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鏡子ちゃんと優花里さん……

 昨日投稿した『リリー』の感想に、蜜柑ちゃんさんからは比較的早いレスが来ていた。


 けれど、朝10時に起きて「みっきん」垢をチェックしてみても、他のフォロワーさんからのレスは普通についているのに、コアラっ子さんからのレスだけがなかった。


 どうしたんだろう? 何か怒ってる? わたし何かしたかな……。


 鏡子ちゃんと図書館に行くのは前から伝えてあったから機嫌が悪くなることでもないだろうし、う〜ん、分かんないよ〜!


「もしかして、わたしのこと飽きちゃったとか……? それとも彼氏(か彼女)ができちゃった、とか?」


 あんなに綺麗な人だし、名家のお嬢様だから、許婚だっていそうだし。……え、やだよ。 じゃあ今までのは何だったの? うちへのお泊まりとか。ちょっとしたお嬢様の「庶民との火遊び」みたいな戯れだったの……?


 こんな普通で取り柄のないオタクだから、飽きられちゃった可能性は高いよね。

  考えれば考えるほど、思考がどんどんネガティブな沼へと引きずり込まれていく。


「こんな考えじゃダメだよ。勉強しよう。それでちょっと気分転換しよう」

 そう思って机に向かい、宿題のノートを広げてはみたけれど、どうしても優花里さんの冷たい声が脳裏に浮かんで宿題も捗らない。


 そんな時、スマホが震えた。鏡子ちゃんからのRINEだった。

『宿題どう? 進んでる?』


 いつもなら「今日は一人で頑張るよ」と返すところだったけれど、今のわたしは一人で不安に耐えることができなかった。


 自分でもよく考えないうちに、指が勝手に返信を打っていた。

『今日、午後から一緒に宿題しない? また教えてよ』


 送信した瞬間に、あ、と後悔が過る。 優花里さんには「一人で勉強する」って言ったような気がするし、鏡子ちゃんと会わない日を作ったはずなのに。

 でも、優花里さんも鏡子ちゃんと宿題やれば、って言ってたし。


 ただ、気持ちが少し弱った今のわたしには、自分を肯定してくれる誰かの存在が必要だった。


 鏡子ちゃんは、昼前にはもうわたしの家にやってきた。


 午後まで待ちきれなかったんだろう。

 そんな、隠そうともしない「わたしに会いたい」という真っ直ぐな態度を、つい昨夜の優花里さんの冷たさと比べてしまい、不覚にも嬉しいと感じてしまう。

  やっぱり、友達っていいな。


「サキちゃん、声をかけてくれてありがとう! すごく嬉しかったよ」


「ううん、こちらこそ。……急にごめんね」


「ううん! 今日はサキちゃんに会える予定じゃなかったから、一人で家で勉強しようと思ってたんだ。やっと近所の道路工事も終わって静かになったし」


 鏡子ちゃんはそう言って微笑んだけれど、すぐにわたしの顔を覗き込んできた。

「……どうしたの、サキちゃん? なんか元気ないけど」


「んん、そう? ……そうなのかな」


「何かあったの?」


「ううん、大丈夫だよ。ありがとう……鏡子ちゃんは優しいね」


「そんな。わたしはサキちゃんが大好きだから。サキちゃんに元気になってほしいだけだから」


 その言葉が、弱りきった今のわたしにはあまりに温かくて、鼻の奥がツンと痛くなってきた。

 「鏡子ちゃん、ありがとうね……」


 テーブルの向こう側に座っていた鏡子ちゃんが、こちら側に回ってきて、わたしを優しく抱きしめてくれた。

 背中をポンポンと、子供をあやすように軽く叩いてくれる。 ああ、こういう時に頼れるのが親友なんだな。


 優花里さんの事で変な風に固まりかけていた心が、少しずつ解けていくのを感じる。


「鏡子ちゃん、ありがとう。勉強しようか。どこでする?」


「サキちゃんが良かったら、サキちゃんのお部屋でしたいな」


「うん、いいよ。じゃあ2階に行こう」

 わたしは鏡子ちゃんの手を引き、階段を上がっていく。


「サキちゃんのお部屋、久しぶりだよ。懐かしいな。昔はよく遊びにきてたよね」


「そうだよね。小学校や中学の時は、お互いの家を行ったり来たりしてたもんね」

 鏡子ちゃんは夕方まで部屋にいてくれて、一緒に宿題をした。


  彼女のおかげで、分からないところを教えてもらいながら、夏休み二日目にして宿題は相当なペースで進んだ。


 早く終わらせれば、それだけ復習と予習に時間が割ける。


 でも、ハタと思いついた。

  (これを報告して、優花里さんは喜んでくれるのかな……?)


 昨日のあの突き放すような雰囲気を思い出すと、とてもじゃないけれど「今日も鏡子ちゃんに教えてもらいました!」なんて報告はできない。


 鏡子ちゃんにお礼を言って見送った後、わたしは一人、静かになった自室でスマホを眺めた。


  アニメを見よう。感想を投稿しなきゃ。


 その日、わたしは優花里さんに、こちらから連絡をすることはなかった。

優花里の姿、声を毎日聞いていたサキ。

優花里の作戦にハマった様にも見えますが……

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