共有回避?!
鏡子ちゃんは再びわたしに向き直り、一歩、距離を詰めてきた。
「じゃあ、共有してくれるの? サキちゃん」
「ごめん、それだけは勘弁して」
「わたしに見られて、嫌なことがあるの?」
(いや、普通、スマホの中身とか、他人に見られたくないだろ!)
「だ、大好きな相手だからこそ……す、全てを知るんじゃなくて、ミステリアスな、ところがある方が、あ、愛もふふ、深まるんじゃ、ななないかな!?」
わたしの必死の弁明も、鏡子ちゃんには届かない。
彼女の瞳から光が消えてきた。怖い……
「わたしは、サキちゃんの全ては何でも知りたいから……」
「いや、やだよ! 怖いよ、絶対位置情報もバレバレにする気だろ! 束縛が強すぎるよ!やめてよ!」
追い詰められたわたしは、瞬時に頭をフル回転させた。正面突破は無理だ。なら、情に訴えるしか!
「き、鏡子ちゃんは、わ、わたしの事、信じられないのかな……?」
わたしはあえて少し俯き、潤んだ瞳で鏡子ちゃんを見上げた。
「大切な友達にそう思われていたなんて……わたし、悲しいよ……ぐす」
嘘泣きの仕草を見せると、鏡子ちゃんの「ヤンデレモード」に綻びが生じた。
瞳の光も徐々に戻ってきた。よし!
「あ……ごめん、サキちゃん。あなたを信用してるんだけど、わたしはいつも心配で……」
「いつもわたしを心配してくれてありがとう。鏡子ちゃんは大切な親友だよ。大好きだよ!」
わたしがにこっと、とっておきの微笑みを向けると、鏡子ちゃんの表情がパッと明るくなった。
「サキちゃん……ありがとう、わたしも大好きだよ!」
勢いよく抱きついてくる鏡子ちゃんを、わたしは苦笑しながら受け止めた。
(……ふぅ、なんとかスマホ共有は回避できたかな。でもここ、教室なんだけど……みんな見てるよ……)
そんなわたし達を茜は遠くから見守りながら、(サキちゃんの人心掌握術、もはや神業に近いよ……)と、心の中で拍手を送っている様子だった。
何一人でうんうん頷いてるんだよ。
その日の始業式は午前中で終わり、校内には開放的な空気が流れていた。
けれど、わたしの隣には蛇のように絡みつく鏡子ちゃん。
相変わらずの彼女に苦笑いしていると、救世主(?)が現れた。
茜がやってきて、「絵麻先輩から、鏡子ちゃんを体育館に連れてきてほしいって頼まれちゃった」と告げたのだ。
鏡子ちゃんは「えーっ! サキちゃんと帰るのに〜!も〜!なんで〜?」と地団駄を踏んでいたけれど、親友の部活の先輩の頼みとあっては断れず、昇降口からダッシュ!絶対寄り道禁止!帰宅即連絡!を連呼しながら連行されていった。ふう。
一人になったわたしが昇降口で靴を履き替えていると、目立たないように佇む優花里さんの姿があった。
「あれ?優花里さん?」
「サキ、待っていたわ」
「え?」
ヤンデレ鏡子の扱い方が上手くなってきたサキ。
優花里が彼女を待っていた理由は?




