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モブのアニオタJKだったわたし、ヤンデレ先輩と幼馴染に愛されすぎて困ってます! ~逃げても離してくれない百合な彼女たち~  作者: あさなゆうなぎ
第3章 一年の二学期

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いつもの日常〜?!

 次の日。


 一階へ降りると、そこには当然のように、コーヒーを飲んで、待ち構える鏡子ちゃんの姿があった。


「あっ、サキちゃん、おはよ〜!」


 手をひらひらと振りながら、昨日までの不穏な空気を、微塵も感じさせない満面の笑み。


「おはよ、鏡子ちゃん……」


「ねえ、今週末はどこに行こうか?」


 月曜朝の第一声がそれかい! 気が早すぎるよ!


 昨日の今日で、もう次の週末の予約を入れようとする、そのスピード感。

 こういうところは、勉強で見習いたいな。()()ではなくて、()()でね。

 しかし、わたしの「ダラダラアニメを見たい週末」が、音を立てて崩れ去っていくのが見えた。


「あ、そういえばそういう話だったね……。えっと、うーん……エオン、とか?」


「サキちゃん、エオン好きだね〜!」


「まあ、アニメートとか入ってるし……」


 アニメショップという安全圏に逃げ込もうとしたわたしに、鏡子ちゃんは追い打ちをかける。


「どうする? うん、じゃあ土曜日はエオンに行こうか! ……で、日曜日は?」


「えっ、日曜?!日曜は……たまには、一日くらい、家でゆっくりしない……?」


「あ、それじゃあ、サキちゃんの家で? わたしの家でもいいよ!」


「いや、そうじゃなくて……たまにはひとりで、家でゆっくりしたいっていうか……」


 その瞬間、鏡子ちゃんの瞳から、スーッと光が消えた。


「ひっ!」


 さっきまでキラキラしていたはずの目が、底なしの沼のように暗く沈んでいく。


「サキちゃん……伊藤先輩とは、土日一緒だったんだよね?」

 立ち上がり、キッチンの方へとふらふらと歩いて行こうとする。

 彼女の歩く先には、朝食の支度で、母さんが使っていた包丁が!!


(ひ、ひぃ〜! や、やめて!怖い、怖すぎるよ、鏡子ちゃん!)


「ごめんごめん! 分かったよ! じゃ、じゃあ鏡子ちゃんのお家に、お邪魔しようかな……!」


「本当!? うん、嬉しいよ! 楽しみだな〜、サキちゃん!」


 キッチンへの歩みを止め、こちらをくるりと振り返り、パッと花が咲いたように、表情が戻る鏡子ちゃん。その豹変ぶりが、今のわたしには何よりのホラーだ。


「そ、そうだね。あはは……」


 そして、また腕を蛇に絡みつかれる登校の日々が始まった。


 鏡子ちゃんの腕のホールド感。

 先週は「もう終わりだ」と絶望したけれど、今こうして歩いていると、これが今のわたしたちにとっての、一番の「平和」なのかもしれない。いや……普通の人たちと、基準がバグっているのは自覚しているけれど。


 校門が近づくにつれ、人だかりの先に凛とした姿が見えてきた。


 愛しの優花里さんだ。彼女は「風紀委員長」として、生徒たちに気高く挨拶を交わしている。


(ふふ、あんなに格好いいけど、土日はあのリリー姿で、わたしに縋り付いて泣いてたんだよなぁ……)


 ギャップ萌えという言葉では片付けられない破壊力。

 思い出し、ニヤけが止まらない。


「おはようございます、伊藤先輩」


「おはよう、美山さん」


「おはようございます」


「おはよう、後藤さん」


 鏡子ちゃんは、挨拶の間も、わたしを逃がすまいと腕に力を込めている。


 痛くはない。痛くはないんだけれど、物理的な圧迫感以上に、精神的なプレッシャーが凄まじい。


「……美山さん」


「は、はい! な、なんでしょう!」


 優花里さんの冷ややかな、けれどどこか探るような視線がわたしを射抜く。


「ニコニコして楽しそうなのだけれど……。なにか、いいことでもあったのかしら?」


「い、いえ、何もありません! 決して、何もありませんとも!!」


 わたしの焦りを見透かしたのか、隣の鏡子ちゃんがさらに密着してきた。


「伊藤先輩、サキちゃんは、わたしがしっかりと()()()()()()()いますので、何も心配しないでくださいね!」


「そうなのね……。ただ、後藤さんが、()()()()()()からこそ、逆に心配なのだけれど……」と、困った表情をする優花里さん。


(あわわわわ……やめて! 朝っぱらから、大砲の火花を散らすのはやめてよ! また戦争が勃発しちゃう!)


 空気が冷え切る前にわたしは、二人に告げる。


「す、すみませんでした! 伊藤先輩、また後で! 鏡子ちゃん、行こ、行こっ!」


 なおも、優花里さんに食い下がろうとする鏡子ちゃんの背中を押し、半ば強引に校舎へと向かわせる。


 ふと、追い立てられるように歩きながら、わたしは後ろを振り返った。

 視線が合う。わたしは優花里さんへ、こっそりとウインクを送った。


『大丈夫、わたしの本命はあなたですよ!』


 そんなメッセージを込めたつもりだけど、果たして伝わっただろうか。


 一瞬だけ見えた優花里さんの頬が、ほんの少しだけ朱に染まったのを見て、わたしは少しだけ安堵して教室へと急いだ。

一触即発の二人。

これでも一度は、歩み寄りをしたはずなんですが。

サキのストレスが、解消する日は来るのでしょうか?

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