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ただのアニオタだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます ~逃げても離してくれない彼女たち~ ―雲乃伊戸女子高校の美山サキの場合―  作者: あさなゆうなぎ
第2章 一年の夏休み

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どんな痴女子高生だよ!!

「ねえ、サキちゃん。これ、サキちゃんのスリーサイズに合わせてるから大丈夫だと思うけど、ここで一度着てみない?」


「なんで、わたしのスリーサイズ知ってんだよ!!」


 思わず叫んでしまった。っていうか、ここで着替えるってどんな羞恥プレイだよ!

 アニメの変身シーンだって、もっと光の加護とかで隠されてるわ!


「い、いやぁ、鏡子ちゃん……。これは一人の時に人知れず、部屋でひっそりと着るからさ」


「一人の時じゃダメなんだよ。わたしもいないと」


「なんでだよ!!」


 嫌だよ、こんなお天道様が高い時間から!


「は、恥ずかしいから……っ」


「大丈夫だよ! サキちゃんの裸なら、これまでも着替えの時に見たことあるし!」

 鏡子ちゃんが、なぜか自信満々にサムズアップする。いや、そんなリアクションされても……


「別にそれ、自慢することじゃないだろ! これを着て見られるくらいなら、よっぽど裸を見られる方がマシだよぉ……!」


「じゃあ裸になって」


「そういう問題じゃねえよ!!」


「さあ、サキちゃん。覚悟を決めて!」


「覚悟って何だよ! しかも、今って!」


「……ダメ?」


「い、いや、今着るんじゃなくて、また今度……ね?」


 わたしの言葉に、鏡子ちゃんの目がキラリと光った。

「サキちゃん……じゃあ、今度のお泊まりの時に、絶対に着てくれるんだね?」


「え? そ、それは……」


「楽しみだなぁ! サキちゃん、絶対に似合うと思うよ!」


 いや、これが似合う女子高生ってどんな痴女だよ! 平凡な、いち女子高生として、そんな破廉恥な属性は実装したくないよ!


「こ、これは一人の時だけ用にするよ……ありがとうね、鏡子ちゃん、それじゃあ……」


「……え? どうして? お母さんとリモート会話で、一生懸命探したのに……」


「えっ」


「わたしも何時間も悩んだんだよ……サキちゃんに、どうしても着てほしかったから……それが無駄になっちゃったのかな……?やっぱりわたしって、サキちゃんにとって無駄でいらない子なの……?」


 あ、ダメだ。鏡子ちゃんの瞳から、スーッと光が消えていく。

 マズい、この兆候は知っている。

 しかも彼女は、うちのキッチンの刃物の場所まで全て把握しているんだった……!ヤバい!!


 鏡子ちゃんが、ふらふらとキッチンの方へ歩き出す。

「サキちゃんに着てもらえないんだったら……。わたし、もう……」


「わ、わかった! わかったよ! こ、今度のお泊まりの時に着るから!!」


「……本当!?」


  ぱああっと、一瞬で鏡子ちゃんの表情に色が戻った。

「よかったー! サキちゃんが着てくれないと、どうなるかと思ったよ♡」


 どうなるって、絶対に「ああ」なってただろ! わたしの脳裏には、キッチンで滅多刺しにされて血溜まりの中に倒れている自分の姿バッドエンドが鮮明に浮かんでいた。


「そうそう。実はね、わたしもお揃いで買ってもらったから、二人で一緒に着ようね!」


「えっ、鏡子ちゃんもこれを……!?」


 鏡子ちゃんのスタイルで、あのスケスケ……。破壊力抜群じゃないか!!……いや、待てよ。鏡子ちゃんとお揃いのランジェリー姿で一晩過ごす……?


(そ、それは……ちょっと見てみたい、かも……同性としても興味あるよ)


 恐怖のどん底で、わたしの不埒なアニオタ脳が、一瞬だけ別のシミュレーションを開始してしまった。

 けれどその代償は、もし優花里さんに知られたら、確実に「この世からの退場」であることを、わたしはまだ軽視していた。


「あ……」 鏡子ちゃんの眩しすぎる笑顔を見ながら、わたしはある致命的な事実に気づいてしまった。


(そういえば……次の土日に鏡子ちゃんが泊まりに来るって、優花里さんにまだ一言も言ってない……!!)


