面接
ギルドから徒歩10分程の大通りにある家。全て飲み込んでしまいそうな黒い壁、探索者にとって血を連想させる縁起の悪い真っ赤な屋根の2階建ての建物。
こここそメンバー募集の張り紙に記載してあった住所の家。
木材の色味を活かしたオレンジっぽい扉の前僕は来ていた。
なんかとんでもないところに来てしまった気がする。
緊張で頭が真っ白だ。こういう時は素数を数えれば良いんだっけ?
2、3、5、………
「何か用?」
「わっ!」
意識の外、背後から声をかけられて全身が震え上がる。
少し恥ずかしさを感じながら振り返ると燃えるような赤髪をポニーテールで纏めている女性が立っていた。赤を基調とした動きやすい服に剣を下げ、急所は鎧で包まれた格好。
募集のパーティメンバーらしい。
一目見た感じは僕と比べるのが相手に失礼なくらい強そう。
……………。
「あ、パーティメンバー募集の張り紙を見て来ました」
抑えきれないオーラに気圧されながら丁寧に答える。
「ああ、なるほどね。うち、パーティがパーティだから来ないと思ってたわ」
「?????」
(えっ、どういうこと?意味が分からないよ)
僕はこの違和感に従うべきだった。
「探索者は嫌な予感がしたら引け」という鉄則がある。
しかしこの時の僕はあろうことか、疲れと緊張でその言葉を忘れていた。
「ちょっと中の廊下で待ってて。メンバー呼んで面接の準備するから」
「分かりました。お、お邪魔します…」
靴を脱いでひとりぼっちで廊下に立って待った。
「入って来て!」
恐る恐る廊下に立ち始めて10分程待っただろうか。先程と同じ明るい女性の声で建物の中の面接をする部屋に呼ばれた。
人は第一印象が大事だ。ここをミスったらもう募集は無いかもしれない。
大きな深呼吸をした。
多少の焦りもある中で明るく、ハキハキとした声で挨拶をする。
「よろしくお願いしまっ…す?」
(えっ!?なにこの人達!?)
心の声は漏らす直前で何とか止める事が出来たが、一瞬だけ驚愕の表情を出してしまう。
もう一度言おう。人は第一印象が大事だ。
ソファで大方真面目に座る人が二人、床で寝ている人が一人、床に座りながらソファに身を預けてうたた寝している人が一人。
ほぅ……………、面接に来るパーティ間違えたかも。
「これから見る事に引いて帰るとかしないでね?」
(もう帰りたいのですけどね………)
更に帰りたくなる言葉をかけたのは緑のローブ、緩いながらもかっこいい服に動きやすい黒色のズボンを履いた金髪で整った顔立ちの(多分)魔術師。
僕は苦笑するしか出来ない。
………もう十分引いているんですけど。
考え方を変えればこれ以上は引かないと思うべきかな?
魔術師が人差し指を軽く動かす。
指から放たれた「バチッ」と音がなる。
威力、範囲を弱めの完璧にコントロールされた雷魔法が2人に命中する。
すごっ、雷魔法ってコントロールが一番難しい魔法属性じゃなかった?
両者身体を震え上げて起きた。
ソファの側で眠っていた女性は気にする事なく伸びている。
それに対して床で寝ていた男はあくびを交えながら魔術師に文句を言い始めた。
「ランディ、何するんだよ」
「パーティメンバーの面接だ、流石にカイルもいないとまずいからな」
…あれ?面接の準備出来たんじゃないの?
僕は、今大声で突っ込みたい事が複数ある。
まず一つ目、準備出来たから入って来たのに面接を始められる状況じゃないこと。
二つ目、凡そ20分前までランク及び経験不問ならば駆け出しパーティ、つまりランクGかFの募集だと思ってた。だがここの4人は見るからに明らかにDランク以上だ。なんでそんな人がランク、経験不問で募集しているのか?
三つ目、これが最も大きい。
早くここを切り抜けて何もかも忘れて眠りたい!
2人は少し言葉を交わした。
「ごめんね。さあ座って。面接を始めるよ」
ランディと呼ばれた魔術師があまりの情報量に立ち尽くしてしまっていた半ば強制的に僕を座らせた。
「…分かりました。お願いします」
あっ、これ逃げ道封じられた気がする。
ランディさんが「こほん」とわざとらしく咳払いをして面接が始まった。
「では、まずはじめに名前、年齢、ランクをお願いします」
「はい。エドワード・クレイです。親しい人にはエドと呼ばれています。年齢は15、ランクはG、実践経験はありません」
「エドって盗賊で良いんだよな?アピールポイントは?」
カイルと呼ばれる男に聞かれる。
いきなり距離近いな。
僕はコミュニケーションがちょっと苦手だからどう対応したら良いか…。というか経験なしたがらサッサと不採用にして欲しい。今は採用されるよりここから帰りたい。行く宛ないけど。
「一応幼少期から村では元探索者に師事していました。師匠からはスピードだけならEランクの平均的な盗賊並だと…」
僕の言葉に頷くランディさんとカイルさんに赤髪の女性。
眠たそうな目をした水色の髪のうたた寝していた女性はずっと僕の黒い短髪からつま先迄を隈なく観察している。
「15歳、成長、まだ」
「そ、そうですね...」
僕の身長は成人男性よりちょい下位である。
それから15分は矢継ぎ早に質問が飛んできて答えるのに精神が疲れた。もう寝床に飛び込んで眠りたいたい。
「みんな、エドワード君が疲れてきているからからそろそろどうするか決めようか。それで良い?」
ランディの神の一声に3人が賛同して退出し、僕が1人部屋に残される。
多分落ちた!絶対落ちた!落として欲しい!こんな新人取るわけないよね?パーティに加入したらL-Lになっちゃうからね。
今日の事は忘れて便利屋依頼をこなしつつ訓練をしていずれパーティを組んで英雄を目指すぞ!
これからの事をぼんやり考えていると四人が戻って来てそれぞれソファに腰掛ける。
神妙な面持ちに僕は歓喜し、心の中で叫んだ。
(よし、やっと帰れる!)
全員が座ったことを確認したランディがおもむろに口を開く。
「エドワードわいや、エド!悪魔の聖騎士へようこそ!これからよろしくね!」
「えっ???」




