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モブのアニオタJKだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます! ~逃げても離してくれない百合な彼女たち~  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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可愛くて頼りになる友人!?

「ひゃいっ!!」

 情けない悲鳴が廊下に響く。


 背後に立つ鏡子ちゃんの指先から、まるでお化け屋敷のセットよりも本物の冷気が伝わってくる。

 肩に置かれた細い指に、じわじわと万力のような力がこもった。


 「サキちゃん……。どうして2-Aの教室を、そんなに熱心に覗いてるのかな?」


「あ、あはは……と、図書室に行く前にね! すごい人だかりがしてたから、何かな〜って……な、何となく気になって、ちょ、ちょっとだけ見てたんだよ!」


 必死の弁明。けれど、鏡子ちゃんの目は笑っていない。


「そうなんだ〜。……で、何だったの? そんなに足を止めるほど、面白いものがあった?」


「あ、えっと……げ、劇の練習をしてて。なんだか本格的で、面白そうだな〜、なんて……」


 その時、教室内で練習が一段落したらしい優花里さんが、ふとこちらに視線を向けた。

 目が合う。

 彼女は鏡子ちゃんの前で冷や汗を流すわたしを見つけると、ふっと表情を和らげ、周囲にバレないよう小さく、愛おしそうに手を振ってくれた。


 (あ、気づいてくれた……!)


 一瞬、地獄で仏に会ったような気分になって、表情を緩めた。けれど、それが致命的なミスだった。


「――っ、痛い、痛い痛い!痛い!き、 鏡子ちゃん! 肩、肩が折れるよぉ!」


「……わたし、サキちゃんが帰ってくるのを、ずっと教室で待ってたんだよ。それなのに、なかなか帰ってこないから、探しに来たら『王子様』に見惚れてるサキちゃんを見つけちゃった。それを見て傷ついた、わたしの心の方が……もっともっと、痛いんだよ」


 鏡子ちゃんの声のトーンが、地を這うように低くなる。


「痛いよ鏡子ちゃん! ごめん、ごめんってば!許してよ」


 騒ぎに気づいた優花里さんが、眉をひそめてこちらへ歩み寄ろうとするのが見えた。

 その凛々しい瞳には、鏡子ちゃんに対する明らかな「警告」の光が宿っている。


(ダメ、ここで二人が合流したら、マジで校舎が吹き飛んじゃうよ!!)


「大丈夫です! 大丈夫ですから!」


 わたしは優花里さんに向けて「来ちゃダメ!」と必死のジェスチャーを送り、文字通り壁際で押し留める。

 そのまま、まだブツブツと呪文のように何かを呟いている鏡子ちゃんの背中を強引に押し、図書室の方へと全力で誘導を開始した。


 「ほら、鏡子ちゃん! 資料、資料探しに行こう! お化け屋敷を最高のものにしようね! ねっ!?」

 嵐を背負ったまま、わたしは逃げるように廊下を駆け抜けた。


 背後で、優花里さんの「王子様」としての誇り高い視線が、鏡子ちゃんの「親友(自称)」としての執念を射抜く火花が散ったような気がしたけれど、振り向く勇気は、今のわたしにはこれっぽっちも残っていなかった。


 図書室に足を踏み入れた途端、鏡子ちゃんは憑き物が落ちたように、カラッといつもの彼女に戻っていた。


「サキちゃん、この本はどう? こっちの図鑑も、お城の質感が参考になるかも!」


「う、うん。ありがとう」


 テキパキと棚から資料を選び、わたしの前に積み上げていく姿は、どこからどう見ても、優秀で献身的な学級委員長そのものだ。


(はぁ……さっきの、あの冷気を纏った状態の鏡子ちゃんのまま、本番を迎えれば、本当に命の危機を感じるほどの、間違いなく史上最凶のお化け屋敷になってたよね……。大人でも腰を抜かして泣いちゃうよ)


 そんな失礼なことを考えつつ、わたしの意識は気づけば先ほどの光景へと戻っていた。


 あの、凛としていて、それでいてどこか甘やかな雰囲気を纏っていた「王子様」な優花里さん。


 (それにしても、優花里さん格好良かったなぁ……! あんな、アニメから飛び出してきたような人がわたしの恋人だなんて……ふふっ、ふふふっ)


 つい顔が緩み、机に広げた資料を見つめながらニヤニヤと妄想の海に沈んでいた。

 すると、不意に視界が遮られる。


「サキちゃん。何か、とっても楽しそうだね?何を考えていたの?」


 至近距離で、鏡子ちゃんが上目遣いにわたしの顔を覗き込んでいた。

 その瞳から、またしてもスーッとハイライトが消えかけている。


「ひっ!? あ、あはは……ち、違うんだよ! 鏡子ちゃんが、こうして一生懸命資料を探してくれてる姿は、やっぱり可愛いな〜、頼りになるな〜って、思ってて……!」


「……えっ。あ〜、そうなんだ! サキちゃん、わたしのこと見ててくれたんだね。すごく嬉しいよ! わたしも、サキちゃんのこと世界で一番大好きだよ!」


 パァッ、と効果音が聞こえそうなほど明るい笑顔に戻る鏡子ちゃん。


 ……なんていうか、鏡子ちゃんって嫉妬深いんだけど、実は意外とチョロいよね。成績優秀な優等生設定のはずなのに。


(……いやいや、これ以上刺激するのはやめよう。まずは、お化け屋敷の看板を描き上げなきゃ!)


 本を借りて教室へ戻り、鏡子ちゃんに手を握られ、彼女の幸せそうなオーラを浴びながら、わたしは必死に筆を動かした。

鏡子の愛は重いですが、もし、優花里と出会っていなければ、サキにとっては最高の友人(恋人?)なんですよね。

彼女は実は動かしやすいキャラなので、そういうIFストーリーも、書いてみたい気がします。

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