「あら、幼馴染の親友同士、仲がいいのね。存分に楽しみなさいな」

 ……なんて、あの優花里さんが微笑んで許してくれるはずがない。


 もし知られたら、土曜の朝、玄関を開けた瞬間にあの黒塗りのリムジンが横付けされていて、「サキ、行きましょうか(地下室へ)」と無表情で拉致される未来しか見えない。


 しかも、そのバッグの中には例の「スケスケ・ランジェリー」が入っているのだ。 もし中身を検閲(されるに決まっている)されたら……地下室じゃなくて、細かくされて綺麗なお庭の土の中に……


(言えない! 絶対に秘密にしないと! 命に関わる!!)

「サキちゃん? どうしたの、急に顔色が青くなったり赤くなったりしてるよ」


「い、いや! なんでもないよ! お泊まり会、楽しみだなぁって思ってさ! あはは……あははは……」


 嬉しそうに「お揃いのパジャマも選ばなきゃね」と計画を立てる鏡子ちゃんを前に、わたしは心の中で、鉄の意志で秘密を守り通すことを固く誓った。


 でも、ちょっと待って。 優花里さんに内緒で、鏡子ちゃんと一晩中(しかも破廉恥な格好で)過ごす。


 逆に鏡子ちゃんに、優花里さんとの別荘での出来事を隠し通す。

(……なんでわたしって、どっちの選択肢を選んでもバッドエンドに直行なんだろうか?)


 アニオタの理想の展開って、もっとこう、ラッキーなハプニングでラブラブになるもんじゃないの!?

 ラッキースケベもないし……


 もうわたしの人生、ジャンルが「学園ラブコメ」から「心理サスペンス・ホラー」に完全移行しちゃってるよぉ〜!


 鏡子ちゃんの楽しげな声がリビングに響く中、わたしの脳裏には、来週末に待ち受ける「破滅」のカウントダウンがはっきりと聞こえ始めていた。


 ただ、わたしは、かつてないほどの集中力で冷静になって考えた。

(待てよ……鏡子ちゃんと違って、優花里さんはさすがに実力行使でうちを襲撃することはないはず。ということは、わたしが口を滑らせさえしなければ、この秘密が漏れるルートは存在しない……!)


 鏡子ちゃんと優花里さんは、会えば火花が散るほどの犬猿の仲だ。二人が裏で繋がって情報交換をするなんて、天変地異が起きてもありえない。


(そうか! これだ! これなら二人に気づかれずに週末を乗り切り、誰も傷つかない「トゥルーエンド」に辿り着ける! わたし、天才! 偉い!)


 あとの課題は、鏡子ちゃんが泊まっている間に優花里さんから来るであろうRINEに、いかに「一人で寂しく過ごしています」感を出しながら迅速に返信するか、だ。


 ここまで、わずか0.01秒。わたしの脳内スーパーコンピュータは一つの結論を導き出した。 あとは、あのスケスケ・ランジェリーを着用した状態で、いかに鏡子ちゃんの猛攻からわたしの最後の砦(貞操)を守り抜くか……。


「……ごめんなさい、優花里さん。あなたのサキが、この過酷な世界で命を繋ぎ止めるためなんです。……キス、くらいは許してください……っ!」


 心の中で、優花里さんに深く深く懺悔する。 背徳感。けれど、それはこの生存戦略を完遂するために必要なスパイスなのだ。


「サキちゃん? さっきからすごい顔でニヤニヤしたり拝んだりしてるけど、大丈夫?」


「えっ!? あ、あはは、大丈夫だよ鏡子ちゃん! 週末、すっごく楽しみだねー(棒)」


 そう、わたしはやるんだ。 二人のヤンデレの間を気づかれずに、夏休み最後の週末というデス・ゲームを生き残ってみせる!


 ――だが、この時のわたしはまだ知らなかった。


 「隠し事」をする時の人間の挙動が、ヤンデレたちの鋭すぎる嗅覚をどれほど刺激してしまうのかを。



タダでは済まないサキの苦悩。

夏休みはもう少し続きます。

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