丈夫でしたか?」


「いいのよ。サキのためならわたしは何でもしてあげるわ。……実はね、今日はバスケ部の絵麻に頼んで、後藤さんを呼んでもらったのよ」


「えっ!? 仕込みだったんですか!?」


 これまで一歩引いていた優花里さんの策に驚愕する。

 本格的に授業が始まれば、こうして二人きりの時間を作るのも難しくなる。

 彼女の「本気」が伝わってきて、わたしはたまらず彼女を抱きしめた。


「優花里さん、大好きです!」


 抱きしめ合いながら互いの熱を確かめ合う。幸せな吐息を漏らす彼女が、ふと真面目な顔で提案してきた。


「サキ、一度うちにも寄って欲しいのだけれど……。自宅はわたし専用の建物だから、優魅と顔を合わせることもないわ」


「……別棟? 敷地内に建物がいくつもあるって事……?」


 案内された伊藤家は、門自体がすでにうちより大きかった……わたし門に住んでるの……

 しかも警備員さんの詰所まであるよ。

 もはや「家」という概念を超越してお城のようだった。

 広大な森のような庭園を走り抜け、辿り着いたのはホテルと見紛うばかりの三階建ての建物が。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 出迎えてくれた3人のメイドさんたちの制服を見て、わたしは思わず二度見した。


「……優花里さん、これ、秋葉原のメイドカフェの制服じゃ!?」


「ええ、サキと行った時に気に入って採用したのよ」


 で、でも普通のメイドさんと、メイドカフェのメイドさんとは似て非なるものなんですけど……


 この制服メイドさん達、嫌じゃなかったのかな?みんな可愛いからいいんだろうけど。いや、いいのか?といらぬ心配をしてしまった。


 ホテルのようなロビーを抜け、5,6人はゆうに乗れそうなエレベーターで三階へ上がると、そこには豪華絢爛なプライベートルームが広がっていた。天蓋付きのベッド、社長室の様な重厚なデスク……そしてその一角には、場違いなほどの存在感を放つ秋葉原の戦利品たち。


「この部屋にフィギュアとポスター……違和感がすごいよぉ〜!」


 壁には特大のモニターが鎮座している。これでアニメを見たら、推しキャラが等身大、いやそれ以上の迫力で迫ってくるに違いない。


「サキ、ゆっくりしていってね。ここは誰にも邪魔されない、わたしたちだけの場所よ」


「はえ〜、ご両親や優魅ちゃんやお姉さまは?」


「両親は同じ棟に住んでいるけれど、優紀子お姉様や優魅は、それぞれ別の建物に住んでるわ」


「えっ?建物が別?」


「そうよ、といっても同じ敷地内にあるけれど」

 聞くたびに、驚くべき伊藤家の規模感だ。


「え?優花里さん、それは!!」


 優雅に微笑む優花里さんの背後で、等身大(!)のリリーがこちらを見つめている。

(これ何百万もするやつだよ!!)


「誰がこんな高いの買うのかと思ってたけど、目の前にいたよ……」


 あまりの浮世離れした光景に、わたしは気が遠くなりそうだった。


「そ、それと……サキに一つお願いがあるのだけれど……」


 優花里さんが、指先を弄びながらもじもじと上目遣いでこちらを見てくる。あの凛々しい風紀委員長が、わたしの前でだけ見せるこの「弱気な美少女」モード。


 朝の借りを返したい一心だったわたしは、勢いよく右拳で胸を叩いた。


「今朝は本当に助けてもらいましたし、わたしに出来ることなら何でも聞きますよ!」


「本当に?! いいの?」


「あ、は、はい。わたしに出来ること……なら、ですが」


「サキにしか出来ないことよ!」


 そこまで言われたら、断る理由なんて、わたしの辞書にはない。


「それだったら大丈夫ですよ!」と快諾すると、優花里さんはぱぁっと顔を輝かせ、部屋の隅にある重厚な扉を開けた。


「うわー! すごい! これが噂のウォークインクローゼットってやつだー!」


 入り口に立ち、広さだけでわたしの家の2階より広いんじゃないかという空間に圧倒されていると、優花里さんが何かを大切そうに抱えて、満面の笑みで戻ってきた。


「サキ、これを着て欲しいのだけれど……」


 差し出されたのは、この建物のメイドさんたちが着ていたあの制服――つまり、わたしが以前「可愛い」と言ってしまった秋葉原のメイドカフェ仕様の衣装だった。


「え…………」

 目が点になる。


 いや、確かにあの時「可愛い」とは言った!言ったけれど、それをまさか自分に着ろと言われるなんて想定の範囲外だ。


「サキ、お願い」 ものすごく嬉しそうに、子供のようにワクワクしている優花里さんの瞳。

 その純粋な熱量に押され、わたしは引きつった笑顔で頷くしかなかった。


「あ、は、はい……」


「ここで着替えたらいいわよ」

 と満面の笑顔でクローゼットを指差され、わたしはトボトボと衣装を抱えて中へ入った。


 中には、ハイブランドの新作から最高級のシルクドレスまで、何十着、何百着もの服が整然と並んでいる。

 その宝石箱のような空間の真ん中で、わたしは一人、フリフリのカチューシャとエプロンを広げた。


 わたし、一体何やってるんだろう……?


 最高級の服に囲まれながら、メイドカフェの制服に変身する女子高生というシュールな絵面に、真剣に悩んでしまった。


 メイド服に着替え終わると、あまりのスカートの短さに心臓がバクバクと跳ねた。

 鏡に映る自分を見るのが恥ずかしくて、「こんな格好で平然と給仕している本職のメイドさんたちは本当にすごいな〜」なんて現実逃避をしながら、白のニーハイソックスを慎重に履き上げる。


 ガチャ、とクローゼットの扉を開けた、その瞬間だった。


「サキ――っ!!」

 優花里さんが目を見開き、弾かれたようにこちらへ飛びついてきた。


「やっぱりサキ、可愛い!! 似合ってる!! サキはわたしにとっての女神様よ!! ああっ、尊すぎるわー!!」


 今朝の校門で凛としていた、あの優花里さんに見せてあげたいくらいの豹変ぶりだ。

 あまりの勢いに、顔を赤くしながら、わたしは圧倒される。


「は、はあ……」


 抱きしめられ、彼女の甘い香りに包まれながら、そう答えるのが精一杯だった。

 

 すると優花里さんは「サキ、ちょっと待ってね!」と素早くスマホを取り出し、凄まじいシャッター音と共に連写を始めた。さらには動画まで。


「ちょ、ちょっと!優花里さん」

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