乱入ボス:蠍
ボス部屋、それはダンジョンで一番強いモンスターが湧く可能性が高い場所だ。
黄蛇の蟻穴の様な過去の構造物がそのままダンジョンになった場合、殆どが元々の主が存在していた場所にボスが湧く。
「ここらで休憩にしようか」
黄蛇の蟻穴の入り組んだ道を歩き数時間、かつて女王蟻が存在した部屋から少し離れた所で僕達は立ち止まり、休憩をとった。
五感を研ぎ澄まし、強い気配の方を探る。
「何か居ます。四足歩行の音なので少なくとも蟻では有りませんね」
「こんな時に余裕だね、エド」
いやそんなつもりでは無かったけど。恥ずかしい。
明らかにオーアスネークよりも強い気配を浴びているにも関わらず、ランディが軽口を交わしてくる。
緊張と羞恥心で固まる僕に対してランディ達の表情は柔らかい。
「取り敢えずヘルプが出るまではカイルがやる。良いね?じゃあ行こっか」
ランディの言葉に賛同した僕達は進み出した。
岩に固いものをぶつけている音が響き渡る。その音は近づくにつれてどんどん大きくなっていく。
広場の手前から慎重に音の正体を確認するとギリギリ洞窟を通れそうな大きさの蠍が居た。
ただし見ても分かる異変がある。通常の蠍が二つの鋏を持つ六足歩行に対して岩を削る蠍は四つの鋏を持つ四足歩行である点。
僕達は一旦蠍から遠ざかり、再度話し合いを始めた。
「あれは何ですか?」
「んーーー、特徴的にデトクリ蠍の変異個体かな?」
「そ、多分」
そうなんですね。こんな蠍初めて見ました。
僕の質問にランディとリリスが答える。
昔僕の読んだ図鑑によるとデトクリ蠍は本来十数匹の群れで生活する。群れを相手にするとD〜Cランク程の強さであるが単体ではEランクパーティでも十分倒せる強さらしい。
しかし目の前のデトクリ蠍から発する威圧感はランディ、エンリカ、カイルに少し劣る程度。少なくともDランクパーティでは容易に倒す事は出来ないだろう。ガバガバの僕の分析だが。
「カイル、あれいける?」
ランディの言葉で意識をカイルに向けると興奮してウズウズしている者が2名、僕は少し引いた。
「少なくとも死にはしない」
「それは良かった」
「じゃ、行ってくる」
ウズウズしているエンリカを尻目に舌を出して笑みを浮かべたカイルは駆け出した。その直後、轟音を鳴らす戦闘が始まった。




