棚から牡丹餅が見つかった時、喜びよりも驚きが大きい事もある
ジェーンとシェーンの名前がごっちゃに…、温かな目で見て下さい。
*
ジェーン・スミスは今、謁見の間へと続く立派な扉の前で非常に困惑している。
〜〜〜
昨晩、拠点にしている探索者向けの安宿の一室で唯一の同性のパーティメンバー、アイラ・モーンとガールズトークをしている時だった。
『ドン!』
「「わっ!」」
何かが窓に激突する音で2人とも身をすくめる。
恐る恐る窓を確認すると街の暗闇に溶け込む色をした烏が宙に待機していた。
「これどうした方が良い?」
「うーん、とりあえず窓開けてみる?大丈夫そうだし」
回復魔法を使えるサポート寄りの魔術師アイラが答えた。
アイラは魔術師ながら盗賊並の感覚の鋭さを持っている。そのアイラが安全と言うなら大丈夫だろう。
窓際に移動してゆっくり窓を開ける。
開けた瞬間に飛び込んできたのは吸い込まれるほど綺麗な黒羽の烏。手紙と筒を足に付けていた。
「こっこの烏、ロイヤルクロウじゃない?」
「なにそれ?」
アイラの説明によるとロイヤルクロウは王都内で至急の伝令に使われる鳥らしい。他の種に類を見ない嗅覚で空の上から相手を見つけ出す。罠に決して引っかからない人並みの賢さ、人間では探索者相手ですら追いつけないスピード、王都内では右に出る動物はいない強さを兼ね備えた烏。殆どが闇夜に紛れる夜にしか使われない為滅多に見られない、噂だけの存在とも言われている…とアイラが興奮気味に語る。
ロイヤルクロウの足元に括り付けてある手紙を開いた。
『ジェーン・スミス殿
夜分遅くの急な連絡となり、深く一礼申し上げる。
明日の午前10時より、新人探索者大会の件にて謁見を執り行いたい。
もし可能ならば、同封の赤の紙をロイヤルクロウの伝書筒に入れ、余った青の紙を持参の上、午前9時半までに探索者ギルドへ赴いてほしい。
もし不可能ならば、青の紙を筒に入れ、赤の紙を持って、可能な限り速やかに探索者ギルドへ訪ねてほしい。
本件についてはギルドマスター、および副ギルドマスターへ既に連絡を回してある。ギルドマスター又は副ギルドマスターに用件と紙を提示すれば即座にこちらへ案内される手はずだ。
良い返事を待っている。
王国騎士近衛マニュエル・アロンゾ』
手紙を読み、アイラと顔を見合わせる。
「何で?謁見は基本優勝者だけだよね」
アイラは眉を顰めた上に顎に手を置き、少し考える仕草を見せた。
「うーん、あの決勝の相手のエドワード君だっけ?になんかあったんじゃない?」
なんかあった、か。想像出来ない。
難しい顔になったジェーンにアイラは続けた。
「例えば…ステファニー・ロスター入りを断ったとか?」
「それは無いよ!」
「じゃあ何だろうね?」
アイラと高らかに笑いながら赤の紙をロイヤルクロウの筒に入れた。
〜〜〜そして今に至る〜〜〜
「単刀直入に言おう。武闘祭の開催地セクランまでの護衛を頼みたい」
考えられない事を笑っていた昨晩と違い今は実際にあり得ない現実を突きつけられている。
いざ考えられない事が起こると頭が真っ白になると初めて知った。
優勝者の特権みたいなものである護衛、それが準優勝者の自分に回ってきて本来は多少の後ろめたさを感じつつも喜ぶべきことなのは感じている。しかし、深く考えようとすると想像力が足りないのか、はたまたショック状態だからかうまく頭が回せない。
「えっ…何で私に?」
国王は風格と優しさが混ざった声で話し始める。
「〜という事でエドワード・クレイが断ったのだ」
ジェーンは2つの事で衝撃を受けた。
1つ目がエドワードが所属し、どちらの意味でも王都で名を馳せている悪魔の聖騎士のメンバーのエドワードを除く4人のうち3人が探索者ギルド主催の大会を出禁になっている事。ジェーン達は王都に来てまだ2年ちょっとの為悪魔の聖騎士に関しては小耳に挟む程度で詳しく知らない。しかし、今回の説明で心に深く刻まれた。
そして2つ目、エドワードがとても思慮深い事。私だったら例え1人でも護衛を受けていただろう。他の人達も考えた精神、技術だけでなく心まで負けていたとは。
「この依頼、受けてくれるかね?」
「はい。喜んで」
国王の問いにすぐさま答えた。
「おお、それは良かった」
「ひとつ質問をお許し下さい」
王を見上げたまま丁寧に話す。
「我や近衛に答えられる質問なら」
「護衛に同行する人はパーティメンバーに限りませんよね?」
国王はニヒルな笑みを浮かべた。
「誰を希望する?」
「私のパーティメンバーとエドワード・クレイです。本来、準優勝者の私ではなく優勝者の彼がやるべきですから。安全面が確保されれば問題ありませんよね?」
国王の笑みがクールでありながら興奮に満ちたものに変わる。
「良かろう。こちらも準備をする。其方も準備を進めてほしい」
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